2012年06月10日

IMFの監督下を免れたスペインへの支援に、ユーロの緊縮財政策の変化が見える

9日、ユーロ圏財務相はスペインの銀行(管理人注:政府ではなく、銀行)の資金増強のために、最大1000億ユーロ(1205億ドル、約10兆円)の支援を行うことで合意した。スペインの銀行は不動産バブルの崩壊で、不良債権を抱えていた。その銀行を支えるために、スペイン政府自体も財政が悪化していた。

この合意のために、2時間に及ぶ電話会議が行われた。その後に声明が発表されている。

「予想される必要額に加え、あらゆる資金需要に応えることのできる額として、総額1000億ユーロを見込んだ」

この資金は、EFSF(欧州金融安定ファシリティー)か、ESM(欧州安定メカニズム。ただし来月発足される)を通じて行われるという。その資金は、一旦スペインのFROB(銀行再編基金)を経由して、必要な銀行に資本注入という形で実行される予定だ。

しかも、この度の支援には、銀行セクターに限定された条件だけが付帯し、今以上の緊縮財政策や経済構造改革などの条件の追加は行われない。ここがポイントだ。

つまり、欧州は(IMFも)、緊縮財政が必ずしも財政立て直しの唯一の策ではないという姿勢を示し始めたと言えるのでは無いか。

(ちなみに、日本政府はまだ気付いていない、あるいは気付かないふりをしている。)

この支援について、スペインのデギンドス経済相は会見で語った。

「スペイン政府は銀行部門の資本増強のため、欧州に支援を要請する意向を表明する」

そして、この要請は、「救済」ではなく「金融支援」だと強調した。どう見ても「救済」なのだが。つまりは、政府が対象では無く、銀行が対象だと言いたいのだろうか。

そしてスペインは、銀行部門の資金必要額については、外部監査会社から6月21日までに示されるので、それを明らかにするとしている。

また、今回はIMF(国際通貨基金)が絡んでいない事も重要だろう。IMFといえば、馬鹿の一つ覚えで緊縮財政策を要求することで有名だからだ。日本にも消費税増税が必要だ等という正気とは思えない助言(財務相から出向している輩のプロパガンダらしいが)を発表している。

スペインは、今回IMFの関与を極力無いように強く望んだらしい。賢明と言える。そのため、先の電話会議は長引いた。揉めに揉めたらしい。

そして議論の結果は、スペインの希望通り、IMFは資金提供に関わることは無くなった。代わりにEUがスペインのマクロ経済の目標遵守を見守る(監視する)ことになった。

スペインは、アイルランド、ポルトガル、ギリシャに続いて4番目に支援を受ける国になったが、先の3カ国と異なるのは、IMFの監督下に入らずに済んだことだろう。

あの、ハゲタカのような怖い顔のおばさん、だれだっけ?えーとそうだ、IMFのラガルド専務理事だ。彼女は、この度の支援については一定の評価を与えた。

「スペインの銀行システムに必要な資金需要が完全に満たされるとの確信を提供するもの」

そして、支援の金額も、IMFの試算した必要額に一致していると、あたしたちだってそれなりに試算できていたんだわさ、という存在感を表して見せた、のかどうかわからないが、そんな印象を受ける。

とにかくユーロ圏はここでスペイン支援の強い姿勢を示す必要が有った。ギリシャがユーロ離脱に向かっているからだ。6月17日の選挙の結果次第では、ユーロ離脱に現実味が出てくる可能性がある。

そんな状況で、スペインにつれなくしていられないだろう。

さて、市場は、この支援により、パニックを逃れるだろう。バークレイズの株式ストラテジー担当者であるエドモンド・シン氏は言う。

「1000億ユーロという数字は勇気づけられるし現実的な額だ。問題に対応しようとしていることが分かる。ただ、どこから資金が来るかなどの重要な詳細が依然として不明だ。それが分かるまで市場はある程度慎重になるだろう」

彼が、まだ市場が慎重だと述べているのには、EFSFの支援について、担保が必要だと主張しているフィンランドなどがあるからだ。つまり、まだ支援元が確定していない。

一方米国は、この度の支援について、歓迎している。ガイトナー財務長官は言う。

「スペイン経済の健全性にとって重要な措置であるとともに、財政統合に向けた具体的なステップだ」

G7も歓迎している。

「G7はスペインの銀行部門の資本増強計画と、ユーロ圏財務省による支援表明を歓迎する。これらの措置は、ユーロ圏が一段と強固な金融および財政統合に向かう上で重要な進展だ」

緊縮財政策一辺倒だったユーロに変化が生じ始めたといえるか。

すなわち、スペインを救うには、これまでのような緊縮財政策一辺倒ではだめで、まずは銀行を建て直さねばならない、という判断が行われたことになる。

欧州債務危機の行方を占うのは、まずはギリシャの選挙かもしれないが、その経済規模から大きなインパクトを与えるのがスペインだろうとみられていた。何しろユーロ圏で4番目の経済規模を持っている。

しかしスペインの銀行も企業も、外資を得られない状態だ。国債も10年もので利回りが6.6%を超えた(5月30日)。これは、先の3カ国(ギリシャ、アイルランド、ポルトガル)が支援要請を行った水準に到達している。で、実際に要請することになった。

ともかく、スペインでは取り付け騒ぎが発生する可能性も高まっていた。バンキア銀行の国有化に失敗し、ギリシャがユーロ圏離脱の可能性を見せていたからだ。

が、とりあえずは支援の見込みが立ったので、このパニックは避けられそうだ。

ドイツの首脳を始めとするEU首脳は、スペイン政府に緊縮財政策ばかりを要請することが、正しくは無いと気付いた。

ギリシャの財政難は、経済的な混乱の原因だった。しかしスペインは逆で、スペインの財政難は、民間(家計や企業)が借金を膨大に膨らませた(不動産バブルの)結果なのだ。

現にスペインはユーロ圏の財政規則を守っていた。今でも債務残高はドイツよりも低く、GDP比70%前後だという。

そして民間の膨大な外国への借金は、スペインの銀行が仲介していた。その結果、バブルの崩壊で、銀行が打撃を受けたのだ。

すると対策は見えてくる。スペインは、不良債権処理を行い、資本注入すべき銀行と潰すべき銀行を選別する必要がある。

しかしそのためには巨額の公的資金が必要だったのだ。これも今回の(銀行への)支援が行われれば、公的債務の拡大にも歯止めが掛かる。

今回の支援の経路はなかなか巧みだ。スペイン政府自信が銀行の資本注入を継続すると、民間銀行の対外負債だったものが、いずれスペイン政府の対外負債になってしまうからだ。

ただ、この支援で欧州債務危機の構造が改善されたわけではない。ユーロというシステムが存続できるかどうかは、まだまだ分からない。



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