2012年04月01日

東京電力の値上げは、批判できるが抵抗できない。地域独占企業の強みが際立ってきた

東京電力は4月1日から大口需要家(企業や地方自治体)向けの電気料金を平均17%値上げした。

さすが地域独占企業だ。とりあえず値上げしたくなれば自由に値上げできる。競争原理は働かないからだ。

しかし、本来一斉値上げしたかった東京電力だが、さすがにそれは無理があった。契約者のほとんど(9割以上)から、値上げに対する同意が得られなかったからだ。

当たり前である。どの企業も、デフレの中、ぎりぎりの経費削減を行っており、いきなり17%もの値上げに応じられるわけが無い。そんなこと子供でも予想できる。

そのため、個別の契約更新日までは、現行料金が継続されるが、更新日が来れば、強引に値上げする。何しろ購入者は他に選択肢が少なすぎる(ほぼ無い)状態だからだ。

例えば電炉メーカー最大手の東京製鉄では、これまでも夜間や休日の安い電力を利用することで、努力してきた。当然値上げ交渉では値上げ幅を抑えるように東京電力に要請したが、聞き入れられない。何しろ「いやなら内の電気は使わなくていいよ。」と東京電力は言える。

その結果、東京製鉄の年間負担は6億〜7億に増えてしまう。

「企業努力でカバーできない」

担当者は頭を抱えた。まして中小企業は倒産に一直線だ。消費税が増税されれば、さらに倒産リスクは高まる。

例えば金属加工メーカーのシントク(東京都板橋区)では、現行の契約が5月いっぱいで切れる。6月からは電気料金が16.6%の値上げが通告された。

これはシントクにとって、月額47万円の負担増であり、従業員2人分の給与だという。これは痛い。

東京都鈑金鉱業組合(メッキ加工業者400社が参加)の幹部は言う。

「海外勢と必死で受注競争してきたが、今後は電気料金が安い関西や中京地区の業者の攻勢にもさらされかねない」

児玉鋳物(埼玉県川口市)も5月から14.1%の値上げが通達された。これに対し、社長の児玉洋介氏は公正取引委員会に働きかける構えだ。

「一方的な値上げは独禁法違反の可能性もある」

しかし東京電力側には、これらの企業の緊張感はなさそうだ。柏崎刈羽原発の再稼働のために行ったストレステストの報告書では、なんと239カ所もミスがあり、さすがの枝野幸男経済産業相ですら、呆れた。

「桁違いにひどい」

地方自治体も反発している。しかし残された選択肢であるPPS(特定規模電気事業者)への切り替えも不調だ。

なにしろPPSの電力販売シェアは約3%しかなく、とても供給能力が足りない。そのため、かって競争原理により、割高な電力料金になってしまう。

千葉市などはまだ上手くいっている方で、PPSのエフパワー(東京)と契約が成立した。その結果、東京電力が値上げした場合よりも、年間で200万円ほど安く電力を購入することができるという。

一方、これまでも630の施設でPPSから電力を調達してきた横浜市は、4月1日からの契約で入札を実施したが、約120施設の大半で応札出来なかった。

失敗したのは埼玉県本庄市の総合公園だ。東京電力との契約がまだ12月まで残っていたのだが、そそくさとPPSの日本ロジテック協同組合(東京)に5月から切り替える契約をしてしまった。

ところが、4月の値上げを拒否していれば、まだ東京電力の方が安かったのだ。これは東京電力の説明不足という不手際に振り回された例だろう。担当者は言う。

「PPSに決める前に東電の説明があれば対応は違っていた。PPSの料金相場に与えた影響も大きいのでは」

そして東京電力の説明不足という不手際以上に問題視されているのは、値上げが安易では無いか、という点だ。

関東地方知事会の横内正明会長は、都内で東京電力の西沢俊夫社長に問いただした。

「人件費の削減や経営合理化が先決だ」

関東地方知事会の横内正明会長が指摘したのは、東電社員の給与の高さだ。

知事会では、東京電力の有価証券報告書から、平均年間給与を割り出した。その結果、東京電力の社員の給与が削減後であるにも関わらず、相変わらず国家公務員より高いことが判明した。そのことを示し、東京電力側に詰め寄った。

「人件費の削減率が20%では低いのではないか」

そんなことは無いと反論する東京電力側に、上田清司埼玉県知事は強く反発して言った。

「東電の大卒社員は20%削減後も835万円と高水準で、給与が安いと回答するのは不見識だ」

この数字が正確ならば、確かに高すぎる。いや、羨ましすぎる。

問い詰められた東京電力側は、「大卒は55歳で1020万円」であることも認めた。高すぎるだろう。これが地域独占企業の旨味だ。全く羨ましい。これで東京電力は、人件費削減努力をしたと言っていたのだ。非常識だろう。

この数字に対し、横内正明山梨県知事は言う。

「中小企業と同じにしろとは言わないが、値上げで痛みを受ける中小企業の思いを考えれば、(削減幅を)再考すべきだ」

そして同氏は枝野幸男経済産業相に対しても、値上げ中止を要請した。枝野幸男経済産業相はこれに対し、

「(値上げの根拠を)合理的に説明するよう指導する」

と答えている。

しかし現実には、東京電力は圧倒的に強い立場にある。契約が切れれば、「料金不払い」となり、

「早ければ5月下旬に電気の供給を停止する可能性がある」

と注意(脅迫)している。電気を止められたら、勿論困るのは企業や地方自治側なのだ。

つまり、中小企業などにとっては、値上げを認めても、拒否しても、倒産への道が見えてくる。前述した通り、PPSでは供給が追いつかない。

そして東京電力は、夏には家庭向けの料金もなんと10%(1割!)引き上げるとしている。全く怯んでいないし、そのために人件費をさらに抑える努力をするなどといった姿勢も見せていない。

地域独占企業であり、エネルギー供給企業であることの強みは衰えていない。

個々の民間企業や地方自治、あるいは家庭が個別に交渉する相手ではないのだ。

政府の対応が注目される──が、消費税で頭がいっぱいか…。国民のことなど眼中にない政権なのだ。


東京電力関係の投稿記事は書きの通りです。ご参考ください。

『東京電力「実質国有化」という「まやかし」』(2012/02/13)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/252032082.html

『東京電力の保護と電力料金の値上げ』(2011/09/09)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/225221816.html

『「埋蔵電力」だけではない。既に電力供給力は余っている』(2011/07/11)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/214370024.html

『東電の資産売却が始まった。パフォーマンスで終わらせるな』(2011/06/15)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/210024151.html

『リストラでお茶を濁す東京電力と経済産業省の仲間達』(2011/05/14)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/201064799.html

『減俸されてもまだ羨ましい高給取りの東京電力社員や役員』(2011/05/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/198752671.html

『東京電力は疲弊した国民の負担でで保護されるのか──4/4』(2011/04/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/198586254.html

『東京電力は疲弊した国民の負担でで保護されるのか──3/4』(2011/04/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/198572911.html

『東京電力は疲弊した国民の負担でで保護されるのか──2/4』(2011/04/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/198517682.html

『東京電力は疲弊した国民の負担でで保護されるのか──1/4』(2011/04/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/198331965.html

『大学に金を配る東京電力は世論を操作しているのか』(2011/03/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/193331117.html

『このたびの原発事故は、やはり低すぎる企業モラルに原因がある:2部』(2011/03/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/192732409.html

『このたびの原発事故は、やはり低すぎる企業モラルに原因がある:1部』(2011/03/26)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/192577429.html



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