2014年04月21日

中国が商船三井の船舶差し押さえ。日中共同声明を一方的に破棄か

4月19日、上海の上海海事法院(裁判所)が日本の海運大手である商船三井が所有する貨物船1隻を、浙江省の港で差し押さえた。

これは日中戦争が始まる前年の1936年に、中国の船舶会社が日本の海運会社に貸した船舶の未払い賃貸料を、中国の船舶会社の親族が請求して裁判に勝訴したことによる。

戦後補償をめぐる裁判で、中国側が具体的に日本企業の資産を差し押さえたのはこれが初めてだ。

この行為は、戦時中に日本に強制連行されたと主張している中国人元労働者らが相次いで訴えていることを含めて、中国側が日本企業を揺さぶり始めたという可能性がある。

差し押さえられた船舶は、商船三井の船舶「バオスティール・エモーション」で、中国向けに鉱石を輸送する大型ばら積み船だ。

中国側の主張では、中国の船舶会社「中威輪船公司」(当時)が日本の「大同海運」に2隻の船舶を貸し出したという。しかし「大同海運」が船舶の使用料を支払っていないままに、その船舶が旧日本海軍の手に渡り沈没したのだという。

そして1988年に、「中威輪船公司」創業者の子孫が、「大同海運」の流れを汲む商船三井に20億元(約330億円)の損害賠償を求めて提訴した。

商船三井側は主張している。

「船舶は旧日本軍に徴用されており、賠償責任はない」(夕刊フジ:2014/4/21)

しかし海事法院はこれを船舶の不法占拠であると認定し、2007年に商船三井に対して約29億2千万円の賠償を命じた。その後2010年には上訴審の判決が出て中国最高人民法院で確定したが、商船三井は賠償を拒否している。

中国側が強制的に資産の差し押さえを行ったことで、相次いでいる日本企業への提訴を日本側が無視すれば、次々と日本企業の資産を差し押さえるぞ、という中国側の脅しであろう。

日本側は、この問題をICJ(国際司法裁判所)に提訴した場合、中国側が審理を拒むには拒否理由の説明義務が発生する。

しかし日本側はまず、外交ルートで抗議し、中国側に冷静な対応を求めるという。

商船三井広報室はコメントしている。

「現地から第一報を受けた。状況を確認している」(東京新聞:2014/4/21)

この度の差し押さえは、当然、習近平指導部の意向を反映しているはずで、対日攻勢強化を示していると考えられる。

菅義偉官房長官は21日午前の記者会見で抗議のコメントを出した。

「政府としても極めて遺憾だ」(毎日新聞:2014/4/21)

そして1972年に発せられた日中共同声明に「中国は(戦時中の損害賠償について)請求を放棄する」と定められていることを踏まえて語った。

「中国側の一連の対応は、日中共同声明(72年)に示された国交正常化の精神を根底から揺るがしかねない」(同上)

菅義偉官房長官の話では、中国側から日本の抗議に対する回答はまだないという。また、日中関係の悪化を懸念しているコメントを続けている。

「中国でビジネスを展開する日本企業に対し、萎縮効果を生むことになりかねない」(同上)

習近平国家主席は3月にもドイツで歴史認識問題を取り上げるなどしているため、政府関係者は次の様に推測している。

「中国当局の歴史認識をめぐる対日批判が新たな段階に入ったのではないか」(同上)

難しい外交が迫られている。



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