2014年03月03日

ウクライナへのロシア軍事介入は日本にとって頭が痛い。北方領土交渉と尖閣問題を秤に掛けられるか

3月3日、ロシアはウクライナへの軍事介入を決め、欧米諸国はこれを非難した。

さて、日本はいつものように、欧米諸国に歩調を合わせるしか無いのだが、頭が痛い。

何しろ日露は既に安倍晋三首相とプーチン大統領が首脳会談を5回も重ねており、日露関係は良い印象を醸し出していた。北方領土問題についても、前進する可能性が見えていたようにも見える。

一方、日本は中国との間に尖閣問題を抱えているため、中国には国際法の遵守を求めている。その態度は、この度のロシアのウクライナへの軍事介入を認める訳にはいかないという矛盾回避の態度を示さねばならなくなったであろう。

その結果、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国の首脳は揃って、あ、日本も渋々だろうが合わせて、ロシアのウクライナへの軍事介入を非難した。つまりG7がロシアを非難する共同声明を発表した。

「ウクライナの主権と領土の統一を侵害しているのは明らか」(CNN:2014/3/3)

しかし前日夜には岸田文雄外相が批判色の弱い以下の様な表現だったのだ。

「地域の緊張を高め、国際社会の平和と安定を損ないかねないものであり、深刻な懸念と憂慮を表明する」(ロイター:2014/3/3)

そしてG7は6月に予定されていたロシアのソチで開催されるG8首脳会議の準備を注視することにした。

まったく日本は頭が痛い。中国は頻繁に尖閣諸島周辺海域に出没している。

これに対して日本側は「『力』を背景とした現状変更の試みは容認できない」と主張している立場上、ロシアのウクライナ、とりわけクリミア半島への軍事介入は容認できない立場でもある。

しかし日露関係を悪化させたくはないので、3日になると、G7の表明とは別途、日本独自の見解を出して見せた。菅義偉官房長官は会見で述べた。

「すべての当事者が自制と責任をもって慎重に行動し、国際法の完全な遵守と、ウクライナの主権と領土の一体性を尊重することを強く求める」

日本の困惑を伝えるロシアへのメッセージだろう。

しかしロシアは既に地上軍と海軍併せて6000人をクリミア半島に投入した。

ウクライナ単独ではとてもロシアに対抗できない。2012年のロシア軍人員は84万5000人だ。対してウクライナ軍は13万人である。防衛費もロシア軍が780億ドルであるのに対し、ウクライナは16億ドル。

しかも決定的にウクライナが背負っている問題は、現在の新政権に正統性がないということだ。何しろ民主的に選ばれたヤヌコビッチ大統領をクーデターで追放した政権だからだ。

はたしてそんな政権に軍隊を掌握できるのか? と思ったら、なんとウクライナ海軍トップのベレゾフスキー司令官が寝返った。いや、寝返ったという表現は正しいのだろうか。

3月1日に、ウクライナ新政権のトゥルチノフ大統領代行から司令官を任命されたばかりのベレゾフスキー司令官が、翌日には親ロシア派のクリミア自治共和国首相に忠誠を宣誓してしまった。

これでウクライナ新政権は海軍を失ってしまった。

ベレゾフスキー司令官はロシア軍らしき武装勢力がクリミア半島南部セバストポリの海軍参謀本部を包囲すると、あっさりと無抵抗で武装解除に応じたのだ。

ロシア軍は着実にクリミア半島を実効支配しつつある。

慌ててケリー米国務長官がウクライナの首都キエフを訪れ、新政府と会談することになった。しかも米国は新政府を支持したが、矛盾している。

米国が支持した新政府は、民主的に選ばれたのではなく、クーデター政権だからだ。

しかしケリー米国務長官は2日にテレビで表明した。

「(欧州の同盟国と協力し)ロシアを経済的に孤立させる」(中日新聞:2014/3/3)

具体的には、資産凍結、ビザ発給停止、貿易制限などの制裁になるだろう。

しかし米国は軍事介入は否定している。

「目的はウクライナの領土主権を守ることだ。米国の軍事介入が緊張緩和に効果的だとは思わない」(同上)

やや腰が引けている感じがするが、やはり新政府の正統性がないからだろうか。

一方、もたついているG7に対し、ロシアが先に制裁を始めた。天然ガス供給で圧力を掛ける姿勢を示したのだ。

さぁ、EUは焦る。EUはガス資源をロシアに依存すること甚だしいのだ。しかもウクライナ経由のパイプラインで供給を受けている。

これではロシアが先にEUの経済活動を揺さぶることができてしまうのだ。

となると、EUも一枚岩にはなれないかもしれない。

そうこうするうちに、ロシア軍らしき武装部隊がクリミア半島でのウクライナ軍の武装解除を進めており、クリミア自治共和国(親ロシア)の指導者側につくように要請している。

これに対してウクライナ新政府は「宣戦布告だ」と非難しているが、彼らは正統性も無く、軍の掌握も怪しい状態だ。

実際ドイツも立場が弱い。

前述の通り、ケリー米国務長官はロシアへの経済制裁を訴え、G8からも除外する用意があると威嚇したが、ドイツのシュタインマイヤー外相はこれをやんわりと牽制した。

「G8は西側がロシアと直接話せる唯一の枠組み」(zakzak:2014/3/3)

また、米、カナダ、フランス、英の4カ国は6月にソチで開催予定のG8首脳会談を見合わせる方針を決定したが、実は日、独、伊(おお、懐かしい組み合わせ?)はまだ態度を決めかねている。

ウクライナはどうなるのか。

少なくともクリミア自治共和国はウクライナから分離独立するのではないか。クリミア自治共和国はロシア系住民が多数だからだ。その後、プーチン大統領はロシアに併合するかもしれない。

今のところ、米国は弱腰だし、G7も一枚岩では無い。EUはエネルギー制裁を受けそうだ。

プーチン大統領はウクライナ全土を欲していないとも思える。既にドイツのメルケル首相と電話会談を行い、ウクライナ問題での対話開始のための連絡グループを設けることで同意した。

ドイツの発表では、「政治対話開始に向け、欧州安全保障協力機構(OSCE)などが主導する事実調査団と連絡グループを直ちに設立するというメルケル首相の提案」に対し、プーチン大統領が「受け入れた」としている。(Bloomberg.co.jp:2014/3/3)

ロシアのカラシン外務次官も2日のテレビインタビューで戦争する気は無いと答えている。

「国際法に従って国内問題の解決に乗り出せば状況は正常化し得る」(Bloomberg.co.jp:2014/3/3)



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