先日、イスラム系ウィグル人によると言われている天安門でのテロについて3回連続で投稿した。
『中国の天安門での自動車事故は、ウィグル人によるイスラムのテロか?』(2013/10/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/378938523.html
『中国共産党を揺さぶるイスラム』(2013/10/31)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/379037411.html
『ウィグル人弾圧をテロとの戦いにすり替える中国』(2013/11/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/379125311.html?1383798630
そして6日、今度は中国山西省の省都である太原市の共産党委員会庁舎前で連続爆発事件が発生した。
が、今度はイスラム系もウィグル族といった少数民族は関係なさそうだ。
だから、却って共産党にとってはやっかいな犯人の存在が浮かび上がってくる。
地元警察の情報では、容疑者は爆発直前の午前7時ころ、爆弾を設置するとフォルクワーゲンの黒いサンタナで逃亡したという。かなり具体的な情報を得ていることになる。逮捕は時間の問題かもしれない。
しかも今回の爆発は、自爆ではなく、遠隔操作か時刻設定により、時間差を設けて連続爆破させるという、計画的な犯行であり、犯行者は傷つかないように行われている。つまり、狂信的な殉教を目的としたテロというものとは違う気がする。
ただ、現場の党委庁舎付近は、高解像度のカメラが設置されていたため、犯行についてかなり明瞭な記録が残っている可能性もある。もしかすると、当局があまり公表したくない犯人が映っていたかもしれない。
爆弾はどうやら5つ以上あったらしい。1時間の間に時間差で7〜8回爆発したとの証言もある。
人通りの多い時間帯を狙ったようなので、被害を大きくしたかったのではないかという憶測があるが、もしかすると、その時間帯に登庁する共産党員を狙ったのでは無いだろうか、と私は想像してみた。
と思っていろいろな記事を見ていたら、公安当局も党や政府を狙ったテロの可能性があると言っていることが分かった。
犯人が絞られてくる。
結局、被害としては1人は死亡し、8人が負傷、20台以上の車両が損害をうけたらしい。
ちなみに、爆弾は日用品で作ることが可能な「圧力鍋爆弾」だったのではないかと見られている。今年4月にボストン連続爆破でも使われているから、そこからヒントを得た犯行かもしれない。
さて、記事の冒頭でも触れたが、少し前に天安門で自爆テロらしき事件があったばかりなので、すぐさま少数民族やイスラム系を連想した人も多いと思うが、今回の爆発が起きた山西省には、少数民族の対立問題はなさそうだ。
しかし、ここでは頻繁に発生している別のトラブルがあった。
それは山西省の主要産業である炭坑事業を巡るトラブルだ。どうもこの辺りが臭う。何しろ中国では山西省に限らず、官僚の不正や理不尽な土地収用に対して政府施設や路線バスで自爆するというテロが増加傾向にある。これらは少数民族ではなく、中国人同士の階級闘争に近い。
今回爆発事件があった山西省も例外では無い。ここでは炭坑経営での労働条件の劣悪さや、業者と住民、あるいは当局とのトラブルが頻発している。暴力事件など茶飯事だという。
例えば2009年の10月には、採掘権を巡る争いで200人近い暴力団が住民を襲撃し、4人が死んでいる。背後には当局がいるということで、住民の当局に対する怨恨はかなり強いだろう。
だから今年の9月には、村幹部の自宅が爆破されて、容疑者も含めた4人が死んでいる。
それでも炭鉱事故で作業員が多数死亡する事故が続いており、彼らに対する賃金未払いも発生しているのだ。死んだ人間には金は払わないで済まそうという姿勢がある。これは当局と業者がつるんで、利益を独占しているためだと、住民や労働者たちは考えている。当然だろう。
だから山西省という地域は、以前からきな臭い地域だったのだ。
さて、そうなるとこの爆発事件は、というよりテロは、人民による共産党への不満が原因である可能性が高い。共産党の緊張は高まれば、当然、世論操作が行われる。
で、早速ネットに、不満を逸らすための書き込みが行われた。中国大手検索サイト百度の掲示板にだ。
「共産党ビルではなく日本を爆破せよ!」
「日本人がわが国に対して行った犯罪は筆舌に尽くしがたいものだ」
「靖国神社でも爆破しろ」
「党の指導下でのみ、われわれには輝かしい未来がある。俺はこの国と党を愛している」
あまりにも幼稚なので、中国のネットユーザーらは、これらの書き込みが誰によって行われたか気付いている。
恐らく「五毛党」だろう、というのだ。「五毛党」とは、共産党のネット情報操作部隊のことだ。
だからこれらの書き込みを、中国のネットユーザー等は冷静にスルーしたか、皮肉で答えただけのようだ。
一方、公安当局にも上からお達した有ったのだろう。取材に集まった外国メディアに撮影した映像の消去を求めるなど、神経をとがらせている。
何しろ現場付近では、数日前に失業者の大規模なデモが行われていたばかりなのだ。
このデモは中国のメディアでも取り上げられており、約200人の失業者が参加したという。映像も公表されてしまっていた。まさか爆発テロがあるとは予想していなかったからだ。
しかも今回の爆発位置は、行政に市民が不満を訴える陳情窓口の近くだとも言われている。
さて、以上のことから浮かび上がってくる犯人像は、中国政府が最も恐れている、中国人民の不満分子ではないか、ということになる。