2013年11月06日

シリアの化学兵器廃棄に疑念。国民の平和は遙かに遠い

5日、OPCW(化学兵器禁止機関)のウズムジュ事務局長は、執行理事会でシリアの化学兵器約1300トンの処理を、国外に搬出し、廃棄することを進める考えを明らかにした。

シリア国内で処理するには、内戦状態であるため危険すぎるからだ。

国外としては、アルバニアやベルギーが候補地らしいが、現在米国を中心に調整中としている。

ただ、OPCWとしては、15日までには詳細な廃棄計画を策定する方針だ。

国外処理については、シリアからも提案されていた。さすがに内戦状態では安全の確保が保証できないということと、シリアだけでは資金面も技術面もクリアできないからだという。

ところが資金面で言えば、実はOPCW自体の資金が、今月末にも底を突くことが分かった。OPCWの資金は米国を筆頭に各国が拠出しているが、ここにきて資金の追加が必要となった。

OPCWが既に確保していたのは約1000万ユーロ(約13億5000万円)だったが、この度の1000トンを超える化学兵器の廃棄には全く足りない。

シリアのアサド大統領は以前、化学兵器の廃棄には10億ドルかかりそうだ、と言っていたが、専門家達は数千万ドル、いや、数億ドルかかりそうだ、と言っている。

すでにOPCWには、米国が600万ドルを出しており、他にも英国やカナダ、ドイツなどが拠出していた。しかし足りないということで、英国は300万ドル追加することを表明し、このほかロシアやフランス、そして中国も専門家などの派遣を提供しようと言っている。

ところがここに来て、米国がとんでもない情報を掴んだと言い出した。

シリアのアサド政権は、OPCWに申告していない化学兵器をまだ保有しているらしいというのだ。ソースは秘密らしいが、新たに入手した機密情報に基づいた判断だという。どうやらアサド政権が、イスラエルからの攻撃に備えて、まだ化学兵器をとっておいているらしいというのだ。

当局者の一人は言う。

「われわれの確信が揺らぐような、さまざまな情報がある」

ただ、このことはまだ、正式な米政府見解ではないとも言っている。

まだ米国は、軍事介入の意向を捨てたわけではない、ということか。

そもそも、今回の化学兵器廃棄は、欧米が「アサド政権が使った」と決めつけて、米国他に軍事介入の機会を与えそうになったところを、ロシアが「そんな証拠は無い。反体制派だって可能性があるぞ」として反対し、折衷案としてアサド政権に化学兵器の廃棄を認めさせたという経緯がある。

アサド政権は、「自分たちは使っていないけど軍事介入されてはたまらん」ということで化学兵器廃棄に同意した。

しかしシリアは内戦状態だ。OPCWの活動は「前例のない危険任務」と国連から評価され、その結果、OPCWはノーベル平和賞を受賞している。

しかしどうしてもぬぐえない疑いが残っているのも確かだ。

というのは、今回の化学兵器の関連施設や物量については、あくまでアサド政権が自己申告した分だからだ。

だから疑おうと思えばいくらでも疑える。いや、米国がその気になれば、たとえアサド政権が嘘をついていなくても「いや、彼らは嘘をついている。証拠もある」として軍事介入することは可能だ。似たようなことを米国はやってきているからだ。

そこで化学兵器の廃棄作業と並行して、内戦そのものを終わらせるべく米露が仲介して和平協議を開こうという話が進んでいる。アサド政権と反体制派を参加させた「ジュネーブ2」という会議だ。

今のところ11月半ばに予定するとして合意しているが、まだ参加国が決定していない。米露の他、アサド政権に影響力があるとさえているイランの参加が調整されているのだ。

ただ、やっかいなのは反体制派である。彼らは実は一枚岩ではない。「シリア国民連合」は、アサド大統領が退陣することを前提にしなければ参加しないとしているし、そのほかのイスラム系19団体は、ジュネーブ2への参加自体を拒否している。イランの参加に同意できないという理由も加わっているのだ。

こうなるとアサド大統領もへそを曲げ始めた。

「シリアの将来を決める権利はシリア国民のみにある」

と言って、ジュネーブ2への参加を拒否してしまった。まず、「外国がテロリストへの支援をやめること」が条件だと言い出す始末。

こんな状態では和平協議などできるはずもなく、シリアの内戦はまだまだ続くと思われる。

シリアの国民に穏やかな日々が戻る日は、遙かに遠い。



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