2013年11月01日

イスラエルが内紛中のシリアを空爆する理由(続)

以前イスラエルがシリアを攻撃する理由について長めの記事を投稿した。

『イスラエルが内紛中のシリアを空爆する理由』(2013/05/05)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/359067477.html

詳しくは上記の記事を参照していただきたいが、簡単に書けば、イスラエルが狙っているのはシリアではなく、シリアの内紛に加わっているヒズボラだ。

では何故ヒズボラをイスラエルが攻撃するのかと言えば、これも詳細は上記の記事を参照いただきたいが、簡単に書けば、ヒズボラは「イスラム共和制をレバノンに建国すること」を目的にレバノンに本拠を置く組織で有り、目標に「反欧米」「イスラエルの殲滅」を掲げているからだ。

先月(10月)31日に、イスラエルの戦闘機がシリアの港湾都市ラタキア付近の軍事基地を攻撃したと、オバマ政権当局が課発表した。

この攻撃について、中東のメディアでもやはり同基地のミサイル保管場所が爆発したと報道していた。

ただ、当のイスラエル政府は沈黙している。

前述の通り、イスラエルは常にヒズボラに高度な武器が渡ることを恐れる。今回もミサイル保管場所が爆発したことから、イスラエルが攻撃した可能性は高い。しかも今回狙われたのは、ロシア製の地対空ミサイルだ。

既にイスラエルは今年に入ってからシリアを数回空爆しているが、これらは常にヒズボラを狙ったものだと考えられるのだ。

また、イスラエルは以前からシリアに以下の警告をしていた。

「ヒズボラなどテロ組織に指定された組織への武器移転や、イスラエルにとって脅威となり得るシリアからレバノンへの武器密輸の動きがあれば標的にする」

この警告が成された理由は、内紛中のシリアでアサド政権を支援しているのが、ヒズボラだからだ。ヒズボラはイスラム教シーア派であり、反体制派の中心であるスンニ派とも敵対している。

そして警告通り、イスラエルはこれまでロシア製地対空ミサイルをレバノン側に運んでいた車列や、イラン製ミサイルがヒズボラに輸送されようとしているところを空爆してきている。

また、より穿った見方をすれば、というより勘ぐれば、イスラエルはシリアの化学兵器処理を妨害しているとも考えられる。

これは少々飛躍した想像かもしれないが、イスラエルは米国が中東に関与しなくなることを恐れている。同時にロシアが中東に影響力をもつことも恐れているだろう。なぜならシリアやイランが台頭する可能性があるからだ。

そこで、米国がシリアに干渉を続けるためにも、化学兵器の処理を妨害したいのではないだろうか。

勿論、イスラエルの空爆の主目的はヒズボラだが、レバノンではなく、敢えてシリア内のヒズボラを攻撃するのは、副産物としてのシリアの内紛を長引かせ、アサド政権が国際的な信用を得て安定することを疎外したいのではないだろうか、などと、ちょっと考えすぎてみた。


以下、シリア関連記事です(新しい順)。

『シリアの化学兵器廃棄を義務づける国連安全保障理事会決議は、内戦終結までの道標は示していない』(2013/09/30)http://newsyomaneba.seesaa.net/article/376183214.html

『シリア軍事介入を回避した米ロ合意は、内戦の終結とは別の話だ』(2013/09/16)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/374990936.html

『シリアへの軍事介入は回避されそうなのか』(2013/09/11)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/374525596.html

『シリアへの米軍事介入を回避させるロシアの提案』(2013/09/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/374466774.html

『シリアへの軍事介入にNATOは参加せず。しかし見せしめは必要だと』(2013/09/03)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/373816054.html

『シリアへの軍事介入への米仏と露のせめぎ合い』(2013/09/03)http://newsyomaneba.seesaa.net/article/373811103.html

『シリア政府が化学兵器を使用した証拠はあるのか? 見切り発車の軍事介入が行われるのか』(2013/08/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/373401150.html

『米国によるシリア攻撃が始まるのか』(2013/08/28)
http://newsyomaneba.seesaa.net/

『シリアで毒ガス兵器により1300人以上死亡。しかし誰が使ったのか』(2013/08/22)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/372654267.html

『シリアでサリンを使ったのは反体制派だとロシアが報告』(2013/07/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/368795017.html

『米国がシリアの反体制派への武器供与拡大を決定』(2013/06/14)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/366304428.html

『シリアに対する日本政府の立ち位置』(2013/06/11)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/365988776.html

『シリア内戦を停止させる国際会議の開催は可能か』(2013/05/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/364050350.html

『シリアの内戦がレバンノンに飛び火する』(2013/05/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/

『シリア・ヒズボラ連合で攻勢をかけるアサド大統領の狙い』(2013/05/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/362493849.html

『国連総会がシリア国民連合を、政権移行の対話者として認める決議を行った』(2013/05/16)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/361570283.html

『イスラエルが内紛中のシリアを空爆する理由』(2013/05/05)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/359067477.html

『(続)シリアでサリンが使用されたという情報は、米国を参戦させるための捏造か』(2013/04/26)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/357324613.html

『シリアでサリンが使用されたという情報は、米国を参戦させるための捏造か』(2013/04/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/357023672.html

『シリアで化学兵器が使われたのか。お互いを非難する体制派と反体制派』(2013/03/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/348363101.html

『シリア反体制派が暫定政府に首相を選出したが…』(2013/03/19)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/347857251.html

『シリアの使ったガスは化学兵器か?態度を変えつつあるロシア。』(2012/12/25)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/309829131.html

『シリア、サリンを準備中か』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305190492.html

『ロシアとトルコ、経済では協力、対シリア外交では距離』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305180076.html

『シリアの砲撃に報復するトルコ。シリアは何故トルコ//砲撃したのか。』(2012/10/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/295414151.html

『シリアは化学兵器を使用するか』(2012/07/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/282860806.html

『シリアで200人規模の虐殺。アサド政権側か、反政府側か。』(2012/07/13)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/280748896.html

『シリアは「戦争状態」にあると認めたアサド大統領に焦りが見られる』(2012/06/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277587322.html

『シリア軍がトルコ軍戦闘機を撃墜。しかしNATOを敢えて刺激するだろうか。』(2012/06/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/276862619.html

『シリアのシャッビーハ(シャビハ)という狂犬の暴走』(2012/06/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/273939512.html

『撤退どころか越境し始めた。シリア軍の暴走が止まらない』(2012/04/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/263642669.html

『シリアに対し、一枚岩になれないアラブ連盟』(2012/04/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/261615315.html

『シリアのアサド政権を維持させたいロシアの思惑』(2012/02/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/250749829.html

『国際社会による軍事介入の可能性が高まるシリア政府の強硬姿勢』(2012/01/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/248074698.html

『シリアの自爆テロは、反体制派か、アサド政権の自作自演か』(2012/01/08)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244957285.html

『シリアで任務についたアラブ連盟の監視団。しかしどうにも怪しい。』(2011/12/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/243414862.html

『シリアの報道は事実か?あまりに狂気を帯びた惨状が報じられている。』(2011/11/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/237704569.html

『リビア化するシリアの弾圧とアサド大統領の強硬姿勢』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236176084.html

『シリアで何が起きているのか。シリア騒乱への経緯。』(2011/11/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/233918198.html



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