2013年10月10日

エジプトは内戦化するか。米国の支援打ち切りのもたらすもの

9日、米政府はエジプトへの軍事支援と資金援助2億6000万ドル(約254億円)を凍結すると発表した。この凍結は一時的なもので、民主化への前進が確認できたら再開するという。

このことについては、ヘーゲル米国防長官がエジプトのシン国防相に電話でも伝えた。約40分の会談だったようだ。

軍事支援の凍結内容は、F16戦闘機、M1A1エイブラムス戦車、ハープーン対艦ミサイル、アパッチ攻撃ヘリコプターなどだという。ただし、対テロ軍事支援や教育などの民生部門への援助は継続するという。

表向きは、米政府が、軍主導の暫定政権とイスラム勢力の衝突で死者が続出しているため、早く文民政権への移行をせよ、と促すためだそうだ。

ただ、米政府の懐が厳しいということもあるのではないか。米政府からエジプトの支援している額は年間で約1500億円で、その多くが軍事関連だ。

何しろ米国では、政府閉鎖や財政赤字上限問題がある。下手をすれば米国債のデフォルトが生じるという瀬戸際だ。だからエジプトだけではなく、イスラエルへの支援も減らすべきだという議論も始まっているらしい。

もう一つ米側の事情として有るのは、米国の対外援助法というものがあるのだが、これによれば、軍事政権への支援は禁止されている。

つまり、現在のエジプトの暫定政権が軍によるクーデターであると認定された場合は、完全に支援を打ち切る必要が出てくる。

ただ、今のところ米政府高官は言う。

「クーデターと結論を出したわけではなく、結論を出すつもりもない」

そう、あくまで一時的な支援打ち切りだ。完全に打ち切ってしまうと、イスラエルと平和条約を締結しているエジプトへの影響力を喪失しかねない。

米側としては、支援を餌に、早くエジプトの安定化を促しているという状況になる。

ところがエジプト軍は米国からだけ支援を受けているわけではない。米国の支援が減少したことを補う形で、サウジアラビアが支援を行っているのだ。

これで暫定政権の必要なまでのムスリム同胞団への弾圧の理由が一つ分かる。ムスリム同胞団はサウジアラビアの敵対組織でもあるからだ。

しかしいまだ覇権国家である米国の影響が薄れれば、中東の一地域でしかないサウジアラビアが支援しても、エジプトの不安定さは取り除かれにくくなるであろう。

下手をすると、ロシアの介入で安定化に向かっているシリアの代わりに、今度はエジプトが内戦化するかもしれない。

もしエジプトが内戦化すれば、それは中東での米国の影響力が衰退していることを示すのであろうか。


以下、エジプト関連の記事です(新しい順)。

『エジプトのデモで51人死亡。未だ根強いムスリム同胞団支持』(2013/10/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/376858296.html

『エジプトでムスリム同胞団の活動禁止命令。治安はさらに悪化する可能性』(2013/9/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/375652624.html

『ムスリム同胞団を潰しにかかるエジプト暫定政権』(2013/08/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/372509993.html

『エジプトでクーデター。モルシ大統領は拘束され、憲法は一時停止された。』(2013/07/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/368267408.html

『エジプトのデモに、軍が介入を宣言。48時間後に何が起きるのか』(2013/07/02)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/368115223.html

『エジプトのデモ、再び。経済政策への失望と、イスラム化への警戒』(2013/07/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/?1372750119

『分裂が顕在化するエジプト』(2012/11/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/304087623.html

『クリントン国務長官とエジプトのモルシ大統領と会談。まずはお互いの思惑は一致
』(2012/07/15)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/281136899.html

『エジプト新大統領モルシー氏は、ぬかるみへの第一歩を踏み出したかもしれない。』(2012/06/25)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277224870.html

『エジプト大統領選の結果は、どっちに転んでも新たな火種だ』(2012/06/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277009953.html

『エジプトのムバラク大統領に死刑求刑。軍部への不満を反らす見せしめか』(2012/01/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244591656.html

『エジプト騒乱の続章の幕開けか。暫定統治の軍と、イスラム原理主義の衝突』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236099759.html

『エジプトの、新たな混乱が始まるのか。』(2011/02/12)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/185542674.html

『ムバラク大統領は、権力亡者となり暴走しているのか。後ろ盾の米国にも読めず。』(2011/02/11)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/185457860.html

『デモの長期化はムバラクに有利か、反ムバラクに有利か』(2011/02/05)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/184439695.html

『ムバラク大統領の退陣は、新たな対立を産む可能性がある』(2011/02/02)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183849084.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第五部。』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183236111.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第四部。』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183159468.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第三部。』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183150487.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第二部。』(2011/01/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183086820.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第一部。』(2011/01/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183082938.html




posted by しげぞう | Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。