2013年09月27日

デフレ脱却のまやかし。消費税増税でアベノミクスは失敗する

27日、甘利明経済再生相は閣議後の会見で、同日に発表されたCPI(消費者物価指数)が3ヶ月連続でプラスになったことを取り上げ、デフレ脱却しつつある過程にあると語った。

実際、総務省の発表では、8月のCPIは前年同月比で0.8%の上昇を見せている。確かに3ヶ月連続プラスだ。

だから甘利明経済再生相は、

「長いデフレから脱却しつつあるという過程にある」

大嘘である。詭弁である。

CPIとはエネルギー価格が含まれている指標であり、デフレ脱却を判断するには全く相応しくない。エネルギー価格など、円安や産油国の情勢という外的要因で簡単に跳ね上がってしまうのだ。

従って、本来であれば、デフレ脱却を判断する指標としては、エネルギー価格を反映させないコアコアCPIというものを使わねばならない。

ではコアコアCPIはどうだったのか。0.1%低下していた。つまり、まだデフレ脱却の兆しは見えていないということになる。

そのことを突っ込まれた甘利明経済再生相は言った。

「これがプラスに転じ、大きなショックでもない限り、もとの状態に戻らない環境が整備されたときに(デフレ)脱却といえる」

語るに落ちたと言うべきか。「大きなショックでも」無い限りと言うが、まさに消費税増税が控えて居るではないか。これを「大きなショック」と言わずに何を大きなショックと言うのか。

それにたとえ物価が上昇しても、賃金が上がる兆しを見せていない(建設関係は兆しあり)以上、単に国民が貧しくなるだけであろう。賃金が上昇しないうちに、消費税を増税すれば、実質賃金は下がったことになってしまう。

さて、経済を先先取りすると言われている株式市場はどうだったのか。

ずばり、CPIの上昇を好感しなかった。つまり甘利明経済再生相の発言など、株式市場は信じていないのだ。マーケットは騙されなかった。

また、マーケット関係社らは、CPIの上昇には輸入商品価格の上昇が原因の一つにあるとして、デフレ脱却としては評価出来ない、としている。その指摘は正しいであろう。

ただ、需給ギャップは確かに縮小傾向を見せているため、マーケット関係者らは、コアコアCPIが年内にプラスに転じるかどうかが、一つの判断どころだとみているようだ。

マーケットはデフレ脱却を、当然ながら望んでいる。眠れる1500兆円の個人資金が株式市場などのリスク資産に少しでも動けば、一気に株価が上昇するであろうという思惑があるためだ。

しかしこの度のCIP上昇には、マーケットは反応しなかった。そのことについて、楽天経済研究所シニア・マーケットアナリストの土信田雅之氏は言う。

「デフレ脱却しても、賃金が上昇しなければ、可処分所得が減るだけで実質マイナスだ。所得を増やす政策がなければ株価上昇要因にはなりにくい」

可処分所得といえば、やはり消費税増税のダメージが予想できる。消費税が増税されれば、可処分所得が減るからだ。

だから政府は、消費税増税の悪影響を軽減する経済対策を検討しているが、マッチポンプだろう。そんなことをするなら、最初から増税しなければ良いのだ。まるでブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいるような、かなりばかげた状態になろうとしている。

だから某証券会社関係者は言う。

「ここまで景気回復をけん引してきたのは消費。消費よりも企業に重点を置いた経済対策では、消費腰折れの懸念は消えない」

同様に、三井住友アセットマネジメントのチーフエコノミストである宅森昭吉氏も言う。

「企業が保有するキャッシュは豊富で、オリンピックなどビジネスチャンスもある。ここで賃金を上げていけばいい循環になる。コスト削減を優先すれば、日本経済は成長軌道に乗れず、『合成の誤謬』となって企業に返ってくる」

恐らくそうなる。

企業は業績が多少改善しても、賃金は上げないだろう。長いデフレが企業家モラルを変えてしまったからだ。

業績改善しても、恐らく優先順位は、債務返済、内部留保、株主配当、役員報酬といったものに反映させ、賃金への反映はない。

デフレ脱却は、それほど難しい。そこに消費税増税など行えば(恐らく行うが)、ますます国民が貧乏になるだけだと、安倍晋三首相は分かっていないのだろうか。



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