2013年09月24日

エジプトでムスリム同胞団の活動禁止命令。治安はさらに悪化する可能性

23日、エジプトの裁判所は、ムスリム同胞団に対して活動の禁止並びに資産凍結を命じた。ムスリム同胞団は軍によって解任されたモルシ(モルシー、ムルシとも)前大統領の出身母体だ。

理由は、ムスリム同胞団が「イスラム教を隠れみのにして権力を握り、国民の権利を侵害した」などというものだ。

今回の訴訟は、左派の国民統一進歩党(タガンマア党)の弁護士が起こしたもので、動機としては、国民を暴力から保護するためとしている。そうはいっても、おそらくは暫定政権からの働きかけがあったのではないかと勘ぐれる。

これに対し、モハメド・アルサイド裁判長は、「裁判所は、ムスリム同胞団とその非政府組織の活動、同胞団から派生するすべての組織の活動を禁止する」と判決を下した。

この裁判の伏線はあった。先にエジプトの社会連帯省は、ムスリム同胞団が、非政府組織が政治団体として活動すること並びに武装組織を結成することを禁じた法律に違反していると非難していたのだ。

ムスリム同胞団の傘下には「自由公正党」という政治団団体があり、また、現政権はムスリム同胞団が暴力を扇動していると主張しているからだ。

7月にモルシ前大統領が解任されて依頼、現政権によるムスリム同胞団への締め付けは強化されてきている。

軍も同様で、8月にはモルシ氏を支持する人たちの座り込み抗議活動に対し、強制排除を行った。その際、市民や治安要員数百人が死亡している。

また、最近はムスリム同胞団の幹部達が、相次いで逮捕されるという状態になっている。

この度の判決によって、さらなるムスリム同胞団への弾圧は強化されることは間違い無い。

この判決に対し、ムスリム同胞団は反発しており、控訴するであろうと考えられる。

ムスリム同胞団は元々、結成以来非合法であった。結成は1928年だが、特にムバラク元大統領はムスリム同胞団にとっての政敵であった。しかしムバラク大統領(当時)が2011年の大衆蜂起で打倒されると、その勢いを買って直後の議会選挙で躍進し、翌年の2012年には、とうとう擁立するモルシ氏を大統領選で勝利に導いた。

しかしモルシ前大統領を軍のクーデターにより解任した現政権は、ムスリム同胞団の活動を「テロリズム」と決めつけており、幹部を含めた2000人以上のイスラム教徒を逮捕している。

ムスリム同胞団は組織としては弱体化しているであろう。既にバディーア団長を初めとする指導部はほとんど逮捕されており、逃れた者たちは地下に潜伏してしまった。

この状態では、大規模デモを行うための組織的な動員力も低下したと考えられている。ムスリム同胞団は現暫定政権により、再び非合法な組織に押し戻されることになる。

逆に言えば、大規模抗議運動などが行えなくなった分、一部の過激な団員たちによる武装闘争激化の可能性が出てきている。

既に最近、中部ミニヤ県やカイロ近郊では武装集団と治安部隊が銃撃戦を行うなど、武力闘争が激化の兆しを見せている。

恐らく暫定政府はこの度の判決に従うと思われる。場合によっては勢いに乗って、現在検討が進められている憲法草案に、宗教組織による政党設立を禁止する規定を盛り込むかもしれない。徹底的にイスラム化の予防策を巡らすで有ろう。

この動きに対して、ムスリム同胞団側のまだ逮捕されていない幹部達は、「政治的な判決だ」として反発を強めている。

ムスリム同胞団にとっては必死だ。というのも、この度の判決は、ムバラク政権時代に行われていたムスリム同胞団による貧困層への慈善活動なども禁じられることになる。

つまり、現在の暫定政権が進めているムスリム同胞団への弾圧は、ムバラク政権時代よりも過酷になろうとしているのだ。

公のデモ抗議活動や、慈善活動などを封じられたことにより、ムスリム同胞団がテロ化する可能性もある。

エジプトは、再び紛争の地となろうとしているのか。


以下、エジプト関連の記事です(新しい順)。

『ムスリム同胞団を潰しにかかるエジプト暫定政権』(2013/08/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/372509993.html


『エジプトでクーデター。モルシ大統領は拘束され、憲法は一時停止された。』(2013/07/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/368267408.html

『エジプトのデモに、軍が介入を宣言。48時間後に何が起きるのか』(2013/07/02)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/368115223.html

『エジプトのデモ、再び。経済政策への失望と、イスラム化への警戒』(2013/07/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/?1372750119

『分裂が顕在化するエジプト』(2012/11/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/304087623.html

『クリントン国務長官とエジプトのモルシ大統領と会談。まずはお互いの思惑は一致
』(2012/07/15)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/281136899.html

『エジプト新大統領モルシー氏は、ぬかるみへの第一歩を踏み出したかもしれない。』(2012/06/25)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277224870.html

『エジプト大統領選の結果は、どっちに転んでも新たな火種だ』(2012/06/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277009953.html

『エジプトのムバラク大統領に死刑求刑。軍部への不満を反らす見せしめか』(2012/01/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244591656.html

『エジプト騒乱の続章の幕開けか。暫定統治の軍と、イスラム原理主義の衝突』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236099759.html

『エジプトの、新たな混乱が始まるのか。』(2011/02/12)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/185542674.html

『ムバラク大統領は、権力亡者となり暴走しているのか。後ろ盾の米国にも読めず。』(2011/02/11)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/185457860.html

『デモの長期化はムバラクに有利か、反ムバラクに有利か』(2011/02/05)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/184439695.html

『ムバラク大統領の退陣は、新たな対立を産む可能性がある』(2011/02/02)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183849084.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第五部。』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183236111.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第四部。』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183159468.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第三部。』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183150487.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第二部。』(2011/01/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183086820.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第一部。』(2011/01/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183082938.html


posted by しげぞう | Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/375652624

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。