2013年09月16日

シリア軍事介入を回避した米ロ合意は、内戦の終結とは別の話だ

16日、米、英、仏は、シリアの化学兵器廃棄に向けて、「強力で断固とした」国連決議を求めることで合意した。

「強力で断固とした」決議とは、シリアの化学兵器廃棄について、明確で拘束力のある記述を定めた決議という意味だ。

当局者は今週末までに採決に付すことができる議決案がまとまることを期待しているという。

既に14日に米ロ外相が合意した枠組みでは、まず、一週間以内にシリアのアサド政権が化学兵器の内訳を申告すること。次に来年末までに国連主導でアサド政権が化学兵器の廃棄を目指すことが求められている。

ところが枠組みは決まったとは言え、米ロの認識には開きがあるため、この合意の段階ではあまり成果は期待できない。

というのも、米側は、シリアの化学兵器関連施設はアサド政権支配地域に45箇所あると推定しているだけであるのに対し、ロシア側は、化学兵器関連施設は反体制派側にもあると主張しているためだ。

また、ロシアの主張では、そもそも8月21日に化学兵器を使用したのは、反体制派の可能性があるということもある。

このような米ロの見解の相違がある限り、国連査察などまともに履行出来るはずがない。

ただ、この度の米ロの枠組みが、たとえ履行に難があるとはいえ、ひとまずは米国の軍事介入を回避したと言うことでは、ロシアの外交努力の成果と言えるだろう。

ただ、あくまでひとまずの軍事介入回避だ。まだ米国は軍事介入を中止はしていない。

例えばアサド政権だけでも1000トン以上の化学兵器を分散保持しているという。これらが本当に廃棄されたという結論をどうやって出すのか。

また、未だ内戦が止まないシリアで、化学兵器関連施設の査察を安全かつ確実に行う事が出来るかどうか。さらに、内戦の最中に化学兵器をどうやって安全な場所に運び出すのか。

それにそもそも、米国が軍事介入するという意思表示をした段階から、問題がアサド政権の化学兵器にすり替わってしまったが、最も重要な問題である、内戦をどうやって終わらせるのかということについては、全く糸口が見えない。

つまり、この度の米ロ合意は、軍事介入を回避できたことでは評価できたとしても、シリア内戦を終わらせるという事に関しては、全く無関係な話になっているのだ。

むしろアサド政権がロシアに守られている事ばかりが目立ってしまった。

だからシリアのアリ・ハイダル国民和解担当相は言った。

「この合意は、ロシアの友人たちのおかげで達成できた、シリアにとっての勝利だ。これによって、シリアに対する戦争を求めていた人たちの口実は否定され、シリアに対する戦争は回避された」

これに対して、シリアの反体制派は、米ロの合意が却ってアサド政権が通常兵器での攻撃を強化することになったと主張している。

このことをブルッキングス・ドーハ・センターのシャディ・ハミド氏は以下の様に表現している。

「アサド氏は化学兵器使用に対し実質報酬を与えられている。アサド氏は従来の兵器を使用している限り、何をやっても罪を逃れられるようになった」

ただ、前述したように、米国は軍事介入を中止はしていない。オバマ大統領は言う。

「アサド大統領が合意の枠組みに従わない場合は軍事介入は依然選択肢として残っている」

また、米国のこの度の軍事介入回避について、イランに誤ったメッセージを伝えてしまうのではないか、という批判についてオバマ大統領はイランのロウハニ大統領と交わした書簡で反論している。

「われわれが攻撃をしなかったからと言って、イランにも攻撃をしないという教訓を得るべきではない」

そして、オバマ大統領は、この度の米ロ合意からイランが読み取るべきメッセージは次の様な事だと述べた。

「反対に言えることは、今回のことからイランが得るべき教訓は、イランの問題についても外交努力を通じて解決する可能性があるということだ」

シリアへの米軍事介入はまだ完全に回避されたわけではないし、何よりシリア内戦終結への糸口は見えていない。



以下、シリア関連の記事です。

『シリアへの軍事介入は回避されそうなのか』(2013/09/11)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/374525596.html

『シリアへの米軍事介入を回避させるロシアの提案』(2013/09/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/374466774.html

『シリアへの軍事介入にNATOは参加せず。しかし見せしめは必要だと』(2013/09/03)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/373816054.html

『シリアへの軍事介入への米仏と露のせめぎ合い』(2013/09/03)http://newsyomaneba.seesaa.net/article/373811103.html

『シリア政府が化学兵器を使用した証拠はあるのか? 見切り発車の軍事介入が行われるのか』(2013/08/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/373401150.html

『米国によるシリア攻撃が始まるのか』(2013/08/28)
http://newsyomaneba.seesaa.net/

『シリアで毒ガス兵器により1300人以上死亡。しかし誰が使ったのか』(2013/08/22)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/372654267.html

『シリアでサリンを使ったのは反体制派だとロシアが報告』(2013/07/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/368795017.html

『米国がシリアの反体制派への武器供与拡大を決定』(2013/06/14)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/366304428.html

『シリアに対する日本政府の立ち位置』(2013/06/11)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/365988776.html

『シリア内戦を停止させる国際会議の開催は可能か』(2013/05/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/364050350.html

『シリアの内戦がレバンノンに飛び火する』(2013/05/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/

『シリア・ヒズボラ連合で攻勢をかけるアサド大統領の狙い』(2013/05/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/362493849.html

『国連総会がシリア国民連合を、政権移行の対話者として認める決議を行った』(2013/05/16)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/361570283.html

『イスラエルが内紛中のシリアを空爆する理由』(2013/05/05)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/359067477.html

『(続)シリアでサリンが使用されたという情報は、米国を参戦させるための捏造か』(2013/04/26)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/357324613.html

『シリアでサリンが使用されたという情報は、米国を参戦させるための捏造か』(2013/04/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/357023672.html

『シリアで化学兵器が使われたのか。お互いを非難する体制派と反体制派』(2013/03/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/348363101.html

『シリア反体制派が暫定政府に首相を選出したが…』(2013/03/19)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/347857251.html

『シリアの使ったガスは化学兵器か?態度を変えつつあるロシア。』(2012/12/25)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/309829131.html

『シリア、サリンを準備中か』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305190492.html

『ロシアとトルコ、経済では協力、対シリア外交では距離』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305180076.html

『シリアの砲撃に報復するトルコ。シリアは何故トルコ//砲撃したのか。』(2012/10/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/295414151.html

『シリアは化学兵器を使用するか』(2012/07/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/282860806.html

『シリアで200人規模の虐殺。アサド政権側か、反政府側か。』(2012/07/13)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/280748896.html

『シリアは「戦争状態」にあると認めたアサド大統領に焦りが見られる』(2012/06/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277587322.html

『シリア軍がトルコ軍戦闘機を撃墜。しかしNATOを敢えて刺激するだろうか。』(2012/06/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/276862619.html

『シリアのシャッビーハ(シャビハ)という狂犬の暴走』(2012/06/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/273939512.html

『撤退どころか越境し始めた。シリア軍の暴走が止まらない』(2012/04/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/263642669.html

『シリアに対し、一枚岩になれないアラブ連盟』(2012/04/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/261615315.html

『シリアのアサド政権を維持させたいロシアの思惑』(2012/02/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/250749829.html

『国際社会による軍事介入の可能性が高まるシリア政府の強硬姿勢』(2012/01/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/248074698.html

『シリアの自爆テロは、反体制派か、アサド政権の自作自演か』(2012/01/08)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244957285.html

『シリアで任務についたアラブ連盟の監視団。しかしどうにも怪しい。』(2011/12/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/243414862.html

『シリアの報道は事実か?あまりに狂気を帯びた惨状が報じられている。』(2011/11/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/237704569.html

『リビア化するシリアの弾圧とアサド大統領の強硬姿勢』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236176084.html

『シリアで何が起きているのか。シリア騒乱への経緯。』(2011/11/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/233918198.html




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