2013年09月11日

シリアへの軍事介入は回避されそうなのか

10日、オバマ大統領はホワイトハウスで、国民に向けての演説を行った。そこでいったんは、軍事介入を延期(止めるとは言っていない)し、シリアのアサド政権に化学兵器の放棄を求める国連安全保障理事会の決議案の採択を目指し、外交的な解決を目指してみる、ということを表明した。

決議案の原案を提出しているのはフランスだ。同日の10日、フランスは決議案原案を国連安全保障理事会のメンバー国に提示した。ここから文言の調整が始まるが、このことでいったんはシリアへの軍事攻撃は保留となったことになる。

しかしまだオバマ大統領は軍事攻撃の準備は進めるとしている。それでもロシアが提案したアサド政権への化学兵器放棄を促す案と、アサド政権が化学兵器禁止条約に参加するように仕向けたことについては、「前兆の兆し」と評価しているとした。

従って、今後は「プーチン大統領と協議を継続する」とし、外交的な努力をまずは優先しようじゃないか、と表明している。

オバマ大統領がロシアの提案を評価しているのは、以下の理由による。

「ロシアがアサド政権の最も強固な同盟国であることを考えれば、化学兵器の脅威を武力行使をせずに除去できる可能性がある」

従ってオバマ大統領は、この外交的努力が行われる間は、米議会で審議中のシリアへの軍事攻撃を承認する決議案については、暫く採択を延期するように議会に要請した。

しかし、いつでも軍事攻撃できる態勢は維持するとも述べている。

「ロシアの提案が成功するかどうかを言うのは時期尚早だ。いかなる合意もアサド政権が守るかどうかを検証しなくてはいけない」

つまり、外交的努力が失敗すれば、すぐにでも軍事攻撃をしかけるぞ、という脅しは残してあると言っている。

ただ、フランスが提出している決議案について、ロシアは難色も示している。というのも、軍事行動を可能にする国連憲章7章に言及しているためだ。

つまりフランスの決議案草案には、シリアが15日以内に化学兵器プログラムに関する申告を行う事を求めていると同時に、国連査察を化学兵器施設、関係社、記録、装備に対して受け入れることを要求している。

問題はこの後で、もしシリアがこれらを遵守しないのであれば、制裁措置を講じると主張しているのだ。

「(国連安保理は)シリア当局がこの決議の内容に従わない場合、第7章に基づき一段の必要な措置を講じる」

ここにロシアは難色を示している。

なぜなら、この国連憲章第7章は、国連安全保障理事会が、経済制裁から軍事介入に至る強制措置を発動する権限を規定しているからだ。

結局、シリアに少しでも不穏な動きがあれば、いや、あるいは反体制派の策謀により、アサド政権の振りをした化学兵器の使用などがあれば、シリアは軍事攻撃を受けてしまう可能性があるということではないだろうか。

しかも草案には「シリア当局による化学兵器使用の即時中止」が要求されているが、そもそもアサド政権が化学兵器を使用したことはまだ、国際社会においては証明されていないのだ。

他にもロシアが難色を示している部分がある。

それは、この2年半に渡るシリアの内戦において、一方的にアサド政権を戦争犯罪者と前提しているかのように、国際司法裁判所に戦争犯罪での起訴することも求められているからだ。

とにかくアサド政権悪者論が前提になりすぎている。

また、オバマ大統領は勘違いしているのか、わざとミスリードしているのか分からないが、次の様な表現を使っている。

「シリアのアサド政権が先月21日にダマスカス近郊で化学兵器を使用したことは明らかな国際法違反であり、米国の安全保障を脅かす問題だ」

いや、まてまて。シリアはそもそも化学兵器禁止条約に加盟していない。つまり、国際法違反ではないのではないか。それどころか、もしも米国が国連安全保障理事会の決議無しで軍事攻撃すれば、それこそ国際法違反だろうとも言える。

しかもオバマ大統領は自らのシリア軍事攻撃への姿勢が正しいことを主張している。

「米国が軍事介入に踏み切る構えを示したからこそ、これが圧力となってロシア案が浮上した」

というわけだ。確かに一理あるだろう。

それにしても不思議なくらい、この間、反体制派側の事が取り上げられていない。一体国際社会はどうなっているのか。

さて、このようにあくまで軍事攻撃をする姿勢を維持している米国に対し、ロシアのプーチン大統領は難癖を付けた。

「武力行使が準備されている中で一方的な武装解除を強いるのは困難だ」

だから米国はシリア攻撃を断念する必要があるのだ、と言っている。

以上の様に、いったんは外交的努力が浮上したが、まだまだ軍事介入の可能性は無くなってはいない。




以下、シリア関係の記事です。

『シリアへの米軍事介入を回避させるロシアの提案』(2013/09/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/374466774.html

『シリアへの軍事介入にNATOは参加せず。しかし見せしめは必要だと』(2013/09/03)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/373816054.html

『シリアへの軍事介入への米仏と露のせめぎ合い』(2013/09/03)http://newsyomaneba.seesaa.net/article/373811103.html

『シリア政府が化学兵器を使用した証拠はあるのか? 見切り発車の軍事介入が行われるのか』(2013/08/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/373401150.html

『米国によるシリア攻撃が始まるのか』(2013/08/28)
http://newsyomaneba.seesaa.net/

『シリアで毒ガス兵器により1300人以上死亡。しかし誰が使ったのか』(2013/08/22)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/372654267.html

『シリアでサリンを使ったのは反体制派だとロシアが報告』(2013/07/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/368795017.html

『米国がシリアの反体制派への武器供与拡大を決定』(2013/06/14)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/366304428.html

『シリアに対する日本政府の立ち位置』(2013/06/11)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/365988776.html

『シリア内戦を停止させる国際会議の開催は可能か』(2013/05/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/364050350.html

『シリアの内戦がレバンノンに飛び火する』(2013/05/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/

『シリア・ヒズボラ連合で攻勢をかけるアサド大統領の狙い』(2013/05/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/362493849.html

『国連総会がシリア国民連合を、政権移行の対話者として認める決議を行った』(2013/05/16)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/361570283.html

『イスラエルが内紛中のシリアを空爆する理由』(2013/05/05)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/359067477.html

『(続)シリアでサリンが使用されたという情報は、米国を参戦させるための捏造か』(2013/04/26)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/357324613.html

『シリアでサリンが使用されたという情報は、米国を参戦させるための捏造か』(2013/04/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/357023672.html

『シリアで化学兵器が使われたのか。お互いを非難する体制派と反体制派』(2013/03/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/348363101.html

『シリア反体制派が暫定政府に首相を選出したが…』(2013/03/19)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/347857251.html

『シリアの使ったガスは化学兵器か?態度を変えつつあるロシア。』(2012/12/25)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/309829131.html

『シリア、サリンを準備中か』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305190492.html

『ロシアとトルコ、経済では協力、対シリア外交では距離』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305180076.html

『シリアの砲撃に報復するトルコ。シリアは何故トルコ//砲撃したのか。』(2012/10/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/295414151.html

『シリアは化学兵器を使用するか』(2012/07/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/282860806.html

『シリアで200人規模の虐殺。アサド政権側か、反政府側か。』(2012/07/13)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/280748896.html

『シリアは「戦争状態」にあると認めたアサド大統領に焦りが見られる』(2012/06/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277587322.html

『シリア軍がトルコ軍戦闘機を撃墜。しかしNATOを敢えて刺激するだろうか。』(2012/06/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/276862619.html

『シリアのシャッビーハ(シャビハ)という狂犬の暴走』(2012/06/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/273939512.html

『撤退どころか越境し始めた。シリア軍の暴走が止まらない』(2012/04/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/263642669.html

『シリアに対し、一枚岩になれないアラブ連盟』(2012/04/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/261615315.html

『シリアのアサド政権を維持させたいロシアの思惑』(2012/02/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/250749829.html

『国際社会による軍事介入の可能性が高まるシリア政府の強硬姿勢』(2012/01/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/248074698.html

『シリアの自爆テロは、反体制派か、アサド政権の自作自演か』(2012/01/08)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244957285.html

『シリアで任務についたアラブ連盟の監視団。しかしどうにも怪しい。』(2011/12/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/243414862.html

『シリアの報道は事実か?あまりに狂気を帯びた惨状が報じられている。』(2011/11/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/237704569.html

『リビア化するシリアの弾圧とアサド大統領の強硬姿勢』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236176084.html

『シリアで何が起きているのか。シリア騒乱への経緯。』(2011/11/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/233918198.html



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