2013年08月22日

シリアで毒ガス兵器により1300人以上死亡。しかし誰が使ったのか

21日、シリアの反体制によれば、政府軍がダマスカス近郊で同日の未明に毒ガス兵器を使用したという。死者はこの時点では1000人以上と発表されていた。

この現場から8〜16キロ離れた地点で国連の化学兵器調査団が拠点を置いて調査していた最中だ。

この反体制派からの発表が正しければ、シリア内戦開始以来、最大規模の化学兵器使用となる。

しかしシリア政府軍は、この反体制派の発表を否定している。政府軍は毒ガスを使用しておらず、これは反体制派が国際的な支持をえるための自作自演だと反論した。

これではどちらが化学兵器を使用したのか分からない。そこで国連の調査団は同日の午後、緊急会合を開いた。

まず米・英・独などは、この化学兵器使用について、国連調査団による調査を求めるとの声明を発表した。

同時にロシアは、この化学兵器は反体制派が使用したものだと断定した。ロシアによれば、反体制派が国連の支持を得るためと、ジュネーブで開催予定のあるシリア和平会議を妨害する為だと決めつけている。

ここでもう一度シリア反体制派組織による地域調査委員会の主張をみてみる。

毒ガス兵器が使用されたのはダマスカス東部と西部の複数の町だという。死亡者は少なくとも1360人。ほか、数千人が呼吸器や皮膚に炎症を起こし、深刻な状態にあるという。

毒ガス兵器が使用されたこれらの町は、既にこの数ヶ月間、政府軍と反体制派が激しく戦闘を行っていた地域だった。そのため、毒ガス兵器が使われた時には、ジャーナリストは現場には居なかったようだ。

米政府の認識では、これまでアサド政権が4回化学兵器を使用してきたが、全て限定的な使用だったと決めつけている。しかし今回の規模は格段に大きい。もし、米政府の主張が正しければ、いよいよアサド政権が反体制派に対する攻撃の規模を変えたことになる。

反体制派側の主張では、政権側が化学剤を搭載したロケット弾で、複数の地域を攻撃したのだという。

これに対し、政権側は国営通信を通じて、「国連調査団の活動を妨害しようとする動きだ」と反体制派側を非難した。

これに対し、ロシア外務省のルカシェビッチ情報局長は同日(21日)に声明を発した。

「(反体制派による)周到に準備された挑発だ」

そして、

「21日未明に武装勢力の支配地域からロケット弾が発射された」

とも指摘している。

一方、米政府は、アーネスト副報道官の記者会見で、

「われわれは化学兵器の使用を最も強いことばで非難する」

と述べ、アサド政権に対しては、今後の調査に協力するように要請した。

これまでの化学兵器も含めて、いまだに誰が使用しているのか、把握できていない。


以下、シリア関係の記事です。

『シリアでサリンを使ったのは反体制派だとロシアが報告』(2013/07/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/368795017.html

『米国がシリアの反体制派への武器供与拡大を決定』(2013/06/14)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/366304428.html

『シリアに対する日本政府の立ち位置』(2013/06/11)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/365988776.html

『シリア内戦を停止させる国際会議の開催は可能か』(2013/05/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/364050350.html

『シリアの内戦がレバンノンに飛び火する』(2013/05/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/

『シリア・ヒズボラ連合で攻勢をかけるアサド大統領の狙い』(2013/05/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/362493849.html

『国連総会がシリア国民連合を、政権移行の対話者として認める決議を行った』(2013/05/16)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/361570283.html

『イスラエルが内紛中のシリアを空爆する理由』(2013/05/05)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/359067477.html

『(続)シリアでサリンが使用されたという情報は、米国を参戦させるための捏造か』(2013/04/26)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/357324613.html

『シリアでサリンが使用されたという情報は、米国を参戦させるための捏造か』(2013/04/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/357023672.html

『シリアで化学兵器が使われたのか。お互いを非難する体制派と反体制派』(2013/03/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/348363101.html

『シリア反体制派が暫定政府に首相を選出したが…』(2013/03/19)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/347857251.html

『シリアの使ったガスは化学兵器か?態度を変えつつあるロシア。』(2012/12/25)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/309829131.html

『シリア、サリンを準備中か』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305190492.html

『ロシアとトルコ、経済では協力、対シリア外交では距離』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305180076.html

『シリアの砲撃に報復するトルコ。シリアは何故トルコ//砲撃したのか。』(2012/10/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/295414151.html

『シリアは化学兵器を使用するか』(2012/07/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/282860806.html

『シリアで200人規模の虐殺。アサド政権側か、反政府側か。』(2012/07/13)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/280748896.html

『シリアは「戦争状態」にあると認めたアサド大統領に焦りが見られる』(2012/06/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277587322.html

『シリア軍がトルコ軍戦闘機を撃墜。しかしNATOを敢えて刺激するだろうか。』(2012/06/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/276862619.html

『シリアのシャッビーハ(シャビハ)という狂犬の暴走』(2012/06/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/273939512.html

『撤退どころか越境し始めた。シリア軍の暴走が止まらない』(2012/04/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/263642669.html

『シリアに対し、一枚岩になれないアラブ連盟』(2012/04/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/261615315.html

『シリアのアサド政権を維持させたいロシアの思惑』(2012/02/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/250749829.html

『国際社会による軍事介入の可能性が高まるシリア政府の強硬姿勢』(2012/01/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/248074698.html

『シリアの自爆テロは、反体制派か、アサド政権の自作自演か』(2012/01/08)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244957285.html

『シリアで任務についたアラブ連盟の監視団。しかしどうにも怪しい。』(2011/12/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/243414862.html

『シリアの報道は事実か?あまりに狂気を帯びた惨状が報じられている。』(2011/11/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/237704569.html

『リビア化するシリアの弾圧とアサド大統領の強硬姿勢』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236176084.html

『シリアで何が起きているのか。シリア騒乱への経緯。』(2011/11/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/233918198.html




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