2013年06月19日

トルコのデモはイスラム化に反発する世俗主義か。「無言の抗議」作戦を始めた人々

18日、トルコのイスタンブール中心部にあるタクシム広場に数百人の男女が無言で立ち尽くすという抗議活動が始まった。この場所は、これまで反政府デモ隊と警官隊が激しい暴力的な衝突を行ってきた場所だ。

それが静かな抗議活動に変わった。ただ黙っているだけであるため、警察も武力による取り締まりは行えないが、それでも参加者の一部は警察に拘束された。

始まりは前日の17日だった。パフォーマンス・アーティストであるエルデム・ギュンドゥズ氏がタクシム広場のケマル・アタチュルク初代大統領の肖像に向き合い、5時間も立ち続けたことが最初の一人だった。

すると人々は彼を「スタンディング・マン」と呼び、賛同者が続々と集まり始めたのだ。中にはグループで参加し、手を繋ぎ合う人々もいた。

連行された参加者は語る。

「あらゆる暴力に抗議するために立った」
「黙って立っているだけで拘束するなんてばかげている」

連行されたのは20人前後のようだが、この「無言の抗議」を始めたエルデム・ギュンドゥズ氏が含まれていたかどうかは分かっていない。

そして18日の夜には、とうとう1000人ほどの人々が広場を埋め尽くし、結局占拠している状態になった。

ただ、警官隊も、広場にデモ隊が立ち入ることは規制していたが、一般の歩行者は自由に立ち入ることができるため、仕事帰りの人々などが、普通に広場に入ることを規制することができなかった。

そして集まった人々は、ただ黙って立ち尽くすのである。

この状況がテレビで報じられると、それを見た人々がさらに参加するという状態になった。

参加者の一人は言う。

「叫んだり暴力を使ったりしなくても、政権に圧力をかけられることが分かった」

はたしてそうだろうか。

さて、お浚(さら)いしておきたい。そもそもこのデモは何を訴えるために行われているのか。

きっかけは、このタクシム広場にあるゲジ公園の再開発計画だった。ここにオスマン帝国時代の兵舎を模した多目的ビルを建設すると政府が発表したのだ。

これに国民が反発した。

まず、建設が予定されているビルのイスラム色の強さだ。次にエルドアン首相一族の暴利を貪る姿だ。何しろその再開発に関わる企業や資本家の面々は、あからさまにエルドアン首相と親密な関係社ばかりで、エルドアン首相一族や近い者たちにばかり莫大な利益が転がり込むことが目に見えていた。

そのようなこともあり、また、環境破壊するということへの抗議もあり、ゲジ公園の存続を訴えるデモが始まったのだ。

問題はこのデモに対する政府の対応だった。

警官隊はこの小規模なデモの参加者らに対し、催涙弾を使用し、高圧的な対応を行った。

これに反発した人々が、さらにデモを激しく行い始めた。さらにデモはトルコの各地で発生するようになった。

しかしエルドアン首相はゲジ公園の取り壊しを撤回しないことを強調する。

そもそもトルコはイスラム圏では珍しいほど世俗主義をとる国である。ところがエルドアン首相の政権が長くなるにつれ、彼はイスラム回帰を表に出し始めた。

例えば大学などの公の場では、女性はスカーフ着用を認める法案を提出したりしている。また、5月には夜間の酒類販売禁止法案も可決されている。

このようなエルドアン首相のイスラム回帰に反発する知識階級は多い。

つまり、この度のデモのきっかけはゲジ公園の再開発計画だったが、その背景には長期政権のエルドアン首相がイスラム回帰を目指し、世俗主義から逸脱を始めた事に対する国民の反発があると見て良さそうだ。

デモの参加者の一人は言う。

「トルコの貧富の格差は広がるばかり。大学を出てもコネがなければ就職もできない。この上、国がイスラム化すれば、経済成長も止まってしまう」

この言葉にデモの動機が現れているであろう。長期政権による閉塞感と世俗主義逸脱に対する不満が見て取れる。

また、別の参加者は言う。

「エルドアンは王のように振る舞い始めた。10年の長期政権で勘違いした自信を深め、世俗主義を捨てた」

本来エルドアン首相は2003年に就任していらい、現実路線でトルコに高成長をもたらした功労者だった。それが長期政権化することで、一族を富ませ、イスラム色を強め始めたのだ。

やはり長期政権は腐敗しやすいと言うべきか。

また、現在のトルコは、1982年に定められた憲法で世俗主義、つまり政教分離が行われることで、国民は西欧的な自由も手に入れ、経済成長も手に入れた。

だから世俗主義から逸脱し、身内だけを富ませようとしているように見えるエルドアン首相に対する不満が溜まっていたのだろう。

さらにエルドアン首相は、彼が貧困層出身であることから貧しい国民の強い支持を得られていたのだが、長期政権の結果、エルドアン首相とその一族が富裕層に様変わりしていた。

これをそれまで支持していた国民は、エルドアン首相を私利私欲を貪る権力者とみなすようになった。

まとめると、この度のトルコのデモ拡大の背景は、貧しい国民の見方で有り、世俗主義によって経済成長に貢献し、国民の支持を得たエルドアン首相が、長期政権化することで、私利私欲を貪る富裕層になり、ゲジ公園の再開発に象徴される世俗主義逸脱の方向性に、国民は反発しはじめたのではないだろうか、ということになる。



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