2013年05月20日

シリア・ヒズボラ連合で攻勢をかけるアサド大統領の狙い

以前、イスラエルがシリアを攻撃する理由に、シリアが支援しているヒズボラの存在があることを投稿した。

『イスラエルが内紛中のシリアを空爆する理由』(2013/05/05)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/359067477.html

そのヒズボラとアサド政権が協力関係にあることがさらに見えてきた。

19日、シリアの内戦はますます激しさをまし、クサイルという町(レバノン国境付近の要衝)では、シリア政府軍と反体制派の激しい戦闘があり、双方がお互いに町の一部を制圧したと主張している。

シリア人権監視団(英国拠点)によれば、この戦闘で反体制派側は戦闘員を含む48人の死亡と、数百人に上る負傷者が出たと伝えている。そのため、仮設の救護施設は負傷者で溢れかえっているという惨状になっている。

同日にはネットにも戦闘の状況が投稿され、クサイルの町で絶え間なく爆音が響き黒煙に包まれるという戦闘の激しさが映し出されている。

シリア国営テレビは伝える。

「軍がテロリストの掃討を続け、クサイル市役所と周辺の建物を制圧して安全を確保した」

しかし反体制派の地域調整委員会は、反体制派がいまだクサイルを制圧しており、反撃も継続していると伝えており、いずれが事実か相変わらず分からない。

ただ、反体制が焦っている可能性があるのは、これまでは反体制派がクサイルを制圧しており、レバノンからシリアへ兵器や物資が流れ込むことを防いでいた。

そこにレバノンからヒズボラ(イスラム教シーア派武装組織)がクサイルを攻撃し、シリア政府への加勢を開始したらしいのだ。

そこで反体制派の自由シリア軍は、レバノン北東部に向けてクサイルからロケット弾を打ち込んでいる。そこがヒズボラの拠点であるとみたからだ。

実際にミサイルは撃ち込まれたようで、レバノンの通信社がヘルメルという国境沿いの町に8発のロケット弾が着弾したと伝えた。

しかしこの度の戦闘では反体制派が追い込まれているように思える。アサド政権の攻撃は容赦なく、住宅街も破壊し、そこに暮らす一般人を殺している。そのため、反体制派が言うには4万人以上の民間人が危機的状況にあり、アラブ連盟に対しても緊急会合を招集するように要請している。

この戦闘の激しさには、シリア政府側が、クサイルを支配することで、シリア中部、ダマスカス(首都)周辺のアサド勢力を勢いづけることになると踏んでいるからだ。

ここでアサド政府側が勢いを付けてしまうと、アサド退任を前提に反体制派を支援している西側諸国やアラブ側の支援国にとっては面倒なことになる。

クサイルを制圧したとしているアサド政府軍の将校は電話で伝えてきた。

「70人以上のテロリストを殺害した。軍は前進した。うまくいけば、クサイルはあと何時間か、何日かで解放されるだろう」

反体制派は、アサド政府軍の絶え間ない空爆と集中砲撃に押されているのではないかと想像出来る。

アサド政府軍とヒズボラの連合軍は、4月半ばからクサイルの包囲攻撃を激化させていたようだ。反体制派側が劣勢になったと見たのだろう、10日前には反体制派に対して降伏を呼びかけるビラを撒いている。

アサド政府軍はこれからもクサイル攻撃に関しては容赦しないだろう。なぜなら、クサイルの人口は約6万だが、そのほとんどがイスラム教スンニ派か、キリスト教徒だからだ。アサド政権もヒズボラも、アラウィ派(シーア派の一種)とシーア派だからだ。

既に反体制派も、クサイル周辺の少数派であるアラウィ派とシーア派を攻撃していた。

しかし既に4月には、ヒズボラがクサイル周辺の14村を占領していた。この占領とともに、ヒズボラは宣言した。

「イスラエル、米国、それにペルシャ湾岸のスンニ派アラブ諸国の「陰謀」からアサド大統領を守る」

ちなみに米国当局は、シリア内のヒズボラ勢力は、2000〜25000人ではないかと見ている。

しかしアサド大統領自身は、ヒズボラとの連携を明確にはしていない。18日に掲載されたアルゼンチンのクラリン紙とのインタビューでは、否定すらしている。しかし肯定するようなことも述べている。すなわち、

「イランとレバノンのグループがシリアにエキスパートを送り込んでいる」

ここにきてシリア政府軍が反体制派への攻撃を激化したのは、米ロが主導して開催しようとしている停戦のための国際会議までに戦況を有利にしておきたいとの思惑があるとされている。

アサド大統領は言う。

「私は国民によって選ばれた大統領であり、私の進退を決めるのはシリア国民だけだ。投票箱が審判員だ」

つまり、他国の干渉や国際機関の圧力で辞任する事は無い、と否定して見せているのだ。

国際会議が近づくほどに、シリア国民が殺されていくという惨状が繰り広げられている。



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