2013年05月16日

「実質GDP」を「GDP」と報道するのは、増税準備か?

マスコミの一部を除いて、「1−3月期のGDPが年率3.5%伸びた」と報道している。また、16日に行われた菅義偉官房長官の記者会見でも、菅義偉官房長官のコメントが「GDP」の伸びについてと報道されている。

しかしGDPには「実質GDP」と「名目GDP」がある。この使い分けを曖昧にしているところが非常に怪しいのだ。

菅義偉官房長官は記者会見で、「GDP」が年率3.5%伸びた事を示し、安倍内閣の経済政策が効果を示しているのだと語った。

「家計マインドが改善するなかで、外食や自動車中心に、まず個人消費が大きく増加した。さらに海外景気の底堅さを背景に輸出が4期ぶりに増加した」

そしてこの状況に対して、

「個人消費中心に安倍内閣の経済政策の効果が出始めたと考えている。三本の矢でデフレから脱却し、雇用と所得の増加を伴う経済成長を実現していきたい」

と、アベノミクスが順調であることを示した。

そこですかさず記者から「景気回復で消費税を増税するのか」との質問がでたが、これに対しては、まだ参院選があるからであろうか、慎重に答えている。

「まだ現時点で予断を許すことはない。しっかり経済政策を実行に移し、(経済成長が)軌道に乗るようにしていきたい」

この答え方自体は問題無いだろう。なるほど、増税は慎重に行って欲しいものだ。

さて、マスコミが報道し、政府が曖昧に使っているGDPとは実は「実質GDP」のことだ。これが年率3.5%伸びた。そしてもう一つのGDPとは「名目GDP」である。こちらは1.5%の伸びだった。

≪参考『2013(平成25)年1〜3月期四半期別GDP速報(1次速報値)』≫
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/sokuhou/gaiyou/pdf/main_1.pdf

実質GDPは単に生産の総量を示しているため、実はこの数値が上がったからといって、デフレ脱却や景気回復は示しているとは限らない。

一方名目GDPとは、物価変動を加味した数値を示している。つまり、生産量が1000円から1100円に10%増えて(実質GDP)も、物価がマイナス10%だった場合は、1100円から10%マイナスして990円になってしまう。

そこでインフレかデフレかを判断する指標として、GDPデフレーターがある。GDPデフレーターは、

 GDPデフレーター = 名目GDP ÷ 実質GDP × 100

となる。GDPデフレーターがマイナスならデフレ傾向にあり、プラスならばインフレ傾向にあるとされる。

ちなみに今回のGDPデフレーターはマイナス1.2%となった。つまり、実はまだデフレ状態だ。

それなのに、報道では「GDPが3.5%伸びた」とやってしまっているので、なにやら景気が良くなりデフレを脱却したかのように感じられる。

これはミスリードだ。

つまり、消費税増税法案では経済状況を確認した上で実施するという付則第一八条があるが、これを実質GDPの伸び率で「ほら、GDPが伸びたから増税しましょうね」とやられてしまってはイカサマなのだ。

まぁ、まさかそれほど露骨なイカサマは無いだろうが、マスコミは増税誘導報道をする可能性が高い。

なんだかアベノミクスの効果というより「兆し」だけで景気が良くなったということにされてはたまらない。

そこで、付録として、現状の実質GDP、名目GDP、そしてGDPデフレーターのグラフを以下に掲載しておく。三つ目のGDPデフレーターを見れば一目瞭然だが、まだ日本はデフレ傾向にある。

【実質GDP】
実質GDPの推移 - 世界経済のネタ帳

【名目GDP】
名目GDPの推移 - 世界経済のネタ帳

【GDPデフレーター】(これが右下がりの内は、デフレ傾向にあるという意味)
GDPデフレーターの推移 - 世界経済のネタ帳

≪お勧めの電子書籍≫





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