2013年04月26日

(続)シリアでサリンが使用されたという情報は、米国を参戦させるための捏造か

一昨日、シリアでサリンが使われたという情報は、もしかすると米国を巻き込むための捏造の可能性があると投稿した。

『シリアでサリンが使用されたという情報は、米国を参戦させるための捏造か』(2013/04/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/357023672.html

しかし、どうやら本当にサリンは使われたらしい。そうなると問題は誰が使ったのか、ということに絞られてくる。

サリンはアサド政権も保持しているのだろうが、反体制派やその他の国の諜報機関や軍部でも持ち込むことが可能だろう。場合によっては他国のテロ組織が持ち込んだとしてもおかしくないのだ。

何しろサリンを合成する方法は容易に手に入る(実際の合成には危険が伴うため容易ではないが)、弱性であればオウム真理教という非軍事施設でも合成することに成功しているのだ。Wikipediaにも合成方法が記されているくらいだ。

では現在はどのような状況なのか。

とにかく反体制派は国連もしくは米軍を巻き込みたい。そのためには、オバマ大統領が言った「レッドライン(越えてはならない一線)」を、アサド政権が踏み越えたことを国際社会にアピールする必要がある。

ただ、アサド政権にとっては国連や米軍の介入は困るため、何度も化学兵器使用を否定している。しかし現在は国連による現地調査も困難な状況であり、しばらくは「あいつがやったに違いないんだ!」合戦が行われるだろう。

25日、反体制派の「シリア国民連合」は声明を発した。

「国連がただちに行動しなければ、国際社会は化学兵器の使用を認めているという誤ったシグナルをアサド政権に送ることになる」

早く行動してくれ、と国連に行っているわけだ。それだけではない、国連が動けないようにしているロシアに対しても声明で触れている。

「(ロシアは)国連が平和と安全を守る義務を果たすのを妨害してはならない」

ロシアは、中国と共に、反体制派が国連に求めてきたアサド政権への制裁強化や空爆を避けるための飛行禁止空域の設定について、ことごとく反対してきた。そのロシアでさえ、化学兵器の使用は一線を越えるものだとの認識をもってきている。そこを反体制派は突きたい。

ロシアの思惑については、以下の記事で投稿したので、参照ください。

『シリアのアサド政権を維持させたいロシアの思惑』(2012/02/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/250749829.html

『シリアの使ったガスは化学兵器か?態度を変えつつあるロシア。』(2012/12/25)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/309829131.html

だからアサド政権も必死に化学兵器の使用を否定している。25日には国営シリア・アラブ通信でゾウビ情報相のコメントを報じている。

「仮に化学兵器を保有していたとしても、使用することはない」

アサド政権は化学兵器禁止条約に加盟していないため、その保有状況については確認できない。サリンやVXガスを保有しているとは言われているが、その保有量などはさっぱりわからないのだ。

米国はサリンが使用されたことについて、まだ懐疑的ではある。認めると何かしらかの行動を示さねばならないから慎重なのだ。

ただ、25日になると、ホワイトハウス当局も、シリアで化学兵器が使われたことまでは認め始めている。ケリー国務長官は、小規模ながらもサリンが使われたと疑われるケースは2回あるとしている。

また、国務省のベントレル報道部長は次の様に語った。

「化学兵器が使われたかどうかは国連が調査して確認することが最も望ましい」

しかしアサド政権が国連の調査を拒んでいるため、困難な状況にある。

オバマ大統領としては、今シリアに関わるのは難しい。巨額の財政赤字、イラク・アフガニスタンでの長期戦争による国民の厭戦気分の高まりがある。

アサド政権の動きも怪しいのだ。当初アサド政権は、反政府勢力が北部アレッポの郊外で化学兵器を使ったから調査して欲しいと国連に調査団の派遣を要請したことがあった。

ところが反政府勢力側が、化学兵器を使ったのはアサド政権側であると主張し、イギリスやフランスがそれを支持すると、突然アサド政権は国連の調査団の入国を拒否し始めた。何を考えているのか分からない。

従って米国に取っても決め手が無い。ホワイトハウス当局は、サリンが使われたことは確かだろうとしながらも、「誰がどのような方法で使ったのか」は不明だとしている。そのため、国連による調査が必要であるとし、「何が起きたのか解明する必要がある」と強調している。

また、たとえこのサリンがアサド政権側により使われたとしても、「自動的に(米国の)軍事行動に結びつくものではない」としている。そう、オバマ大統領は決して「軍事介入する」とは明言していないからだ。

ただ、マケイン上院議員は主張している。

「大統領は、化学兵器が使用された場合は状況が変わると言明してきており、今回その使用が行われたことは明らかだ。こうなった以上、われわれが過去2年間のこの流血と大量虐殺が行われる中で要請してきたように、われわれが信頼する反乱を起こした人々の安全を確保する飛行禁止区域を設立し武器を供与すべきだ」

これに対し、民主党のリチャード・ダービン上院議員は、

「対抗策として何をなすべきかは大統領次第だ」

と自分の見解は保留にしている。

サリンは使われた。しかし誰がどのようにして使ったのかは分かっていない。となると、今サリンが使われたとして有利になるのは誰か。


以下、シリア関係の記事(新しい順)です。

『シリアでサリンが使用されたという情報は、米国を参戦させるための捏造か』(2013/04/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/357023672.html

『シリアで化学兵器が使われたのか。お互いを非難する体制派と反体制派』(2013/03/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/348363101.html

『シリア反体制派が暫定政府に首相を選出したが…』(2013/03/19)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/347857251.html

『シリアの使ったガスは化学兵器か?態度を変えつつあるロシア。』(2012/12/25)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/309829131.html

『シリア、サリンを準備中か』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305190492.html

『ロシアとトルコ、経済では協力、対シリア外交では距離』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305180076.html

『シリアの砲撃に報復するトルコ。シリアは何故トルコを砲撃したのか。』(2012/10/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/295414151.html

『シリアは化学兵器を使用するか』(2012/07/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/282860806.html

『シリアで200人規模の虐殺。アサド政権側か、反政府側か。』(2012/07/13)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/280748896.html

『シリアは「戦争状態」にあると認めたアサド大統領に焦りが見られる』(2012/06/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277587322.html

『シリア軍がトルコ軍戦闘機を撃墜。しかしNATOを敢えて刺激するだろうか。』(2012/06/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/276862619.html

『シリアのシャッビーハ(シャビハ)という狂犬の暴走』(2012/06/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/273939512.html

『撤退どころか越境し始めた。シリア軍の暴走が止まらない』(2012/04/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/263642669.html

『シリアに対し、一枚岩になれないアラブ連盟』(2012/04/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/261615315.html

『シリアのアサド政権を維持させたいロシアの思惑』(2012/02/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/250749829.html

『国際社会による軍事介入の可能性が高まるシリア政府の強硬姿勢』(2012/01/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/248074698.html

『シリアの自爆テロは、反体制派か、アサド政権の自作自演か』(2012/01/08)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244957285.html

『シリアで任務についたアラブ連盟の監視団。しかしどうにも怪しい。』(2011/12/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/243414862.html

『シリアの報道は事実か?あまりに狂気を帯びた惨状が報じられている。』(2011/11/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/237704569.html

『リビア化するシリアの弾圧とアサド大統領の強硬姿勢』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236176084.html

『シリアで何が起きているのか。シリア騒乱への経緯。』(2011/11/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/233918198.html




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