2013年04月24日

シリアでサリンが使用されたという情報は、米国を参戦させるための捏造か

23日、イスラエル軍情報部は、シリアの内戦で、アサド政権がサリンとみられる化学兵器を使用したと主張した。

それによると、アサド政権は反体制派に対して、少なくとも2回は化学兵器を使用したという。1回目は3月19日で、ロケット弾攻撃で使われており、この攻撃について情報調査分析部門トップのブルン氏は言う。

「被害者は瞳孔が萎縮したり口から泡を吹いたりするなど、化学兵器が使われたことを示す症状を呈していた。我々の専門家の見解では、アサド政権は過去数カ月で何度も武装した反体制派に対して化学兵器を使用してきた」

これが確かであれば、確かにサリンによる症状に似ている。そしてこの症状を持って、イスラエル軍情報部は、

「明らかに何らかの化学兵器が使われた証拠」

だと主張している。

この情報について、米国のケリー国務長官はイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談を行ったが、

「現時点では、事実として確認できる情報はない」

と話しており、その際ネタニヤフ首相も、

「確認する立場にない」

と話したとしている。

米政府は英国と協力して、化学兵器使用に関する情報収集を行い、加えて国連による調査を支援するとしている。

しかしサリンであろうと見ているイスラエルは、シリアの化学兵器がレバノンのイスラム教シーア派組織であるヒズボラに流出するのではないかと懸念を表明している。

また、もし化学兵器が使われたとすれば、米国は行動せねばならなくなる。というのも、オバマ大統領は先に、

「もしシリア政権が国民に対して化学兵器を使用すれば、米国などのシリアに対する対応は一変する」

と警告していたからだ。ただ、具体的に何をするのかまでは言及していなかったが、これまでとは異なるアプローチへのプレッシャーがかかる。

そこがイスラエルの狙いなのか。

そこにロシアのラブロフ外相が牽制した。

「米国は過去にイラクのフセイン政権が大量破壊兵器を保有しているとの情報に基づいてイラクに進攻するに至った。各国がこの問題を政治利用している」

だから米国も化学兵器が使用されたという情報には慎重な姿勢を示している。23日、カーニー米大統領報道官は記者会見で答えた。

「化学兵器が使われたとの結論には達していない」

一方、英国とフランスは、化学兵器が使われた証拠がある、と主張している。シリア国内で集められた土壌サンプルの分析結果と目撃者の証言によるものらしい。

米国でもその証拠となった土壌サンプルについて検証している。そして今のところ米国側では決定的な証拠にはならない、としている。たとえ土壌に化学物質がみつけられても、それを誰が持ち込んだものか断定できないからだ。

穿った見方をすれば、反体制側やイスラエルが、米軍を引きずり出すために自ら散布する可能性もあるだろう。そこを米国は用心している。

したがって米国側は、

「外国政府による信頼度の低い判断」

と切り捨て。何しろ米国の行動が促されているのだ。ここは慎重にせねば成らない。

また、米当局によれば、オバマ大統領はアフガニスタンから米軍の撤退を始めたばかりで、新たな紛争に介入したくないという考えでいるという。さらに、10年前にイラク戦争に介入した経緯を思い出しながら、不明瞭な情報で介入することの危険性を感じているという。

米高官の一人は言う。

「大統領は、化学兵器の使用は『状況を一変させる』ことになると明確に述べている。このため、われわれはどう対応するかを決める前に、化学兵器使用に絶対的な確信を抱かなければならない」

そうは言っても、米国はシリア情報の多くをイスラエルに依存しているのが現実だ。そのため欧州の外交筋は言う。

「イスラエルからの情報を軽んじることは米政府にとって特に難しい」

米軍は衛星で偵察することはできるが、地上には諜報部隊を送り込んでいない。

となると、シリア紛争で米軍を巻き込みたい勢力は、アサド政権に不利になる証拠を捏造する可能性もあるのだ。

もっと穿った見方をすれば、米軍の介入は米政府次第である。つまり、ある証拠に対して、介入したくなければ、「これは証拠とみなされない」と主張すれば良いし、介入したくなったら、「この証拠は有効だ」と断定すれば良い。

各国、各勢力の思惑が、米国を招いている。


以下、シリア関係の記事(新しい順)です。

『シリアで化学兵器が使われたのか。お互いを非難する体制派と反体制派』(2013/03/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/348363101.html

『シリア反体制派が暫定政府に首相を選出したが…』(2013/03/19)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/347857251.html

『シリアの使ったガスは化学兵器か?態度を変えつつあるロシア。』(2012/12/25)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/309829131.html

『シリア、サリンを準備中か』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305190492.html

『ロシアとトルコ、経済では協力、対シリア外交では距離』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305180076.html

『シリアの砲撃に報復するトルコ。シリアは何故トルコを砲撃したのか。』(2012/10/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/295414151.html

『シリアは化学兵器を使用するか』(2012/07/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/282860806.html

『シリアで200人規模の虐殺。アサド政権側か、反政府側か。』(2012/07/13)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/280748896.html

『シリアは「戦争状態」にあると認めたアサド大統領に焦りが見られる』(2012/06/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277587322.html

『シリア軍がトルコ軍戦闘機を撃墜。しかしNATOを敢えて刺激するだろうか。』(2012/06/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/276862619.html

『シリアのシャッビーハ(シャビハ)という狂犬の暴走』(2012/06/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/273939512.html

『撤退どころか越境し始めた。シリア軍の暴走が止まらない』(2012/04/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/263642669.html

『シリアに対し、一枚岩になれないアラブ連盟』(2012/04/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/261615315.html

『シリアのアサド政権を維持させたいロシアの思惑』(2012/02/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/250749829.html

『国際社会による軍事介入の可能性が高まるシリア政府の強硬姿勢』(2012/01/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/248074698.html

『シリアの自爆テロは、反体制派か、アサド政権の自作自演か』(2012/01/08)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244957285.html

『シリアで任務についたアラブ連盟の監視団。しかしどうにも怪しい。』(2011/12/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/243414862.html

『シリアの報道は事実か?あまりに狂気を帯びた惨状が報じられている。』(2011/11/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/237704569.html

『リビア化するシリアの弾圧とアサド大統領の強硬姿勢』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236176084.html

『シリアで何が起きているのか。シリア騒乱への経緯。』(2011/11/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/233918198.html



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