金を保有している人は、激しく驚いたに違いない。何しろリーマンショック以来、持つべきものは実物資産だ、と金相場は順調に伸びていた。
保有している人も「当分暴落になる原因はなさそうだ」などと思っていたかもしれない。
幸運なことに(いや、本当は不幸なのだが)貧乏な私は金と言えば指輪くらいしか持っていなかったので、全く被害は被らなかった。
が、慌てなくても金は再浮上する、と、私は思っている。が、またいつでも暴落する可能性はある。ただ、暴落には原因がある、と分かれば慌てて投げ売りして損したりすることはないだろうし、暴落した今、買いに走るのもありだろう。
それでは、この度の金相場暴落が、どうして起きたのか、諸説あるので、紹介したい。
12日(土日を飛ばして)、15日の2営業日で金が激しく暴落した。米国市場では1オンス1560ドルから一気に1330ドル台に堕ちた。約15%の暴落だ。
東京市場でも同じく、東証のSPDRゴールド・シェア(1326)が12日の終値1万5060円が16日の終値では1万2840円とやはり約15%下がった。
この金相場の暴落には諸説ある。あるいはそれらの複数の要因が全て作用したのかもしれない。が、当方は、実は「人為的に下げられた」説を支持している。
まず一つめ。
特に日本が注目されたが、日米欧の中央銀行が金融緩和政策を進めているため、当然インフレ率が上昇すると思われていた。しかし実際には、予想通りのインフレは起きなかったため、インフレ懸念が後退してしまった。インフレとは貨幣価値が下がり実物資産の価値が上がることだから、このインフレ懸念に影響されて上昇していた金の価値が下がった、という説。
しかし、インフレ懸念が後退した程度で、約15%の唐突な暴落の説得力が無い、と私は見ている。
二つ目。
中国の第1四半期のGDP成長率が発表されたが、これが市場予測を下回ったため、中国の景気減速懸念が出てきた。その結果、中国では宝飾品としての需要が多い金の需要が減るという憶測がなされ、金相場が下落した、という説。
これも、たかが中国の「宝飾品」としての金の需要減少程度で、約15%の暴落を説明するには、ちょいと厳しいかと思う。
三つ目。
ヘッジファンドが金ETFを売った。つまり現物の金が売却されたわけではないというもの。これは実は当方が注目している人為的な金相場操作説なので、改めて後述したい。
四つ目。
キプロスの中央銀行が資金捻出のために保有していた金を売却したという説。キプロスがどのような状況だったかは、当ブログでも投稿しているので、そちらを参照いただきたい。
『キプロスのATMに人々が殺到し、ユーロが下がり、FX投資家もなかなかに忙しいだろう』(2013/03/18)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/347657974.html
これは面白い説だが、タイミングがずれすぎている。また、アラブ諸国であれば説得力があるが、キプロスがそれほど大量の金を保有していたとは思えない。
五つ目。
米FRBが、これまで行っていた量的緩和策を見直し始めたという情報が流布したため、元々米ドルと逆の動きをする金相場が暴落したという説。つまり、量的緩和策が見直されれば、ドルの供給が止まりドルが上がる。ドルが上がれば、金は下がる。そういう相関関係による説だ。
しかし、まだドルが具体的に暴騰したわけではないので、説得力に欠ける。
以上が主な金相場暴落の原因諸説だが、いずれも説得力に欠ける。タイミングと暴落度を説明出来ないからだ。たった2営業日で暴落したのだ。どうみても人為的に感じる。
ただ、「元々金相場が上がりすぎていたのだ」という素朴な意見は、案外説得力がある。
さて、ここからは金相場は何者かに暴落させられたのだ、という仮説の上での話になる。
実は3月末。ゴールドマンサックスは金相場が1オンス当たり1200ドルまで下がると予測していた。現実には1300ドル台だったのだが、気味の悪い予測だ。
これ、予測では無く「1200ドル台まで操作する」宣言だったのではないか。
そこで出てきたのは、金相場を暴落させたのは、米金融界だという説だ。実際、メリルリンチは12日に金先物市場で60億ドル分の売り注文を出していたという。もちろん顧客からの注文による。
それにつられるように、いや合わせるように、ヘッジファンドや投資銀行などの機関投資家が争うように売り注文をだし、その合計は150億ドルに達したという。
売られたのは先物であり、実際に現物が動いたわけでは無いが、これらの売りを実物に換算すると、400トンの金になるという。
つまり、金融界は、実物の金を動かさなくても、先物相場(レバレッジがかかっているから10〜20倍の影響力)で金相場を操作できてしまうのだ。
それでは彼らに売り注文をさせた顧客は誰だったのか。それは金融界自身だったという説だ。
ここで、前述の諸説の複合説が間接的に影響した可能性が出てくる。つまり、資産家たちは、前述の複合的な理由により、量的緩和で延命されている債権や株から、資金を実物資産である金などに移し始める傾向が出てきていたのだ。あるいはドルに対する信用不安がでてきたということも有るかもしれない。
そこで資金が実物資産に逃避してしまうことを恐れた金融界は、金の先物市場を操作して実物資産の代表的かつ象徴的である金相場を暴落させてみせた、ということになる。これは同時に、ドルを守ることにも成る(金を売るということは、ドルを買う(換金する)ということだからだ)。
つまり、金相場の暴落は、間接的な原因は前述の5つ(他にもあると思うが)による通貨や金融資産に対する不安から実物資産に需要がシフトしたことであり、直接的な原因は、それらの間接的原因による資産のシフトを恐れた金融界が金先物市場を操作したことにある、という説だ。
私は個人的には、この説、つまり金相場は人為的に操作されている、というものを支持したい。
となると、再び金相場は上昇を始めるが、金融資産がピンチになると、またもや暴落させられる、という可能性がある。
みなさんは、この度の金相場暴落の原因は、何だとおもいますか?
信じるか信じないかは…。