15日、中国国家統計局は2013年1〜3月期のGDP(国内総生産)が前年同月比で実質7.7%増であることを発表した。前年同期は7.9%増だったから、減速したことになる。
また、市場は8%台を予想していたので、市場予想も下回ったことになる。
外需は若干の回復を見せたのだが、国内消費は伸びない。結果成長率が4四半期連続で8%を割り込み、このことについて中国政府(国家統計局)は、
「経済は全体的に落ち着いている」
との評価を行った。ただ、人民は景気減速感を感じている可能性があるため、それを払拭するために、
「引き続き、内需主導型の経済構造改革を進める」
考えであることを示した。これは特に、消費が12.4%と前年同期比14.8%から2.4ポイント下がったことで、人民には不景気かが漂う可能性がある、とういことに政府が焦っているということだろう。つまり個人消費は伸び悩んでいる。
結局内需といえば、政府がてこ入れした鉄道や高速道路といった建設投資により1〜3月期の固定資産投資は前年同期比で20.9%も伸びたが、「消費主導による内需拡大」という政府が目指した経済構造改革は、効果を示せなかった。
特に自動車は6.4%増で4.6ポイント下がっている。また、工業生産も9.5%増だがこれも2.1ポイント下がった。
ただ救いとなったのは、米国向けと東南アジア向けの輸出が18.4%増と大きく回復したことだった。さらに最大の輸出先であるEU向けが12年通年で6.2%減だったのが、1.1%増に転じた。
物価は2.4%増と、まぁ落ち着いているといえる数字を出している。
だから安定成長を目指すとした習近平体制は、決して失敗しているなどとは言わない。が、実は2012年のGDP成長率の7.8%は、1999年以来の低水準だったのだ。
ただ、あちらこちらの市場関係者のコメントを見ると、海外の市場関係者の多くは、まだ回復が遅れているだけだろう、と楽観視しているようだ。
しかし当の習近平指導部は冷や汗ものだったのではないか。
中国は現在、決して安定した状態ではない。例えば暴動の数だが、1993年には1万6000件あったとされているが、2012年にはなんと10万件を超えているという(一説には18万件を超えている)。10倍以上に増えているのだ。
そんな貧富の格差が激しく、不満が暴動となって増加している状況で習近平は政権を引き継いだ。これを抑えるには、ひたすら経済成長と貧富の格差を縮める成果をたたき出さねばならない。少なくとも、その成果が現れ始めていると、人民に知らせる必要がある。
良く政情不安の状態を、ジニ係数という所得格差を表す数値で判断する事が行われている。ジニ係数が1に近いほど格差が大きく、0であれば完全な平等状態を示すと言われている。そして社会不安が高まり騒乱が多発する警戒すべき値は0.4だと言われている。
さて、中国のジニ係数だが、これは中国国家統計局が発表している。かなり危なかったのは2008年(ちなみに北京オリンピックの年)で、0.491まで上がっていた。既に警戒すべき0.4を上回っていた。
ただ、2012年は下がっており、0.474だ。それでも警戒すべき値0.4を上回っているし、現に暴動は起きている。
ところが中国国家統計局ではなく、中国人民銀行と西南財経大学の調査結果は異なっている。その結果は既に0.61にまで上がっているというのだ。
この数値は、アフリカ並みと言われている。また、どうやって調べたのか分からないが、中国でも明朝末期が0.62、清朝末期は0.58と、既に現在の中国が革命前夜で有ることを示している。
この数字に習近平指導部は肝を冷やしているはずだ。もしかしたら、次回からジニ係数の発表が禁止されるもしれない。
人民は知り始めている。指導者層ばかりが膨大な資産を築き隠蔽していることや、政権崩壊を予測しているかのようにその財産を他国で保管していることを。あるいは指導者層は子女を外国に盛んに留学させている。これも有事の際への対策なのではないかと。
いくら中国政府が情報操作を行っても、外国に旅行したり、外国人が旅行にきたり、インターネットで情報交換したりできる今、どうしても情報操作にはほころびが生じてしまう。
例えば先日の温家宝前首相の蓄財隠蔽は、米国発のスクープだった。ニューヨークタイムズが明らかにしたのだ。だから同社はその後、中国(政府だろう)から激しいサイバー攻撃を受けた。
このような情報操作のほころびを、一部では中国版グラスノスチになるのではないかと言われている。そう、ソビエト連邦を崩壊させた情報公開である。
中国共産党がこれを防ぐには、とにかく不満分子や反体制派が、面倒を引き起こす情報を封印せねば成らない。ある種の粛清も行われるだろう。
そして手っとり早いのは、外部に敵を作り、共産党と人民を結束させることである。かつて毛沢東は、共産党と国民党を結束させるために、共に日本軍と戦った。
そうだ、日本だ、と思い出しているだろう。
習近平指導部は、日本をより強烈な敵に仕立て上げることで、人民との結束を、つまりはナショナリズムの高揚を煽る可能性がある。
国内が不安定になったら、尖閣をいじれば良いのだ。
だから日本も、中国のGDPとジニ係数には、注目しておく必要があるだろう。