このところ、北朝鮮が米韓を挑発するような言動を盛んに行っていると報道されている。確かに、これまでも北朝鮮は強がりとしか思えない挑発的で幼稚な言葉を何度も繰り返してきた。
しかし、いずれも言葉だけだ。口先だけの国なのだ。
それに引き替え米国は、韓国との合同演習にかこつけて、具体的に核を落とせる爆撃機を北朝鮮の鼻先で飛ばしてみせるなど、かなりきわどい行動を行っている。
どうみても、挑発しているのは米国側ではないか?
韓国にしても朴槿恵大統領は北との融和を主張していたのだ。そこに、米国は北朝鮮からの危機を煽っている様に見える。
だから追い詰められているのは、むしろ北朝鮮だ。食料も資源も金もないのに、飢餓と引き替えに核を飛ばすと息巻いている。
そして4日。米韓は北朝鮮が中距離弾道ミサイルの「ムスダン」らしきものが鉄道によって日本海側に移送したことを捕らえた。ムスダンは射程2500〜4000キロと推定されている中距離ミサイルだ。
韓国側は、このミサイルは故金日成主席の誕生日である15日に発射させるのではないかと警戒している。
しかし本当に発射させる可能性は低いとも言われている。
しくじったら、国威高揚どころか、金正恩第一書記の権威失墜に終わるからだ。米韓の記録では、ムスダンの発射実験は行われたことが無いという。そのため、韓国側消息筋は言う。
「ミサイルに弾頭が装着されているかどうかは明らかではない。北朝鮮が、実際に発射するために移動させたのか、米国に見せるために移動させたのか注視している」
ミサイルが移送されたとされるその先である北朝鮮の日本海側には、咸鏡北道花台郡舞水端里(ハムギョンプクドファデグンムスダンリ)のミサイル発射基地もある。
この基地は2009年以降使われていなかったようだが、現在発射台の改修工事が行われているという。
また、北朝鮮人民軍は盛んにホバークラフトや潜水艦を動員した訓練を行って見せているが、軍事挑発というほどの活動は行っていないという。
むしろ米国の方が、よほど軍事挑発を行っている様に見える。
ただ、北朝鮮は口先だけは挑発的だ。
「アメリカ本土やグアムにある基地をミサイルで攻撃する態勢を取っている」
と語っている。これこそ米国の思うつぼではないのか。北朝鮮は座敷犬の様にキャンキャン吠えすぎている様にすら見える。
4日の朝も、北朝鮮は臨時ニュースで吠えている。
「核での攻撃を含む作戦が最終的に承認された状態だ」
少々のお馬鹿さんでも、北朝鮮が核戦争で米国に勝てるわけがないと分かる。核戦争とは、核兵器の数と領土の広さで決まるのだ。仮に同じ数の核ミサイル攻撃をした場合、領土が狭い方が先に全滅する。単純なことだ。
いくらお馬鹿な北朝鮮軍部でも、それくらい分かっているはずだ。
また、移送されているミサイルがムスダンであれば、その射程距離に含まれるのは米国本土ではなく沖縄、グアムなどになる。ただし、これが「KN08」であれば、米国本土まで届くとされている。しかし届くかどうか、品質保証はない。
そして米国の軍事力誇示といった威嚇にいたたまれなくなった哀れな北朝鮮は、同じく4日の朝に発表した。
「(朝鮮人民軍が)小型化し、軽量化された核での攻撃を含む作戦が最終的に承認された状態にあることを、正式にホワイトハウスとペンタゴンに通告する」
といっても米国との外交ルートがない北朝鮮が、どのように通告するのかは不明だ。
一方、米国の動きは…。
前後するが3日、ヘーゲル米国防長官は北朝鮮の挑発に対して、という立ち位置で語った。
「彼らの行動は現実の、明白な危機だ。我々はこの脅威を深刻に受け止める」
米国は口先だけでなく、本気だからな──という姿勢を見せている。
そしてこの日、グアムに最新鋭ミサイルシステムであるTHAAD(最終段階高高度地域防衛)システムを配備することを発表した。THAADはPAC3(地対空誘導弾パトリオット)より射程が長く、より高い高度で弾道ミサイルを打ち落とすことができると言われている。
そして北朝鮮がいかに現実的な脅威であるかを述べた。
「(北朝鮮は)核の能力を保有し、ミサイルを発射する能力もある」
その結果として、
「日本や韓国などの同盟国、米国のグアムにある基地、ハワイ、西海岸を脅かす」
のだと言っている。
だから、THAADのグアムへの配備が必要であるとしている。これが配備されれば、所謂MD(ミサイル防衛)をアジア太平洋地域の拠点に配備する初めてのこととなる。
MDは既にアラスカ州には追加配備が決定されている。
また、4日には、ムスダンらしきミサイルの移送に対応するために、イージス艦を西太平洋に展開させて監視を強化している。
以上の様に、米国が次々と北朝鮮の「現実的だ」としている脅威に対して軍事行動を取りつつある中、専門家と呼ばれる人達は言う。
「北朝鮮が米国本土を核攻撃できるまでには、まだ数年必要だ」
しかし米国は、明日にも攻撃されるかもしれない、という姿勢を見せては軍を動かしている。
ところが肝心の脅威である北朝鮮は、まだ具体的な軍事行動は何も行っていないのだ。口先だけである。
とはいえ、既に世論は北朝鮮と米韓が戦争に突入しそうだ、という報道に傾きつつある。
朝鮮中央通信社は指摘する。
「衝突の瞬間は急速に近付いている。朝鮮半島で戦争が起こるかどうか、今日起こるのか明日起こるのか、誰にも分からない」
そのような中、北朝鮮側の報道は、案外正しいのではないかと思えてしまう。4日午前3時前という時刻に、北朝鮮国営の朝鮮中央放送は臨時ニュースを流した。
「アメリカは、作り出された重大な事態を前にして熟慮すべきである」
と前置きし、このような事態が発生しているのは米国の責任だと指摘した。
「すべての責任は戦争好きなアメリカ政府にある。核兵器を含む作戦が最終的に承認されたことをアメリカ政府に通告する」
そして米国がB2戦略爆撃機(核爆弾を投下でいる)やF22ステルス戦闘機を派遣したこと等を示し、
「韓国とその周辺水域は、危険極まりない核戦争の発生地に変わった」
と伝えている。聞きようによっては北朝鮮が米国という図体のでかいいじめっ子に追い詰められて、半べそかきながら本心を吐露しているようにも思える。
と、この状態を冷静に見ている国があった。ロシアだ。これまで米韓軍事演習が行われても何も語らなかったロシアが、今回だけは警告を発した。
「統制不能になって戦争が起きる可能性がある」
ロシアが反応するほど、この度の米国は挑発的なのだろう。では、米国は何を狙っているのか。
一つは朴槿恵政権が南北対話を進めようとしたことにあるのではないか、と言われている。
米国の軍産複合体にとっては、南北は緊張状態に無ければ商売にならない。まぁ、考えすぎかもしれないが。
そしてもう一つは、北朝鮮への対応にかこつけた中国包囲網構築ではないか、という説だ。
しかしこれは微妙だ。というのも、これをやり過ぎるとロシアが中国と連携を取ってしまう動きを見せているからだ。
さらにもう一つある。日韓に北朝鮮の脅威を感じさせ、より一層高額な武装をさせようという目論見だ。日本などは、憲法すら改正する理由にできる(但し私は改正すべきだと考えているが)。
このように見てくると、報道では北朝鮮がどんどん戦争勃発の緊張を高めているように見えるが、実はこの戦争の可能性は、米国が握っているようにも見えてくる。
そうなると、この挑発は、あくまで挑発に終わる。実際に戦争が始まってしまうと、北朝鮮が負けてしまうからだ。
それよりは、緊張感を高めて、武器が売れる方が良い。つまり、米国はこの戦争を寸止め状態に持って行こうとしているのだろうか。
いずれにせよ、戦争が本当に始まれば北朝鮮に勝ち目はない。それは北朝鮮自身が良く分かっているはずだ。
この戦争は、勃発するかどうか。やはり握っているのは米国の様な気がする。
とはいえ、緊張が高まりつつあることだけは確かだ。