2013年03月20日

シリアで化学兵器が使われたのか。お互いを非難する体制派と反体制派

昨日に続き、シリア関係…。

19日、シリアで化学兵器が使用されたという。しかし、誰が使用したのかが分からない。

アサド政権と反体制派はお互いに化学兵器を使ったことを非難している。

これについて、米国側はアサド政権が使った可能性を示唆し、ロシア側は反体制派側が使ったことを示唆している。

いずれにしても、決定的な証拠が無い。

シリアの国営メディア(つまりアサド政権側)が、政府当局者の話として報道したところでは、19日に使用された化学兵器は、反体制派がアレッポの郊外でミサイルを利用して使用したのだという。

「テロリストがアレッポのカーン・アルアッサルに化学物質を搭載したロケット弾を発射した」

そのために、少なく見積もっても25人が死亡し、110人以上が負傷したと言う。

この報道を反体制側は否定し、化学兵器を使ったロケット弾の集中砲撃があったのは首都ダマスカス東部でアサド政権側が行ったことを主張している。

第三者のテロが介入した可能性がなければ、どちらかが嘘をついている。

シリア情報相はもう少し具体的な情報を語っている。それによると、化学兵器を乗せたミサイルは、シリア国内から発射されているという。ただし、(どうして分かるのかは不明だが)発射装置はシリア以外の国のものだというのだ。

「カタールなどの国でこの兵器に資金を提供した者、およびこの兵器をシリアに持ち込んだ者は責任を問われなければならない。先のアラブ連盟会合でこの決定をした者は、大量殺戮と破壊兵器使用の責任を問われる」

そう決めつけた。あくまでアサド政権側ではない、ということだ。

するとこれに対して再び反体制派が反論した。

「反体制派は化学兵器を製造するための化学物質も設備も持っていない。そうした兵器を持っているのは政権側であり、その所在は周知の事実だ。政府は化学兵器ミサイルの製造工場を持ち、シリア国内でそれを使用できる能力がある」

うーむ、言われてみれば、反体制派側に、化学兵器を用意する技術的、組織的な環境があるようには思えない。

そして反体制派によると、ダマスカスで使われた化学兵器による症状は、呼吸困難、吐き気、頭痛などだという。ミサイル攻撃によってこのような症状がもたらされたのは、今回が初めてだと語っている。

さて、シリア人権監視団はどう見たか。

「カーン・アルアッサルの政府軍陣地に対地ミサイルが発射され兵士16人と民間人10人が死亡したが、このミサイルが化学物質を搭載していたかは不明だ」

としている。つまり、良く分かっていない。

一方、ロシア外務省は、化学兵器を使用したのは反体制派であるという情報をシリア政府から得ていると発表した。それだけでなく、ロシア政府自体が(方法は発表されていないが)反体制派が化学兵器を使用したことを確認したと発表している。

これに対して米政府はカーニー報道官を通じて反論している。

「反体制勢力が化学兵器を使用したとのアサド政権の主張を裏づける証拠はない。我々は、完全に信頼を失った政権に極めて懐疑的だ」

さらに、OPCW(化学兵器禁止機関)が化学兵器の使用を確認していないことも根拠として加えている。そのため、まず、化学兵器が使われたのかどうかを調査する必要があるとしている。

「関係国と緊密に協議しながら慎重に調べている」

と同時に、アサド政権が「反体制派が化学兵器を使った」ことを口実にして、自ら化学兵器を使うことの正当化を行うことに対して「重大な結果を招くぞ」と釘を刺した。

シリアの内紛は、泥沼化している。


以下、シリア関係の投稿記事です。

『シリア反体制派が暫定政府に首相を選出したが…』(2013/03/19)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/347857251.html

『シリアの使ったガスは化学兵器か?態度を変えつつあるロシア。』(2012/12/25)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/309829131.html

『シリア、サリンを準備中か』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305190492.html

『ロシアとトルコ、経済では協力、対シリア外交では距離』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305180076.html

『シリアの砲撃に報復するトルコ。シリアは何故トルコを砲撃したのか。』(2012/10/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/295414151.html

『シリアは化学兵器を使用するか』(2012/07/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/282860806.html

『シリアで200人規模の虐殺。アサド政権側か、反政府側か。』(2012/07/13)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/280748896.html

『シリアは「戦争状態」にあると認めたアサド大統領に焦りが見られる』(2012/06/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277587322.html

『シリア軍がトルコ軍戦闘機を撃墜。しかしNATOを敢えて刺激するだろうか。』(2012/06/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/276862619.html

『シリアのシャッビーハ(シャビハ)という狂犬の暴走』(2012/06/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/273939512.html

『撤退どころか越境し始めた。シリア軍の暴走が止まらない』(2012/04/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/263642669.html

『シリアに対し、一枚岩になれないアラブ連盟』(2012/04/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/261615315.html

『シリアのアサド政権を維持させたいロシアの思惑』(2012/02/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/250749829.html

『国際社会による軍事介入の可能性が高まるシリア政府の強硬姿勢』(2012/01/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/248074698.html

『シリアの自爆テロは、反体制派か、アサド政権の自作自演か』(2012/01/08)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244957285.html

『シリアで任務についたアラブ連盟の監視団。しかしどうにも怪しい。』(2011/12/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/243414862.html

『シリアの報道は事実か?あまりに狂気を帯びた惨状が報じられている。』(2011/11/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/237704569.html

『リビア化するシリアの弾圧とアサド大統領の強硬姿勢』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236176084.html

『シリアで何が起きているのか。シリア騒乱への経緯。』(2011/11/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/233918198.html



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