2013年03月17日

TPPと消費増税がアベノミクスを破綻させるだろう。下手すると亡国?

いやいや、とうとうやっちまった…。

15日、安倍晋三首相のTPP参加表明を知った途端に、まずはそう思った。

何しろアベノミクスはデフレ脱却を謳っている。しかし、TPPというのは、デフレ悪化対策であるのはあきらかだ。自由貿易の拡大は、デフレを脱却するまで行うべきでは無い。何故か。

ものすごく簡単にまとめてしまえば、

 自由貿易=供給過剰、物価安、賃金低下

こういう仕組みだ。一方デフレとは、

 デフレ=供給過剰、物価安、賃金低下

ではないか。かなり乱暴に端折れば、こういうことになる。

 自由貿易の拡大=デフレ化

つまり、せっかくアベノミクスが財政出動と金融緩和という当たり前のデフレ対策を行って、

 アベノミクス=需要拡大、物価上昇、賃金上昇

を目論んだとしても、TPPで帳消しになってしまう。いや、帳消しでは済まないことも起きてしまう。それは気力があれば後述したい。

ところで、本記事のタイトルに消費増税を含めているが、今回はTPPだけで長くなりそうなので、言及を避けたい。デフレ時の増税が、如何に駄目な政策であるかということについては、これまで散々述べてきたと言うこともある。

また、TPPとは何か、ということについてはたくさんのサイトやブログで解説されている(と思う)ので、これも省きたい。

ここでは最近の動きを見ることから始めたい。マスコミの皆さんは、TPPが、実はいずれ自分たちの首を絞めるものであることを知らずにはしゃいでいるからだ。

そう、これまで護送船団方式だった報道業界だって、規制緩和させて乗っ取ることを米国は狙っているかもしれないのだ。日本のマスコミの皆さんは、勝てる自身があるのかな?

さて、TPP参加を煽っているマスコミの代表として日本経済新聞の威勢の良さに触れてみたい。なにを勘違いしているのか、あるいはわざとか、3月17日の電子版では「投資・サービス分野で攻勢」と題している。

例えばこう書いている(いずれも3月17日の電子版より)。

「アジアの中には外資系企業によるサービス分野の進出を規制している国が多い。例えばベトナムは小売業への進出を制限しているうえ、マレーシアでも小売りや外食産業の自由化が遅れている。」

だからこれらの障壁をTPPで打破すれば、日本が進出できると息巻いている。しかし、同じ事を、米国も日本に対して行うで有ろう事には触れていない。

後頭部を敵に晒したまま、もっと弱い敵に狙いを定めている有様だ。しかも日本が狙っている国の市場規模はあまりに小さいが、米国が狙っている日本の市場はとても美味しい。

あるいは記事にはこう書かれている。

「各国政府が物品やサービスを購入する際のルールである「政府調達」は日本にとって攻めの分野だ。米国は州政府の公共事業の発注先で、自国企業を優先的に採用する傾向がある。マレーシアも「ブミプトラ」と呼ばれるマレー系国民の優遇施策をとっている。日本は自国を優遇する政策の見直しと内外無差別の扱いを主張する見通しだ。」

間抜けだ。同じ事を日本も強制されることに全く触れていない。日本の公共事業にも米国の建設企業が狙いを定めている。しかも入札になれば、より安い人件費を動かせる外国企業の方が有利ではないか、ということにも触れていない。

アベノミクスが財政出同するのは、公共事業を有効需要にできるからだ。しかしそれを外国企業が食ってしまったら、税金を原資とする貴重な金が、国内の投資や雇用に回らず、外国企業に持って行かれてしまう。

また、米国企業は、当然日本人よりも安い労働者を自国もしくは他国からそれこそ自由に調達するであろう。そうなれば、せっかく税金によって発生させた需要が、国内の雇用増加に役立たなくなってしまう。

さて、以上の日本側のはしゃぎ振りに、ワシントンポストはニタリと笑っているような報道をしている。以下、いずれも16日のワシントンポストより。

「TPP参加を通じて日本の農業やその他の市場を米国産品に開放することができれば、日本車の輸出攻勢に見舞われている自動車分野での貿易赤字を相殺しうるだろう」

だから、同誌は続ける。

「オバマ大統領はTPPの潜在的な価値を理解している」

農業だけではない。オバマ大統領の目的はあらゆる分野(特にサービス)におけるTPPによる雇用拡大だ。米国の雇用を拡大させるには、どこかの国の雇用を奪わねばならない(所謂、近隣窮乏化策)。それだけの規模を持つ国は、勿論、日本となる。

ところが勘違いしている国を見つけた。今回は参加を見送っている韓国だ。

ソウル新聞は、

「日本のTPP参加で米国市場での韓国の優位性が損なわれかねない」

と専門家の意見を報じている。せっかく米韓FTAで関税が下がった分野(自動車部品など)が、TPPでの関税撤廃で日本が優勢に立つ、というのだ。

単純過ぎないか?

僅か数パーセント、いやコンマ数パーセントの関税率の変動など、為替の変動で無視されてしまう。韓国だけではない。日本のエコノミストも関税率が下がることで日本が米国に対して輸出攻勢できると語る者が多いが、そんなもの、円安の効果で無視できるのだ。

それに、例えば自動車などは、すでに現地で生産している以上、関税は関係ないではないか。重要なのは、為替となる。

ところで米国では、TPP歓迎一枚岩なのかというと、実はそうでもない。米国でTPPに日本が参加することを嫌がっている勢力がある。

そう、自動車産業だ。

一見、米国の自動車産業は、TPPにより日本側の関税や排ガス規制を緩和させることができれば、喜びそうなものだ。しかし、彼らはそれほど楽観的では無い。

アメ車が日本で売れない理由が、関税や排ガス規制などではないことを実は知っているのだろう。現に、高くてもヨーロッパ車は日本では売れている。

ということで、米自動車政策会議(AAPC)のブラント会長は、15日にオバマ政権に対して、

「日本のTPP参加を受け入れないように」

要請した。

当然オバマ大統領はこれを無視するはずだ。だがAAPCは必死だ。

「日本がTPPに加わると日本車に米市場が奪われて米雇用が失われるうえ、TPP交渉も混乱して遅れる」

なんとも正直ではないか。そして、

「我々は自由貿易を支持するが、日本はほかの貿易相手国のように扱うわけにはいかない」

何を言っているのかというと、これまた単純で、日本という国は既に、米国にとって「世界第2位の貿易赤字国」ではないか、という理屈だ。その国とさらなる自由貿易を進めて大丈夫なのか?という不安があるわけだ。

私は彼らを応援したい。頑張れ、AAPC!日本のTPP参加を阻止せよ!と。まぁ、無理だろうけど…。

さて、ここからは、自分の復習のために、TPPによるデメリットを復習しておきたい(但し思いついた分野だけ)。メリットはほとんど無いが、マスコミは「好印象」ばかりを報道する可能性があるので、敢えてデメリットばかりを復習しておきたい。

まず、急がれる東日本大震災からの復興への影響だ。マスコミの多くは復興にこそTPP参加が必要とさしたる理由は挙げずに主張しているようだ。

しかし、次のデメリットが考えられる。

まず、壊滅した農業だ。農業は工場の再稼働のように簡単では無い。土地と人との根気の要る作業が必要だ。

そんな最中にTPPで格安の農産物が大量に輸入されたら、誰も割に合わない農業など目指さないだろう。

次に土木建設産業はどうか。不謹慎だが、せっかく災害で生じた大型の需要が発生した復興事業に、TPPにより米国建設企業や他国のより安い労働者が殺到したらどうなるか。

質の悪いインフラが建設されるという心配もあるが、日本の建設業が新たな投資や雇用を生むチャンスを逃してしまう。そして投入された税金は、米国の企業やより安い外国人労働者に持って行かれてしまい、日本国内の消費者の懐に入らないから、消費の増加も振るわなくなってしまう。

さて、上記で東北の農業について触れたが、日本の農業という規模で考えるともっと恐ろしいことが起きる。

一見、消費者にとって外国からより安い農産物が入ってくることはメリットのように感じる。確かに我が家など、もう、愛国心より安い農産物をウェルカムしてしまう。

しかし、ここで一旦日本の農家が廃業してしまうと、さて、農業を復活させる必要が生じた、というときに手遅れになる。一度捨てた農地を回復させるのは至難の業であるし、何より農業従事者を一気に増やすことはできない。

農林水産省の試算では、TPPに参加すれば、現在の日本の食料自給率(カロリーベースだが)40%が、一気に13%に下がるとされている。

つまり、87%というほとんどの食料を外国に依存するわけだ。

もし、気候変動や紛争などで食料価格が高騰しても、それを買わなければならないし、絶対的に食料の生産が減少した場合は、いずれの国も自国優先になってしまうので、我々は飢えるしか無い。恐ろしいではないか。

また、奇跡的に気候も安定し、紛争も無く世界が平和だったとしても、TPPでは日本の食料の安全性基準を、規制緩和として下げることが要請される。

例えば残留農薬の基準は日本は国際的な基準よりも厳しい。遺伝子組み換えも表示せねばならない。TPPに参加すればそれらの規制は緩和されるだろう。もし自民党が言う様に、規制を守ろうとすれば、それは貿易障壁として訴えられ、損害賠償を要請されるだけだ。それがTPPである。

次に心配されている医療はどうか。

これは米国の事情を見れば良い。それが日本にも適用されるということになる。あるいは韓国が米韓FTAで特区を設けさせられたが、その状態を見れば良い。

現在公的医療保険が適用されているため、全国一律で安い治療費で治療を受けられる。TPPに参加すると、現在制限されている保険診療と保険外診療の併用が行われるように規制緩和させられる。

その結果、公的医療保険の給付範囲が縮小させられ、利益率が高い保険外診療が拡大するとみられている。

さらに医療に自由競争が持ち込まれるので、儲からない地域からは病院が撤退し、利益率の高い金持ち相手の病院が幅をきかせてしまう可能性がある。

そう、貧乏人(TPPで増えるはず)や地方の人々は、病院に行けなくなるだろう。

このことについては、3月15日に日本医師会の横倉会長が語っている。

「日本医師会は、かねてよりTPPへの参加により、国民皆保険が毀損されるのではないかと懸念を表明してきた。世界に誇る国民皆保険を守るためには、『混合診療』を解禁しないことや、営利企業を医療機関の経営に参入させないことなどが必要だ。安倍総理大臣に対しては、国益に反すると判断した場合には、速やかに交渉から撤退するよう求めていきたい」

いや、破壊されるのは医療制度だけではない。

医薬品も貧乏人は使えなく成る可能性が高い。

現在日本の医薬品は、国民が広く利用できるために、より安価に価格が設定されるようにやや煩雑な価格調整手続きをとっている。

ちょっとややこしいので、かなり端折った説明になり分かりにくいかもしれないが、書いてみよう。

例えば同じ治療効果を持つ類似薬がある場合、「新薬の1日単価は既存類似薬の1日単価に合わせる」仕組みがある。

これは、どういうことかというと、1日3回服用する薬が1日分で300円とする。つまり1錠当たり100円になる。

ここに同じ効果を持つが、1日2回の服用で済む新薬が登場したとする。当然高く売られてもおかしくないが、前述の仕組みがあるため、1日分で300円になる価格に抑えられている。つまり1錠当たり150円となる。

この仕組みがあれば、医薬品がむやみに高騰することは防げる。

しかし、明らかに画期的な新薬が登場し、しかも有効性や安全性が高い場合は高騰するのではないか。しかしこれも「画期性加算」という仕組みがあてがわれ、3つの点(有効性、安全性、治療法の改善性)が満たされれば70〜120%加算、2つの点が満たされれば35〜60%加算にとどめるようになっている。

従ってこの場合も自由な価格つり上げは行われない。

他にも、市場性加算や小児性加算といった方式が、高騰を抑えながらも開発会社の儲けも保障するという微妙なバランスをとる方式がある。

と、書いてみたが、上記はやや自信がないことを白状しておく。何しろ日本の薬価を低く抑える仕組みは複雑で、私が理解出来ていない可能性がある。そのことは考慮して読み続けていただきたい。

さて、医薬品がTPPで高騰してしまう仕組みはこれだけではない。TPPではジェネリック薬の価格もつり上げられてしまう可能性が出てきている。

それが米国が提唱している「エバーグリーニング」という医薬品の特許手法だ。

これはひどい手法だ。エバーグリーニングでは、既存薬の形や使い方を変えただけの医薬品(しかも効果が変わらなくても)も「新薬」として特許申請できるとする手法だ。

特にこのエバーグリーニングを米国がTPPでどのように利用しようとしているかは、MSF(国境なき医師団)の米国組織が入手したTPPの流出文書で見えてきた。MSFの分析は以下の6点である。これによって安価なジェネリック薬が市場にでることを防ぎ、医薬品を高額にして販売しようというのだ。

・型を変えただけの古い医薬品に新薬の特許を認められること

・特許への異議申し立ての手続きを困難にできること

・知的財産権侵害の「疑い」だけで、ジェネリック医薬品の貨物を差し押さえられること

・臨床実験データの独占を強化し、ジェネリック医薬品が出回るのを困難にできること(まんまや)

・特許期間を延長できること

・医薬品認可当局に特許管理責任を負わせること

米国医薬品業界よ、おまえもなかなかの悪よのう、と悪代官でも舌を巻いてしまうだろう。とにかく米国の医薬品企業をぼろ儲けさせるために、日本が国民が広く安価に医薬品を利用できる制度を破壊しようとしているという。

医療と医薬品で大分長く書いてしまった。残りを急ごう。

雇用に関してだ。

例えばこれまで規制が掛かっていた規模の小さな公共事業にもTPPに参加すれば海外の企業も平等に参加させなければならなくなる。

当然、自由競争の名において、より安い外国人労働者を引きつれた外国企業(あるいは国内企業)が仕事を受注するだろう。

そうすれば、当然、日本人の雇用機会は著しく減少する。

さて、短く書こうと思っていたのに、まとめる能力が足りない故に、結局長く書いてしまった。

そんなこともあって、今回は敢えて悪名高い「ISD条項」について触れなかった。何故か。

それは単純に私が勉強不足だからだ。今書いてしまうと、単純に「ISD条項悪玉論」になってしまう。

しかし、このISD条項については、日本の企業や投資家が護られる可能性もあるのだ。要は使い方次第と言うべきか。

つまりISD条項は両刃の剣である可能性もある。従って、ISD状況については、今回は触れないまま、逃げることにする。



posted by しげぞう | Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/347520126

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。