2013年01月29日

インフレを頭で理解しても、物価上昇に追いつかない賃金上昇に私は耐えられるか。私はうだうだ考えてしまうのだ

私は今のところアベノミクスにどちらかというと賛同しているが、不安な面も多い。それは多くの国民が持っているであろう不安と同じだと思う。実に素朴な不安なのだ…。

29日午前、都内で始まった春闘は、既にアベノミクスによるインフレターゲットが成功することを(暗黙の内に)前提にしている。

しかし、労働組合側と経営側(まぁここでは経団連)では、当然インフレに対する解釈が異なる。その解釈の主なところは、恐らく時間差なのだ。が、それについては後ほど触れたい。

労働組合側の要望は、当然労働者の要望なので、とにかく賃上げだ。これは当然だ。しかし今回の賃上げ理由は少々無理がある。

労働組合側は言う。

「デフレを脱却するためにも、賃上げをして購買意欲を高める必要がある」

要するに、以下の順序だ。

 賃上げ→消費増→物価上昇→企業利益増→賃金上昇

しかし、最初の段階で、企業が少ない利益から賃上げ上昇分を負担せねば成らない。そうなると以下の図式だって成り立つ(どちらが正しいかはここでは問わない。要するに立場の違いを示したいだけなので)。

 賃上げ→企業利益減→賃金減少もしくは失業増→消費減→企業利益減→賃金減

そのような図式を根拠に経営側は反論する。

「賃上げよりも、雇用維持を優先すべし」

これだけだと唐突なので、経団連の米倉弘昌会長の冒頭挨拶を引用する。

「自社の存続と発展、雇用の維持・安定を確実なものにするため、労使が危機感をしっかりと正しく共有し、問題解決に向けた建設的な議論を尽くすことが求められる」

これに対し、連合の古賀伸明会長は言う。

「総額人件費の縮小だけではデフレから抜け出せない。いまこそ傷んだ雇用と労働条件を復元し、人材投資へ経営のかじを切るタイミングだ」

要するに平行線から始まった。

通常、アンチ経団連、アンチ米倉弘昌会長の私だが、今回は連合側の主張が性急過ぎると思っている。

経団連は主張する。

「デフレの進行で実質賃金は上昇している」

間違ってはいないだろう。物価の下落に対して、賃金の下降は遅れるのが常だからだ。だから賃上げは必要無い、もしくは我慢しろと言っている。

ただ、次の主張はかねがね経団連が主張していることと矛盾する。

「海外企業との競争激化により、賃上げはできない」

おいおい、グローバルな競争に打って出てこそ企業は発展するのでは無かったか?つまり、経団連も認めているのだ。グローバル化とは、世界の最低賃金との競争であると。グローバル化で儲かるのは、大資本とその経営陣・株主だけだと。

連合は1%の賃金引き上げを求めている。それすら経団連側は無理だと言う。

「経済が成長して(初めて)雇用が創出できる。したがって今のような状況では(給与引き上げは)非常に厳しい」

ここが国民には納得しずらい部分だ。要するに、どうしてインフレが不況脱却に必要なのか,という部分だ。

実際、インフレになれば、物価が上がるわけだから、実質賃金は下がり、消費が萎える。恐らく私も貧しくなるだろう。間違いない。

しかしマクロで見ると、物価上昇は実質賃金を低下させるため、企業に取っては雇用を増やしやすくする(という理屈)。そのことによって、失業率が低下し、そこまで行けば、消費が増え始める。そしてようやく企業利益が上昇し、賃金上昇にたどり着くのだ、というのが経団連側の理論だろう。

だから、インフレを見込んで賃金を上げてしまったら、せっかくの経済政策が失速してしまうのだ、ということになる。正しいかどうかではなく、両者の立場の違いを述べている。

しかし連合は平行線の主張を続ける。

「個人消費を活性化する必要がある。そのためには所得を上げる必要がある。そういうことによってデフレが脱却できる」

これでは妥協案が見いだせない。どうなるのか。とりあえず初回は、

経団連側が、

「労使が危機感を正しく共有し、建設的な論議を尽くすことが必要だ」

とし、連合側が、

「デフレ脱却にはこの春の労使交渉の結果も大きなカギを握る」

と、つまりは根気よく議論しましょう、ということになったようだ。

私はどちらか?勿論貧しいサラリーマンである私の場合は、私一人だけでも賃金を上げてくれ、が回答だ。しかし国の経済政策としては、一時的な実質賃金低下に耐えねばならないのだろうなぁ、とも思っている。つまり、皆は我慢してくれ、私は勘弁してくれ、という非常に自己中な思いでいる。とても国家を論ずる資格はないのだ。

とにかく、春闘はまだ時間がかかる。3月になると大企業の回答が相次ぐので、そこが山場になる。

ただ、連合が言うことは分かる。

「確かに企業にとって厳しい経営環境が続いていると思うが、デフレから脱却するためには賃金を引き上げていくことが不可欠だ。今後、物価が上がっても賃金が上がらなければ大きな混乱が起きる」

そう、混乱が起きるのだ。国民は目の前の生活感が重要だ。アベノミクスはなんだかいいらしい、と思っていたら、物価ばかりが上がって実質賃金が下がってしまい、貧しくなった。どうしてくれるんだ。次の選挙では自民党は支持しない、となるだろう。

そうなると、与党はアベノミクスを継続できなくなる。そして中途半端なインフレだけ残して失速することにもなりかねない。全く民主主義というのは、面倒な制度なのだ。

しかし連合の理屈は問題がある。つまり、デフレ下で賃金を無理矢理上げても、インフレにはならないからだ。

デフレは、「需要<供給」であり、「物の価値<現金の価値」である。

つまり、無理矢理賃金を上げても、上記の不等号は変わらない。何しろデフレ下の物価下落は、別に原材料が安くなったからとか、人件費が下がったから起きているわけでは無い。安い輸入品のせいだ、という意見もあるが、これは順序が逆で、消費の減退が安価な輸入品を招いたと言える。円高はそれをさらに後押しした。

デフレでは、「労働需要<労働供給」も成り立っているため、すなわち労働力過剰も企業の付加価値低下や賃金低下を招く。

そんな時に無理矢理賃金上昇を行えば、企業の労働コストが上昇し、企業はその解消のためには製品に転嫁せねば成らないが、「需要<供給」の状況下では、不良在庫を抱えて最悪の場合は倒産になってしまう。在庫をさばくために再び低価格にすれば、当然賃金上昇が利益を圧迫してしまう。

結局、失業者が増えてしまう。当然、社会保障負担も増加する。だからといって増税すれば、さらに可処分所得が減少し、消費は冷え込んでいく。それは当然、企業を衰退させてしまう。

これがデフレの怖さだ。

逆にインフレになると何が起きるのか。

まず、物価が上昇するため、現金を保有している期間が長いほどマイナスの利息が生じることになる。

どういうことか。

例えば、今日1000円で買えるものが来週には1500円に上昇する場合、今日の1000円は来週には500円分の価値が減少してしまうのだ。

どうする?そう、物価が上がる前に(現金の価値が下がる前に)買うのが良い。皆がそう思えば、消費が拡大する可能性がある。

同時に借金を抱えている場合は逆転現象が起きる。1000円の借金は来週には実質500円の負担が減る。ならばどうする?そう、どんどん借金して消費や投資をした方が良い、となる。

それがインフレに期待される効果だ。

ただ、前述の様に、1000円から500円の価値が減少してしまうということは、給料の1000円からも500円の価値減少になってしまう。これが実質賃金低下の減少だ。

しかし、そうなれば企業にとっては、実質賃金低下によって雇用が楽になる。ああ、悩ましい。

そこで内閣は、インフレと同時に賃金が上がるように、給与やボーナスを引き上げた企業には減税しましょう、といった構想まで出ている。すなわち、国民が一時的な実質賃金低下に耐えられなくなる可能性を想定しているのだ。

また、通常は物価指数のコアコアCPIなどには含まれては以内電気料金やガス料金は、円安の結果として上昇する。素朴な国民の多くはこの「価格上昇」をも「物価上昇」と受け取るだろう。そうなるとますますアベノミクスは継続が困難になる。

と、うだうだ書いてきたが、これは国民が経済政策というものをどの程度理解しているか、あるいは景気上昇までの期間や、物価上昇と賃金上昇のタイムラグをどこまで我慢できるか、という話に収束するかもしれない。

一旦ここで結論めいたことを書けば、アベノミクスの目的は、財政出動と金融緩和のパッケージでインフレを起こし、名目賃金を一旦下げ、雇用を増やし失業者を減らすと同時に、実質金利を下げ、消費や投資を拡大して、景気を良くする(GDPを成長させる)、ということになろうか。

そして理想的には、消費や投資が拡大し雇用が増加することで、労働市場に雇用獲得競争が始まり、賃金が上がっていく、ということになる。

結局、正しい経済政策を政治家にやらせるには、その前に、経済政策とはどうなっているのか、ということを国民が理解せねばならない、という困難な壁が立ちはだかっている。

アベノミクスは今のところ、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授や同じくノーベル経済学賞受賞者の米プリンストン大・クルーグマン教授らが支持しているが、成功するかどうかは、まだまだ分からない。



posted by しげぞう | Comment(8) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
なぜ、ノーベル賞さえもしんじることができないの。ノーベル賞に、近いと言われているの話、しんじれるのに・・・。わたしにわ、わからない・・・。おとなの、はなしです。まだまだ あおくて、どうも、すいません。
Posted by 麻理子 at 2013年01月29日 22:42
麻理子さん、コメントありがとうございます。

ノーベル賞の内、経済学賞は毛色が違いますね。経済学賞はアルフレッド・ノーベル自身が設置・遺贈したものではないため、正式なノーベル賞とは言えないともされています。

そのため、賞金もノーベル財団ではなく、スウェーデン国立銀行から拠出されています。

しかも、その選考基準は一貫しておらず、真に優秀な経済学者に授与されるのではなく、「経済学に大きな影響を与えた」とされることが基準のようです。

従いまして、ノーベル経済学賞を受賞したからといって、必ずしも「正しい」ことが保証されたわけではないのですね。

さて、安倍内閣の内閣官房参与には、浜田宏一イェール大学教授が就任しましたが、彼は日本で初めてのノーベル経済学賞を狙えるのではないかと言われている人です。

今後のアベノミクスに影響を与えるでしょうけど、日本経済再生本部の「産業競争力会議」メンバーにあの竹中平蔵氏が含まれていることに危惧があります。

また、政治の世界は一寸先は闇ですね。アベノミクスが初心を貫けるかどうか、マスコミや財務相辺りが妨害するでしょうし、日銀も現在怪しい動き(物価指数にコアコアCPIを採用していないなど)をしています。

要するに、安倍晋三首相が理想とする経済政策には、今後様々な妨害や妥協といった紆余曲折がありましょうし、経済政策の効果が出るまでにタイムラグがあることを国民は理解できないかもしれません。すなわち支持率低下とそこに野党がつけ込む可能性があります。

と諸々の事情で、なかなか経済政策は難しいですね。
Posted by 管理人 at 2013年01月30日 00:05
コアCPI,コアコアCPI,誰がどのような意味でつかおうとしているか、それが重要ですかね。最後は、さんまとIMALUちゃんの関係かな?
Posted by 麻理子 at 2013年01月30日 22:44
コアコアCPIを使わないことで、例えば地域紛争などによりエネルギー価格が暴騰しただけでも、日銀は「はい、目標達成!」と言えてしまう可能性があります。それが問題ですね、というか日銀は狙っているような気がします。

「最後は、さんまとIMALUちゃんの関係かな?」

すみません、芸能界には疎いんです。意味がわかりませんでした…。
Posted by 管理人 at 2013年01月30日 23:44
一番ソングショーのなかのIMALUちゃんの発言です。たまには、ユツクリ、テレビ、みてください。くだらないかもしれないけど、そのかんかくに、じぶんのいしきをあわせ、ばかになつてください。いま、そういう、よのなかです。
Posted by 麻理子 at 2013年02月01日 18:57
麻理子さん、コメントありがとうございます。

私、テレビ見ないのです。最近のテレビのペースって、目も頭も疲れるのですよ。企画は悪いし、放送作家のレベルは低いし、それにCMの多さと、かぶりの多さに辟易するんです。それと、報道番組などは、余りの偏向報道に突っ込みを入れながら見ている自分に疲れてしまうのです。

音楽番組も、興味が持てなくて。私は普段はヘビメタを聴いている人ですし、日本の歌手では中島美嘉さんさえいれば後はいらないや、という偏った嗜好ですし。

「いま、そういう、よのなかです。」

そういうものですか。しかし、世の中に興味はありますが、無理に馴染もうとは思いません。

ただ、くだらないのは好きです。「水曜どうでしょう」は大好きですね。癒やされます。癒やされると言えば、「イタリアの小さな村」も欠かさず見ています。後の番組は興味ないかなぁ。時間があったら、iTune Storeから映画をレンタルして観ています。

「じぶんのいしきをあわせ、ばかになつてください。」

いや、既にかなりの馬鹿なので、これ以上馬鹿になるのははかんべんしください(笑)。
Posted by 管理人 at 2013年02月01日 22:47
トルストイの「イワンのばか」の話にもっていってもいいけど、もう一度、コアCPI,コアコアCPIに戻ります。外国の言うところのコアCPI,コアコアCPI,日本で、言うところのコアCPI,コアコアCPI,同じかな。と、言うのもありますね。
Posted by 麻理子 at 2013年02月02日 08:30
イワンの馬鹿については、ここでは言わんといて…。

麻理子さん、はい、日本のコアコアCPIは物価指数に食料やエネルギーを含めませんが、日本以外ではこれをコアCIPとしているのですね。

そこに日銀のごまかしがあります。つまり、日銀は、「2%の物価目標をできるだけ早期に実現することを目指し、最大限の努力を行う」と表明しておりますが、実は日銀が使う物価指数はあたかも世界標準のコアCPIかのように使っておりますが、実は日本のコアCPIなので、エネルギー価格の変動が含まれています。

ですから、何かの拍子に(紛争とかで)エネルギー価格がピョンと跳ね上がってしまい、コアCPIが跳ね上がったら、「はい、2%達成!」と言って、デフレ脱却ができていないのに、中途半端に金融政策を止めてしまう可能性があります。

それが、問題です。

しかもマスコミが使う仏界指数はコアCPIですらありません。所謂全国総合指数というももです。

ですから、国民は日銀のごまかしに騙されることになりますし、政治家が騙されたらそれで終わりです。

この辺り、安倍内閣のブレーンは大丈夫かとも思うのですが、何せ国民やマスコミが騙されるでしょうから、政治家もやりにくくなるわけです。
Posted by 管理人 at 2013年02月02日 22:51
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