22日午後、国連安全保障理事会は、北朝鮮に対して海外に保有する資産凍結や渡航禁止の制裁を強化するという決議を、全会一致で採択した。
これは昨年の12月に、北朝鮮が事実上の長距離ミサイルを発射したことを受けたものだ。このことで国連安全保障理事会がミサイル発射に対する制裁決議を初めて採択したことになった。
さらに、今後も核実験などを含めた挑発的な行為を北朝鮮側が行った場合は、
「意味ある対応を取る」
とさらなる警告を加えている。
決議では、弾道ミサイル計画に関わる全ての活動停止が要請されている。すなわち、2009年の安保理決議1874と2006年の1718に明確に違反していると指摘された。
この度の制裁では、各国政府が貨物を差し押さえる実効性が高められている。例えば貨物の中身が禁輸品の指定を受けていない場合でも、発送元が制裁対象であれば、差し押さえることができるものとした。
この採択が発表された後、西田恒夫国連大使は取材陣に対して評価の言葉を語った。
「わが国の意向が反映された」
しかし米国のライス国連大使はこの度の決議内容だけでは少々不満だったのか、北朝鮮に釘を刺している。
「北朝鮮が従わない場合は、さらなる重要な行動を取る」
それでもこの度の決議が出せたことは大きい。というのも、これまで北朝鮮への制裁を嫌っていた中国が比較的強い議決内容に妥協したからだ。中国で何かが変化している。
安保理の外交筋の話ということだが、この度の日米韓は、まだ新指導部が発足したばかりの中国に対して、以下の様に迫ったという。
「決議案に賛成しないと孤立化しかねない」
他にも中国が妥協せざるを得なかったのは、昨年4月の議長声明でも既に、
「さらなる発射には相応の行動を取る」
と釘を刺していたことを安保理として示さねばならなかったこともあるからだと見られている。
中国の李保東国連大使はこの度の決議について語った。
「この決議をスタート地点として、六カ国協議再開など地域の安定に力を尽くしたい」
また、中国外務省もこの度の決議を評価するコメントを寄せている。秦剛報道局長のコメントだ。
「全体的にバランスの取れたものだ」
何故このようなコメントになったのか、いくつかのメディアを見ていたら、関係ありそうなコメントがあった。李保東国連大使のコメントだ。
「最初の交渉では北朝鮮経済と人々の生活を危険にさらす要素が入っていた。採択された決議には、そのような要素は含まれていない」
要するに、当初(日米韓の?)議決案はより強い内容だったようだ。それに対し、中国が妥協しやすいように、(恐らく日米韓側により)内容が見直されたのだろう。
しかしこの瞬間から、北朝鮮がさらなる強硬措置を執った場合は、六カ国協議の早期再開を目指す中国にとっては、非常にやっかいな事態となることが決まった。次の李保東国連大使のコメントには、その辺りの事情がにじみ出ているように感じる。
「今回採択した決議は多くの交渉の結果だ。これは朝鮮の打ち上げに対する国際社会の立場を表明している。同時に、対話と交渉を通じた平和的な問題解決を希望していることや6カ国協議の再開に向けた積極的な姿勢を示している。国際社会の当面の急務は情勢の悪化とエスカレートを防止することだ。中国は最初から、安保理の決議と制裁だけでは問題を解決できないと強調している。対話と外交を通して問題を解決することが根本的な方法だ。新たな年を迎え、各方面が誠意を持って積極的に朝鮮半島の平和と安定と言う大局を維持するよう努め、誤解をなくし、相互信頼を増し、互いの関係を改善させ、情勢の改善に向けて進むよう期待している。これも決議が各方面に明確に発信している重要な情報である」
実際、北朝鮮はやる気だと思えるニュースも入っているので後ほど触れたい。
さて、この度の決議に盛り込まれた制裁措置の中心は、2006年と2009年の決議に基づいている。それは資産凍結と海外渡航禁止措置だ。
具体的には既存の制裁対象リストに、この度のミサイル発射を企画した「朝鮮宇宙空間技術委員会」などの6団体と4人の個人が追加された17団体と9個人が対象となった。これらの団体並びに個人の国連加盟国にある金融機関の資産は引き出せない。また、ビザも発給されないこととなる。
中国が妥協した案になったとは言え、日米は共に「強い内容だ」と評価している。
ただ、懸念材料は相変わらず存在しており、それは、妥協したはずの中国が制裁違反を犯してしまう可能性だ。既に中国経由で制裁違反が報告されているためだ。
それでも安倍晋三首相は歓迎のコメントを出した。
「我が国の考えが多く反映される形で安保理決議が採択されたことを歓迎する」
その上で、
「北朝鮮に対し、国際社会の断固たるメッセージを重く受け止め、さらなる発射や核実験を含む挑発を決して行わないことを強く求める」
と加えている。
と、各国の思惑が妥協点をなんとか見いだした決議が採択されたが、党の北朝鮮はやる気を見せているから困ったものだ。
23日、北朝鮮外務省は上記の国連安全保障理事会の決議の採択に反発するコメントを出した。
「米国の制裁圧迫に対し、核抑止力を含む自衛的な軍事力を質的、量的に拡大強化する物理的対応措置を取ることになる」
これは、3度目となる核実験をするぞ、という意思表示だとも受け取られている。というのも、北朝鮮の癖があるからだ。
2006年の安保理非難決議の約3ヶ月後に北朝鮮は核実験を行った。また、2009年にも安保理議長声明が出された約1ヶ月半後に、2度目の核実験を行った。
常に反発してきているのだ。だから、この度の議決採択は、却って北朝鮮の核実験を促してしまう可能性がある。
実際、米国は、北朝鮮北東部豊渓里にある核実験場の衛星写真を分析した結果、2週間程度で核実験を行える体制が維持されているという結論を出している。
そのような分析をされていることを見越した上でだろうか、北朝鮮の外務省は以下の声明を同じ23日に出している。
「平和的衛星打ち上げをあえて不法化し、わが国の経済発展と国防力強化を阻害する敵対措置だ」
さらにより挑戦的な声明を加えた。
「より威力のある運搬ロケットをさらに多く開発して打ち上げるだろう」
ただ、これもいつもの北朝鮮の声明の出し方だが、一方では米国と協議を続けたいというようなコメントもしている。
「朝鮮半島と地域の安定を保障するための対話はあっても、非核化対話は存在しない」
それにしても、やっかいな国が核を持っているものだ。吉外に刃物(ATOKはわざと正しく変換してくれない)か。