2013年01月17日

未発表の「安倍ドクトリン」への批判を始めた中国と韓国

安倍晋三首相の対中国戦略がまだ良く見えないが、18日には「安倍ドクトリン」が明らかにされるという。

その内容はまだ憶測しても仕方ないが、中国は、「中国包囲網」であろうと警戒している。

16日、安倍晋三首相はベトナム、インドネシア、タイの歴訪を始めた。

早速反応したのが韓国のメディアで、

「安倍ASEAN3カ国歴訪、中国包囲網の構築を試み」
「日本の安倍が東南アジア歴訪、中国けん制外交路線の構築」

といった見出しを付け、安倍外交が中国牽制を始めた事を印象づけたという。

実際、16日の午後にベトナムに到着した安倍晋三首相は、グエン・タン・ズン首相と首脳会談を行った。そこでは、中国に対する脅威に、両国は協調して対応すること等が話し合われた。

そのため韓国は(当然中国もだろうが)18日に発表されるという「安倍ドクトリン」に注目している。

日本政府は東南アジア諸国に対し、道路や発電所などのインフラ整備を支援したり、借款を提供することで協力関係を強めようとしているが、韓国メディアによれば、それは無駄だという。

韓国メディアが日本による中国包囲網が無力だとしている根拠は、既に東南アジア諸国の経済は、中国に縛られているからだ、とするものだ。さすが中国の属国韓国の論調だ。

しかしこれは韓国の皮相な見方かもしれない。なぜなら、東南アジア諸国にしても、中国一国への経済依存はリスキーだからだ。また、決して中国に対して良い印象を持っているとも思えない。

つまり、東南アジア諸国としても、日本との経済関係を強化すれば、リスクの分散になるのではないか。

そして当の中国メディアはというと、韓国以上に日本の外交に警戒しており注目しているようだ。例えば環球時報の社説では、日本のことを「アジアの沈む太陽」と呼びつけ、日本が中国包囲網を築くことは不可能であると断じているという。

さらに尖閣諸島を巡る日中の緊張レベルはもはや局地的衝突が起きるレベルに達したとし、中国人民解放軍が全軍に「戦争対応訓練指示」を下したことを報じた。メディアレベルではもはや臨戦態勢に入った様相を示している。世論を煽っているのだろうか。

以上、韓国や中国が注目している安倍外交だが、まずはベトナム訪問についてもう少し詳しく見てみる。

ベトナムのハノイに到着した安倍晋三首相はグエン・タン・ズン首相と首相府にて会談を行った。

ここではアジア太平洋地域の平和と繁栄のために、日越が経済・安全保障分野を含めた包括的な協力関係を発展させることで一致した。

そして日本は新たに5億ドルの円借款を供与すると共に、原発建設計画への協力でも合意している。

安倍晋三首相は語りかけた。

「アジア太平洋の戦略的環境は大きく変化した。ベトナムと連携強化していくことは地域の平和と安定にとって大変意味がある」

これに対し、グエン・タン・ズン首相は安倍晋三首相が外遊先の初めにベトナムを選んだ事を高く評価すると表明している。

さらに今年は日越の外交樹立40周年記念でもあり、今年を「日越友好年」とした交流の深化も確認しあった。

安倍晋三首相はこの後、タイ、そしてインドネシアに向かう。

──と書いている内に、タイには到着されたようだ。

安倍晋三首相はタイでも同様に、地域問題と国際関係、また、タイとの経済関係について話し合う予定だ。

タイにとっても日本は既に最大の貿易相手国である(日本にとっては6番目の貿易相手)。また、日本はタイにとってはこれまた最大の投資源でもある。既にタイに導入されている外資の60%以上が日本からとなっている。

そのような関係なので、ここでの会談も無難に終わるであろう。

さて、安倍晋三首相だけを追いかけていても中国側の警戒感は分かりにくいかもしれない。

まず東京では17日、米国からカート・キャンベル国務次官補が訪れ、「日米防衛協力のための指針」の再改訂協議が始められる。

ここでは集団的自衛権行使に関して協議することが決まっており、つまりは同盟国が攻撃を受けた場合には、自国が攻撃を受けたと見なして防護することの可能性について確認される。

また、遡るが13日には岸田文雄外相がオーストラリアを訪問し、安全保障協力の強化について会談している。

これらの動きを見て、中国は恐らく安倍晋三首相が就任直後に明らかにした「ダイヤモンド安全保障」構想を思い出しているのだろう。

「ダイヤモンド安全保障」は、オーストラリア、米国、ハワイ、インド、日本で構成する安全保障構想だ。世界地図上でこれらの拠点を繋ぐと、綺麗なダイヤモンド型になる。要するに中国封じ込めの一環と思われる。

特にオーストラリア側は、民主党政権時代から日本に対して戦略的パートナーとなることを希望していたが、安倍政権になってようやく進展が見られることになった。

というのも、オーストラリアは民主党政権時代の3年間に、なんと22回も閣僚を来日させていたのに対し、日本からはたった7回の訪問だった。

このことに対し、外務省幹部は言う。

「日本がどれだけ豪州のラブコールに応えられているのかという反省はある」

オーストラリアの安倍政権に対する期待は熱いようだ。また、オーストラリアは対中国ということでは米国との関係も強化している。既に昨年4月には米軍のローテーション展開を受け入れている。その延長線上で、オーストラリアは日本に対しても集団的自衛権行使の容認を求めてきている。

これに対して、安倍政権では、「豪印両国との関係をより高い段階にしたい(外務省幹部談)」としており、政府内部からは、「公海上で日豪いずれかの船舶が攻撃を受けた際に、双方が守る“疑似同盟”を将来的には考えるべきだ」との声まで出ているという。

安倍晋三首相はこの「ダイヤモンド安全保障」構想を示す論文を発表しており、そこには、海上交通路が通る南シナ海を「北京の湖」と呼び、中国の影響力増加を警戒している。

そのために、インド洋と西太平洋の海洋安全保障を目的とした協力関係を、日米豪印で強化すべきと主張している。

以上の動きに対して、中国の人民日報(共産党機関紙)は16日に「日本、米国の東南アジア回帰戦略を模倣」という記事を掲載した。そこで日本の中国包囲網が不調に終わることを述べている。

「東南アジア諸国は経済的に中国依存度が高く、日本の『中国包囲戦略』はうまくいかないだろう」

さらに米国側も迷惑しているという論調を張った。

「米国はすでに東南アジアが中国に対抗する能力がないことを認識しており、安倍首相の歴訪は米国を困らせることになる」

また、オーストラリアにしても、協力的では無い、という内容を掲載した。すなわちオーストラリアのボブ・カー外相の言葉として、

「安全保障協力の大枠には同意したが、中国を封じ込める考えはない」

と明言したとしている。

共産党のメディアであるため、どこまで確かなことか分からない。

一方、日本でも売れっ子外交評論家の孫崎享氏はインドは協力的にはならない、ということを東京新聞でのインタビューで主張している。

「インドと中国の貿易量は、日本との貿易量より規模が数倍大きい」

だから、

「国家重要度は中国の方が高いため、インドが中国に対抗する安保ライン構築には積極的でないだろう」

と、言っている。

もっとも孫崎享氏には注意が必要だ。彼の著書はいずれもベストセラーになっているが、要するに、米国依存を止めて、中国に屈するべきだ、という考えが背後に見え隠れしており、なにやら中国の情報操作を担っている人物にも見える。

だれか彼の正体について詳しい人は、ブログやサイトで暴露してください。

その怪しさは、例えば、尖閣諸島については、「(中国の歴史から見ると)すでに14世紀にはその軍事力が尖閣諸島一帯に及んでいたという史実がある」故に、「日本人にとって受け入れがたい事実だが、尖閣諸島は日本固有の領土ではない」といった主張をして、中国を喜ばせている。

また、著書(孫崎享著、ヤン・ギホ訳『日本の領土紛争』(メディチ社))で竹島を韓国領であると主張している。

とにかく孫崎享氏は、日米に亀裂をいれ、中国からの日本への介入の地ならしをしたいようにすら見える(まぁ、考えすぎだろうが)。

ともあれ、明日には「安倍ドクトリン」が発表されるらしい。



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