2013年01月16日

米国は、銃を規制しうるか

米国の銃規制はなかなか難しい。何しろ悪人が銃を持っている以上、善人は武装して身を守らねばならない、というジレンマがある。両者が「せいのっ!」と銃を放り出すことでもしない限り、銃は必要だ、という考えは無くならないだろう。

とはいえ、銃規制に向けての動きはある。

15日、ニューヨーク州は、銃規制法をより厳格化した改正案を可決した。東部コネティカット州の小学校で先月の14日に銃乱射事件(26人の児童等が射殺された)後では、初めて成立した州法となった。

しかし、銃を止めることはできなかった。あくまで厳格化だ。例えば装填できる実弾がこれまでの10発から7発に抑えられるとか、インターネットでの攻撃銃の売買が禁止されたり、精神的な病歴がある者については、病院関係者は当局に通報せねばならないなどだ。

あまりこれまでと変わらない気もするが、まずは第一歩というべきか。

しかし、全くアメリカ人ってやつは──と呆れてしまうかもしれないが、このタイミングでラスベガスではアメリカ最大となる銃の見本市が開幕した。

主催者は全米射撃協会だが、本部は前述の銃乱射事件が起きた小学校からわずか5キロ離れた場所にある。

銃の見本市は既に34回目だが、約1600社が出展し、大変な賑わいとなっている。会場には世界約100カ国から銃のバイヤーが集まるのだという。

これがアメリカだ。そしてこの国では、スーパーで銃が買えることがある。実際、銃乱射事件があった小学校の近くにある大手スーパーには、規制を求める市民が詰めかけ、銃の販売中止を訴えた。

そして世論はどうだろう。

9日から13日にかけて、米ピュー・リサーチ・センターが全米の成人1502人を対象に行ったアンケートでは、以下の様な結果が見られた。

・銃見本市での銃の売買に身元調査を義務づけるべきである:85%
・精神病患者の銃購入は禁止すべきである:80%

少々気になるのは、後者の回答で20%側に回った人は、精神病患者に銃を買わせても構わないということだろうか。

また、連邦政府が銃の売買を追跡するデーターベースを作成することに賛成は約3分の2を占めた。但し、まだまだ圧倒的多数が銃を規制すべきとしているわけではないことに驚く。

・殺傷力が高い「アサルト・ウエポン(突撃銃)」タイプの銃器の禁止に賛成:55%
・弾薬のオンライン販売禁止に賛成:53%

逆に言えば、約半数は規制に反対しているわけだ。やはり銃には銃を、といった考えがあるのだろうか。そのためか、銃を持って銃を制する考えに賛同する人は多い。例えば、武装した警備員や警官を学校に配置することについては約3分の2が「進めるべき」と解答している。

だから銃規制と銃を持つ権利については以下の割合で回答があった。

・銃規制に賛成:51%
・銃を持つ権利に賛成:45%

これでは当分、銃を手放せない。

そんな世論の中、14日にオバマ大統領は銃規制強化案を検討する特別チームを設置し、そこでは大統領令による規制も検討することを発表している。

大統領令は議会の承認を必要としない。これは議会が銃規制を承認しないだろう、と見ていることの表れかもしれない。それほど米国での銃規制は困難だということか。

特別チームはバイデン副大統領らがメンバーとなり、先週には重犯罪犠牲者の遺族や規制推進派と会談する一方、逆の立場であるNRA(全米ライフル協会)とも会談を行った。

さて、このNRAだが、14日に「スポーツマン・チャンネル」というテレビチャンネルで、トーク番組を始めることを発表した。この番組は毎晩放映されるものだが、ホストを努めるのはキャム・エドワーズ氏という銃支持派だ。めちゃくちゃ偏った番組になることは必須だろう。

同時にNRAは、子供達を銃乱射から守るために米国全ての学校に武装した警備員を配置することを提案している。

当然、ますます銃は売れる。

さて、米国の人々は、銃を一斉に手放すことができるか、それとも、銃には銃を、の精神を維持するのか。



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