2013年01月11日

閣議決定された緊急経済対策と市場の評価

11日、政府は「日本経済再生に向けた緊急経済対策」を閣議決定した。民主党政権時代は可処分所得を減少させる増税ばかりを目指し、その上「コンクリートから人へ」などと世迷い言を唱えていたが、ここに来てやっとまっとうな経済政策を目指す政権が登場したと言える。

が、効果のほどは、まだわからない。経済予測は非常に難しいからだ。ただ、本来経済政策は「どうなる?」ではなく「どうする?」であるべきなので、まずは本格的な数字を出したことを評価するべきかもしれない。

事業規模ベースで20.2兆円、国の財政支出(いわゆる真水)が10.3兆円となる。目標は内閣府の試算で出された数値として、GDPを2%押し上げ、雇用創出効果を60万人程度まで持っていくことだとする。

この数値が達成されると財務相は困るはずだ。というのも、増税ではなく、成長こそが税収を増加させる事が証明されてしまうであろうからだ。

と同時に心配なのは、消費増税法案の景気条項に基づき、GDPが2%成長したからもう良いだろうとして増税してしまうことだ。拙速な増税は、せっかくの景気浮上に冷や水をかけてしまうからだ。

その辺りも安倍政権がどのように振る舞うか注目したい。

さて、柱となる対策は、

 復興・防災対策
 成長による富の創出
 暮らしの安心・地域活性化
 潜在力の発揮を可能とする規制改革
 為替市場の安定に資する施策

と掲げられた。

また、金融政策では日銀との連携を強化することで、早期にデフレ脱却を行う事を目指し、日銀に対しては、「明確な物価目標の下で日銀が積極的な金融緩和を行っていくことを強く期待する」とした。

そもそもこのような目標は、本来中央銀行の仕事なので、いまさら要請されなくてもとっくに実施していなければならなかったのだが、日銀の体たらくは政府主導で目標を与えてやらなければならないところに来ている。だから日銀は海外から「デフレターゲットを行っているのか?」と皮肉られていた。

この度の緊急経済対策は、まだ安倍内閣にとっては「景気回復に向けた政策対応の第一弾」と位置付けられているので、今後も様々な手を打ってくることは期待して良いのだろうと思う。

もうすこし内訳を見てみると、復興と防災(インフラの補修も含む)といった公共事業に3兆8000億円。暮らしの安心や地域活性化のための公共事業を地方自治体が行う際の負担を軽減するための交付金としては、3兆1000億円(内、1兆4000億円は交付金として)。成長による富の創出としては、産学協同研究の推進やベンチャー企業支援のための資金として3兆1000億円としている。

そして今回の経済政策で印象づけられているのは、マスコミや新自由主義者や新古典派が大嫌いな公共事業の復活であろう。

そもそもデフレでは、個人は消費を控え、企業は投資を控える。また、個人も企業も債務の返済にやっきになる。現金こそが価値を持ってしまうからだ。また、需要もないから雇用も無く、収入も伸びない。

ますます消費や投資が減少するという悪循環を絶つには、「最後の使い手」として政府が金を使うしかないのだ。新自由主義者や新古典派のように、政府の介入を無くし、規制を取っ払い、市場と自由競争に任せておけば万事上手くいくなど、単なる迷信の類に過ぎない。

それこそデフレの時に、自由競争で需要拡大を争わせてどうするというのか。

安倍晋三首相は緊急経済対策について言う。

「従来とは次元の違うレベルだ」

さて、市場はどのように評価しているか。日本経済新聞Web版の1月11日発行記事を参考にダイジェストしてみた。

芳賀沼千里・三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフストラテジスト(肩書きで舌を噛みそうだ)は言う。

「円高・デフレからの脱却などを据えた内容で、これまで民主党が掲げた、再配分を重視した「最小不幸社会」政策から企業重視の政策への転換が明確だ。足元で低迷する経済を浮揚させる効果が見込まれ、株式市場も好感するだろう。」

同感。

「緊急経済対策では震災からの復興や老朽化した社会インフラ対策なども盛り込まれたが、効果が一過性のものであっては意味がない。投資家の関心はその次の段階の、企業業績が伸びてくるのか、日本企業に本当に成長性があるのか、という論点に移ってくる。」

これも同感。ただ、インフラは一度作ったら終わりではなく、メンテは継続されねばならない。また、大がかりなプロジェクトは長期間継続することも政府は示す必要があると思う。

「そのためには環太平洋経済連携協定(TPP)や規制緩和の実施」

これは反対。TPPは米国の近隣窮乏化策であり、日本から見れば雇用の輸入であり供給過剰政策であるから、インフレになるまでは保留にすべきだろう。

矢嶋康次・ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストは言う。

「政府と日銀が共同文書で拘束力の強い政策協定(アコード)を結ぶことも視野に入っており、株式市場にとっておおむね好材料といえるだろう。」

同感。

「復興に関しては予算をつけても執行する機関がうまくいっていない面が強まっている。予算をつけるだけでなく、執行組織も含めた全体のビジョンを考え直す必要があるだろう。」

これはよく分からない。

門司総一郎・大和住銀投信投資顧問チーフストラテジストは言う。

「2013年度の実質経済成長率を0.5〜1%程度押し上げる効果があるだろう。」

それは楽しみだ。

「注目したいのは、防衛省が防衛装備品整備を盛り込んだこと。13年度予算案では防衛関連費を11年ぶりに増額するとも伝わっている。今後、海上保安庁や自衛隊の装備強化の流れになる可能性が高く、日本の国防政策転換の一里塚になる。」

間違いないだろう。国防は国の要だ。ここを疎かにしては外交も立ちゆかない。ああ、ついでに、

「国防関連の三菱重や島津などの株価上昇の一因になる可能性があるだろう。」

ということで、投資家はこれらの銘柄を買って置いても良いかもしれない。

丸山義正・伊藤忠経済研究所主任研究員は言う。

「20兆2000億円の緊急経済対策のうち、即効性がある景気刺激策は5兆5000億円規模の防災・減災対策だ。関連した公共投資支出は早ければ4〜6月期には出てくる。」

それほど早いだろうか。そうなると、参院選に影響が出そうだ。

「日銀への金融緩和を求めており、日銀が緩和的な金融政策を維持することで金利の上昇を抑制する。」

そうなれば、投資効果も出やすいだろう。

「公共投資では財政支出の効果が後ずれする可能性がある。建設業界では人手不足が深刻になっており、需要の回復に対応できなくなっているためだ。」

マスコミが主導した公共投資悪玉論のツケが回ってきたのだ。せっかく有効需要が発生しても、既に供給力が破壊されている。これが長期デフレの怖さだ。供給力が破壊されてしまっては、せっかくの成長が始まっても、供給能力不足により、余り良くないインフレ率になってしまう可能性がある。

末沢豪謙・SMBC日興証券チーフ債券ストラテジストは言う。

「政府が閣議決定した緊急経済対策は予算規模が大きく、相当の景気浮揚効果があると考えている。景気刺激効果が早く出るよう、即効性の高い政策も多く盛り込まれているようだ。」

同感。

「規制緩和や税制改正なども含め、より中長期に民間の潜在需要を顕在化する政策がなければ、短期的な景気刺激効果にとどまる可能性がある。」

出た、規制緩和原理主義者だ。いったい何の規制を緩和するのかが分からない。いたずらに規制を緩和すると、過剰な競争原理が働き、再び供給過剰と低価格競争に陥ってしまう可能性があるではないか。

──と以上のような評価だが、おおむね市場関係者は好意的なようだ。ただ、朝日新聞を始めとするマスコミは、「ばらまき」といった印象操作により、否定的な報道を繰り出してくる可能性がある。

国民は、どう評価するだろうか。



posted by しげぞう | Comment(3) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 貴殿のブログへの書き込みは、これが最後になると思います。

 個人のブログは、自己主張の場であり、政治家の公開討論会とは違います。
したがって、何時までも議論を続ける必要はありません。
スルーするも良し。
しかし【違う意見に耳を傾ける】ことで、人間は成長してきたと思います。

【難しい課題から目を逸らしてはいけない(思考を停止してはいけない)と思います】

他人様のブログを荒らす様な、子供じみた事はしませんので、ご安心を。


さて、本題に戻ります。

《今回の対策に無い、最重要公共事業》
@電力会社間の電力融通に必要な、送電網の増強
A東西の電力会社間融通の為の、変換設備の増強
 この2点は、今まで後回しにされてきた、重要なインフラです。
 今後予想される、首都直下地震・東南海地震が起きた際、人命は勿論、産業基盤を維持するために、電力融通体制を、インターネット網の様な送電網にする必要があります。
 発電方法に関係なく、整備せねばならないインフラです。


貴殿との意見交換は、私にとって、貴重なやり取りでした。

ありがとうございました  




Posted by ゴメンネジロー at 2013年01月12日 16:11
ゴメンネジローさん、コメントありがとうございます。

確かに、ご指摘の公共事業は絶対に必要です。何故含まれていないのか、自民党のサイトや経済産業省のサイトを確認してみましたが、確かにありませんでした。

ただ、1月15日の閣議決定『「日本経済再生に向けた緊急経済対策」について』を見ると、「社会の重要インフラ等の防御体制の整備」という項目に、「産業・エネルギー基盤強靭性確保調査事業(経済産業省)」がありました。この辺りで検討される可能性があります。

さらに自民党の政策に影響を与えており、内閣官房参与に採用された京都大学の藤井聡教授が主査を努める独立行政法人経済産業研究所発行の各種レポートを見ても、この度の東日本大震災によるエネルギー政策への影響は、代替エネルギーに関する事ばかりで、地域間での融通については触れられておりませんでした。

かなり問題かもしれません。

「基盤を維持するために、電力融通体制を、インターネット網の様な送電網にする必要があります。」

全く、ご指摘の通りです。他にも、道路もインターネット網の様にする必要があります。例えばドイツのグリッド上の道路の様に。

しかし、マスコミやエコノミストたちの「公共事業悪玉論」が邪魔をするでしょう。

「貴殿との意見交換は、私にとって、貴重なやり取りでした。」

こちらこそ、毎回勉強させていただいております。

何せ、自分の世間知らずをなんとかしようとして始めたブログですので、まだまだ勉強不足、知識不足、思慮不足が目立っております。

懲りずに、また、お立ち寄りください。
Posted by 管理人 at 2013年01月13日 11:49
GNI(国民総所得)=民間最終消費支出+政府最終消費支出+民間固定資本形成+経常収支
GNI=消費+投資+経常収支
経常収支=GNI-消費-投資
経常収支=貯蓄−投資
です。
Posted by しょうくん at 2013年01月14日 22:07
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