PMIという数値がある。「Purchasing Manager's Index」の略で、日本語では「購買担当者景気指数」と呼ばれている。
PIMは景気の先行きを占う指標とされており、GDPを2ヶ月先行して示すとも言われている。
とはいえ、PMIはなんだか怪しげな(つまり科学的に見えない)調査方法によって計測される。
ずばりアンケート調査なのだ。概要を簡単に言ってしまうと、製造業の購買担当者に、生産意欲などをアンケート調査して数値化するのである。つまり現時点で、今後どの程度の生産計画を立てているのか、どの程度の資材を必要としているのかをアンケート調査して、それを数値化するのだ。
詳細な計算方法は私自身良く理解できていないので説明を省くが、結果としてPMIが50を超えれば景気拡大が予想され、50未満であれば、景気後退が予想されるとする(占う)。
ただ、怪しげではあるが、このPIMに対する信頼は高く、原材料メーカーが生産計画の参考値としたり、金融機関や投資家の運営計画にも影響を与えているという。
国際的なPMIは、米サプライマネジメント協会(ISM)が公表しているものが利用される。ここが最も早く毎月のPMIを公表するためだ。
他にも各国独自の調査結果が発表されている。日本であれば、日本資材管理協会が、英国ではマーケットエコノミック社が、中国でも国家統計局と物流購買連合会が発表している(もっとも、中国が発表するあらゆる統計数値は怪しいのだが)
さて、このPMIが注目されている理由を知るために、もう少しその内容を見てみる。
まず、アンケートの調査結果は11個の指数に算出される。その11項目は以下の通り。
生産高
製品価格
受けた注文の総計
受けた輸出用の注文
仕事の受注残
仕入れ数量
仕入れ品の平均価格
供給業者の納期
購入資材の在庫レベル
完成品の在庫レベル
従業員数レベル
怪しげと思われたPMIだが、これだけの具体的な項目が調査されているのであれば、なるほど当てになりそうな気がする。回答者は、これらの項目について、「今月は先月に比べて」どうだったのかを回答する。回答は以下の3グループのいずれかが選ばれる。
「増加/良くなった/早まった/高い」
「同じ」
「減少/悪くなった/遅くなった/低い」
「わからない」
最後の「わからない」以外は、順番に「増加」「同じ」「減少」が判断できるわけだ。そしてそれぞれに、起業の規模や分野別の重みが付けられ、全企業の集計が出される。そして「増加」「同じ」「減少」の割合を百分率に変えて、さらに各結果に重み付けをする。順番に1、0.5、0だ。
そうしてPMIが算出される。具体的な計算式については「購買担当者景気指数」で検索すれば見つけられる(それでも見つけ出すまでにちょっと根気が要る)。
さて、このPMIだが、アンケートの設問が国際的に同じであるため、国際的な比較ができるとされている。
──と、長い前置きになったが、以下のニュースを読むために必要だったので、ここまで書いてみた。
今年に入ると早速各国のPMIが発表され始めた。
2日にはマークイット(本社はロンドン)がユーロ圏のPMIを発表した。その数値は46.1と出た。げっ、低い。
この数値は、前述したとおりPMIは50が分岐値なので、景気が悪化する事を示している。新年早々、ユーロ圏はヤバイ、と出たわけだ。ちなみにユーロ圏は2011年8月からずっと50未満を続けている。
一方米国のISM発表のPMIは、前月の49.5から50.7に上昇した。PMI上は米国が景気回復に向かっていることを示している。
さて、ユーロ圏のPMI低下だが、これについてはドイツの産業部門が大きく落ち込んだことが原因とみられているから大変だ。
実際にドイツだけのPMIを見ると、既に先月46.8にまで落ち込んでいたが、今回はさらに46.0にまで落ち込んでいる。ユーロの牽引役がいよいよその役目を担えなくなってきた可能性もある。
他の国は当然50未満で、ユーロ圏で50を超えたのは、唯一アイルランドだけだった。
ちなみに英国は調子良い。なんと51.4になっている。
さて、世界経済の牽引役として期待されている中国はどうか。昨今、景気の失速が注目されているところだ。
ただし、中国の場合は中国国家統計局が発表しているPMIなので、どこまで信じられるかは分からない。
その値は50.6と、かろうじて50を超えた。
ちょっと当てにならないので、HSBC(ロンドン本社。香港上海銀行から発展した世界最大級の金融グループ)も中国のPMIを発表しているので、その数値を見ると、51.5とより高い数値だった。
やはり高い。両者とも、中国の景気回復を示唆している。
但し、国家統計局は慎重なコメントを加えている。
「生産は引き続き50を上回っており、製造業は成長予想を維持しているようだ。ただ、生産の伸び率は低下した」
なぜかというと、新規輸出受注に限れば、50.0という高くない数値が出ているからだ。
つまり、中国経済の回復は、固定資産投資が原動力なのではないか、とアナリスト達は見ている。
それでもPMIは中国の製造業が拡大しつつあることを示している。この原因として、インフラ整備が急ピッチで進んでいることにあるとも見られている。そうであれば、しばらくは中国のPIMは50を上回った状態を維持できるだろうということになる。
GDP上では一時の年平均10%程度の成長を示していた中国が、2012年第3四半期では7.4%まで鈍化した。
しかし、PMIはGDPに先行する指標だ。中国はインフラ整備を牽引役として、今暫くは景気を持ち直す事になるかもしれない。
ユーロはどうなるのか。いまのところ、良いニュースは見つけられなかった。