2012年12月25日

シリアの使ったガスは化学兵器か?態度を変えつつあるロシア。

24日、国連とアラブ連盟の合同特使であるブラヒミ特別代表がシリアの首都ダマスカスを訪問した。そこでアサド大統領と対談している。

対談後の記者会見でブラヒミ氏は、シリア国民の危機脱却を支援するために採るべき措置などについて語ったとしながら、具体的な対応策については明言していない。

「シリアの状況は依然として深刻だ。シリア国民の望む解決策をすべての関係者が受け入れることを期待する」

まぁ、この程度の話し合いで終わったと言うことか。あまり建設的な結論は出なかったと思われる。

何しろブラヒミ氏がダマスカスを訪問したのは初めてでは無い。8月に特使に任命されて依頼、3回目のダマスカス訪問になるが、これと言った成果は上げていない。

10月には政府と反体制派の停戦調停にあたったが、なんと数時間後に大規模な戦闘が起き、面目丸つぶれだった。

早い話、ブラヒミ氏の役割(子供の使いと言っては酷だが)には、今後も期待出来ないのでは無いか、などと思っていたら、そうでもないかもしれない、という情報が入ってきた。ロシアの対シリア方針の変化だ。

まずはそのロシアについて、妙な噂が飛び交った。

同日に報じられたところに依ると、ロシアが特殊部隊をロシア軍艦に乗せ、シリアに派遣する、という内容だった。また、シリアに防空システムの技術者も派遣すると報じられた。

しかしこれについてはロシア国防相が否定した。

「特殊部隊をロシアの軍艦に乗せて(シリアに)派遣するという決定はなされていない」と強調し、「防空システムの技術者を派遣するという報道についても馬鹿げたメディアの憶測だ」

と述べた。しかしこの手の報道が成された場合、火のない所に煙は立たない、という可能性もあり、ロシアが何らかの動きを予定した可能性はある。

一方、この日。つまり24日、シリアでは相変わらず人が死んでおり、子供21人を含む156人が死亡したという。この数字は反体制派の地域調整委員会の発表による。

また、シリア人監視団が気になる報告をしている。

というのは、前日の23日に中部ホムスで、反体制派の6人が死亡したのだが、白いガスを吸って死んだというのだ。

「ガスは政府軍の兵士が円筒爆弾を投げた後に放出され、一帯に拡散した」

そう報告している。このガスを吸った人達は、死亡した6人の他の人達も、激しい頭痛、発作に見舞われた。

また、シリア人監視団は取材に応えた。

「活動家たちはこんなことは初めてだと言っている。通常の兵器ではなかった」

そこでシリア人監視団は赤十字国際委員会に対して事実関係の調査を依頼している。

まさか、とは思うが、このガスの正体が気になるところだ。

また、この日(23日)、同じく中部のハルファヤ村では、なんとも痛ましい攻撃が行われた。

パン屋が戦闘機に空爆されたというのだ。このとこころシリアでは原料不足によるパンの供給が不足していたが、前日の22日に人道支援物資が届いたため、翌日の23日にパン屋に行列ができていた。

そこを狙った空爆の可能性があるというのだが分からない。もし狙ったとすれば、卑劣であろう。少なく見積もって109人が死亡した。

ただ、この爆撃について、国営シリア・アラブ通信は「武装テロリストの犯行」だと報じている。どちらが事実かまだ分からない。

この事態を受けて、トルコ政府はシリアに小麦3万7000トンを援助する発表を行っている。

結局2011年3月に反体制蜂起が行われて以来、既に4万4000人を超える死者を出しているとみられているのだ。

国際社会の秩序維持機能が問われている。

ダマスカスではクリスマスのミサが行われ、約1000人が平和を祈ったと言うが、神が手をさしのべるかどうか、私は懐疑的だ。

さて、ここで話を戻してブラヒミ氏がダマスカスでアサド大統領と何を会談したのかについて、もう少し触れてみたい。というのも、なにやらロシアの姿勢に変化が見られるからだ。

ブラヒミ氏は会談では「域内外の指導者たちとの協議内容を伝えた」としている。

その協議内容だが、ブラヒミ氏は6月にクリントン米国務長官、ロシアのラブロフ外相と会談している。その際、停戦と「挙国一致政府」樹立に向けた工程表を作り、それをアサド大統領に示したらしいのだ。

ということは、米ロのシリアに対する対応方針の歩み寄りが始まっていることがうかがわれる。また、ロシアが何が何でもアサド政権を維持する、という姿勢から変わりつつある様にも思われる。

プーチン大統領も述べている。

「混乱回避のための変化が必要だ」

つまり、政権移行が有っても良いということのようだ。

どうやら米ロは、ここに至って共通の利害を見いだしつつあるようだ。

内戦が長期化することで、シリアではヌスラ戦線などのアルカイーダ系テロ組織が存在感を強めている。このままではアサド政権が崩壊しても、シリアの新たな混乱が始まる可能性が高まっている。これは内戦が長期化すればするほど、テロ組織がつけいってくるためだ。

そのことを米ロは避けたいとする共通認識にいたったのではないかと見られている。

米ロが歩み寄れば、ようやくシリアへの国際社会の介入の方向性が固まると思われるが、その速度感はいまだつかめない。

以下、シリア関係の記事です。

『シリア、サリンを準備中か』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305190492.html

『ロシアとトルコ、経済では協力、対シリア外交では距離』(2012/12/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/305180076.html

『シリアの砲撃に報復するトルコ。シリアは何故トルコを砲撃したのか。』(2012/10/04)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/295414151.html

『シリアは化学兵器を使用するか』(2012/07/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/282860806.html

『シリアで200人規模の虐殺。アサド政権側か、反政府側か。』(2012/07/13)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/280748896.html

『シリアは「戦争状態」にあると認めたアサド大統領に焦りが見られる』(2012/06/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277587322.html

『シリア軍がトルコ軍戦闘機を撃墜。しかしNATOを敢えて刺激するだろうか。』(2012/06/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/276862619.html

『シリアのシャッビーハ(シャビハ)という狂犬の暴走』(2012/06/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/273939512.html

『撤退どころか越境し始めた。シリア軍の暴走が止まらない』(2012/04/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/263642669.html

『シリアに対し、一枚岩になれないアラブ連盟』(2012/04/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/261615315.html

『シリアのアサド政権を維持させたいロシアの思惑』(2012/02/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/250749829.html

『国際社会による軍事介入の可能性が高まるシリア政府の強硬姿勢』(2012/01/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/248074698.html

『シリアの自爆テロは、反体制派か、アサド政権の自作自演か』(2012/01/08)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244957285.html

『シリアで任務についたアラブ連盟の監視団。しかしどうにも怪しい。』(2011/12/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/243414862.html

『シリアの報道は事実か?あまりに狂気を帯びた惨状が報じられている。』(2011/11/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/237704569.html

『リビア化するシリアの弾圧とアサド大統領の強硬姿勢』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236176084.html

『シリアで何が起きているのか。シリア騒乱への経緯。』(2011/11/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/233918198.html



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