──と、ベルルスコーニ前首相の婚約の話の前にせっかくなので政治家としてのお話から…。
18日、イタリアのベルルスコーニ前首相が国営イタリア放送協会(RAI)のトークショーに出演した。そこで、イタリアがユーロを離脱する可能性について言及している。
ベルルスコーニ前首相の言い分は実はまっとうだ。彼が言うには、ECB(欧州中央銀行)が借り入れコストを積極的に押し下げる権限を持たない限り、イタリアはユーロ圏を離脱せざるを得ない状況になるぞ、というものだ。
つまり、ECBはユーロ圏の「最後の貸し手」になるべきではないか、として語った。
「ECBが『真の中央銀行』になることをドイツが受け入れなかったり、金利が低下しなかった場合には、イタリアは競争力を高めるためにユーロ圏を離脱し、独自の通貨を復活させざるを得なくなるだろう」
この発言はヤバイ。ユーロの問題点を突いてしまったからだ。
ユーロ圏内で、格差が生じ、その格差を無くせないでいるのは、すなわちユーロ圏が参加国から、自国通貨の発行権や為替変動による経常収支のバランス機能、そしていよいよ金融政策の自由を奪っているからだ。
上記でベルルスコーニ前首相が言っている「イタリアは競争力を高めるためにユーロ圏を離脱し、独自の通貨を復活させざるを得なくなるだろう」は、ドイツが最も警戒している考え方だ。このベルルスコーニ前首相の考えは、イタリア以外にも当てはまるからだ。
例えば、現在のイタリアでは、「競争力」は高められない。いくら緊縮政策を行っても、経済が衰退し、税収が減少し、ますます貧しくなるだけだ。
ところがベルルスコーニ前首相が言う様に、一旦ユーロ圏を離脱してしまうと、これらが一気に解消する(一時的な痛みは伴うにせよ)。
まず、イタリアはベルルスコーニ前首相が言う様に、独自通貨を発行することができる様になる。当然発行した通貨は、為替相場においてはユーロに対して極端に価値が低くなる。
するとどうなるか。あたかも韓国が自国通貨安政策をおこなうことでサムスンなどを躍進させたことと同じ環境が用意される。
つまり、イタリアはユーロに対して輸出競争力を得ることになる。この場合、観光事業も含む。
ユーロ圏の人達は、極端に安いイタリアの製品やサービスを購入することになる。ユーロさえ持っていれば、イタリアで豪華な観光旅行も楽しめるようになるだろう。
これがベルルスコーニ前首相の言う、「競争力」だ。しかも自国通貨の発行権を得られるので、金融政策も自由に行えるようになる。
ベルルスコーニ前首相は現モンティ政権の緊縮政策を批判してきた。国民も、日に日に貧しくなる状況に耐えがたい状態だ。
その国民感情をてこに、ベルルスコーニ前首相は返り咲きを狙っている。そしてそのモンティ首相は、PDL(自由国民党)から政権の信任案に対する支持を得られなかったことで、早期辞任の意向を表明した。
その結果、来年の2月にも総選挙が実施されそうな状況に至っている。
モンティ首相の支持率は就任以来下がり続けており、現在も最低記録を更新中だ。それはそうだろう。増税し、歳出削減すれば、景気は悪化し、失業者は増える。そこまでしてユーロ圏に留まっている必要があるのか?と国民も考え始めているかもしれない。
そのため、12月に行われた世論調査では、モンティ氏を「非常に」あるいは「十分」信頼していると解答したのは35%で、就任時の71%からがた落ちになっている。
この状況を狙って、ベルルスコーニ前首相は、再び首相の座に返り咲く野心を抱いた。
しかも、その「やる気」は、女性にも向けられた。なんと27歳の女性との婚約を発表したのだ。ベルルスコーニ前首相は現在76歳である。もう娘と言うより孫ではないか。犯罪的だ(笑)。
その若き女性は、ナポリ出身のフランチェスカ・パスカレさんという。経歴も面白い。地元のテレビ局でタレントだったが、政治活動に身を投じ、自由国民党から市議会入りした。
ベルルスコーニ前首相はぞっこんのようだ。いや、イタリア男ならこれくらいは言わねばならないが、
「(彼女は)外見も美しいが内面はもっと美しい女性だ」
だそうだ。写真を見ると、ただのイタリア人にしか見えないが、ベルルスコーニ前首相にとってはサムシングということだ。
老いてなお盛んなベルルスコーニ前首相にとってはこれが3度目の結婚となる。まだ婚約段階で挙式の時期は未定らしい。
ともかくベルルスコーニ前首相のバイタリティーには敬服する。
現在ベルルスコーニ前首相は、未成年モロッコ人女性の売春関与や、その女性を窃盗容疑の逮捕から権力をつかって釈放させようとしたなどで起訴されている最中だ。また、横領、詐欺、贈収賄の罪も問われており、2006年の脱税では禁錮4年の有罪判決を今年の10月に受けたばかりだ。おまけに2人目の妻とは離婚協議真っ最中である。
しかしベルルスコーニ前首相は立ち止まらない。政権にも女にも意欲満々だ。