やっとまともな経済政策論を語る政治家が登場したが、マスコミは敢えて報道しない。
25日、自民党の安倍晋三総裁はテレビ朝日の番組で、野田佳彦首相の発言に驚いた。
野田佳彦首相は言った。
「安倍さんが言っている政策は危険です。インフレになっていいんですか」
いやぁ、今最も危険な人物が人を危険呼ばわりするのも笑えるが、この発言には安倍晋三総裁も驚いた。
後に安倍晋三総裁は語った。
「こんな人が経済運営をやっていたかということ自体が、おそらく、世界は驚くんだろうと思いますよ。」
私は野田佳彦首相が首相になる前から、彼が如何に経済音痴で危険な人物であるかこのブログで語ってきていた。
古い記事からいくつか抽出すると以下のタイトルになる。
『為替介入しか能がない?野田佳彦財務相と白川方明日銀総裁』(2011/08/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/218744071.html
『野田佳彦財務相という財務相のポチを首相にしてはいけない』(2011/08/13)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/220082379.html
『野田佳彦新代表で財務相大喜び、さぁ、庶民の蟻地獄が口を広げた』(2011/08/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/223080870.html
しかし、残念ながら、幸運の女神はそっぽを向き、貧乏神と死に神がほほえんだ。そして野田佳彦首相が誕生した。
しかし、ここにようやくまともな経済政策論争を行える政治家が登場した。
安倍晋三総裁は言う。
「でも、もうこの論争、もう勝負あったですから。この論争については、すでに私たちがこの政策について発表した後、どんどん円が下がっていくではありませんか。株は上がっているんですね。(円は1ドル)83円になった。」
そう、マスコミは阿部潰しのために、彼の経済政策の有効性については語らないかもしくは上げ足取りに徹するようにしているが、市場は素直に反応していた。
しかし反安倍晋三総裁であろう日本経済新聞(nikkei.com)も、少しだけ触れない訳にはいかなかったようだ。23日付けで以下の記事を掲載した。
──日本経済新聞より(1)──
自民党の安倍晋三総裁は23日、岐阜県多治見市で講演し、政権獲得後の金融政策では2%の物価目標で政府と日銀が政策協定を結ぶとしたうえで「日銀が思い切った金融緩和でそこに到達していく。目標には日銀総裁が説明責任を負う。世界の常識だ」と述べた。
金融緩和への批判には「この論争はもう終わった、勝負あったと思っている。実際に私たちが何をやるかにかかっている」と自信を示した。岐阜市での講演で語った。
──日本経済新聞より(2)──
自民党の安倍晋三総裁は23日午前、岐阜市内で講演し、政権獲得した場合の金融政策について「日銀と政策協調し、大胆な金融緩和を行う。日銀とアコード(政策協定)を結び、2%の物価目標を掲げる」と述べた。「デフレ下では絶対に財政再建はできない」とも指摘し、デフレ脱却や円高是正に努める姿勢を強調した。
最近の自身の金融政策に関する発言を米エール大の浜田宏一教授が支持していることに触れて「浜田先生は白川(方明・日銀総裁)さんの先生だ。私はこの論争はもう終わった、勝負あったと思っている」と日銀側をけん制。デフレ脱却に向けて日銀に一層の取り組み強化を促した。
──日本経済新聞よりここまで──
他はあまり触れたがらない。この点では日本のマスコミはほぼ協調歩行している。実に仲良しだ。
しかし、米ウォールストリート・ジャーナル紙は、安倍晋三総裁にインタビューを行い、その経済政策について詳しく掲載した。
以下、抜粋しながら見ていきたい。なお、ウォールストリート・ジャーナルは外交問題についても興味深くかつ有意義なインタビューを行っているが、煩雑になるので、今回は経済政策のみ取り上げたい。
興味の有る方は、以下のオリジナルサイトをご覧ください。
http://jp.wsj.com/Japan/Politics/node_552797
以下、引用「 」は日本語版ウォールストリート・ジャーナルの11月25日掲載記事(上記URL)より。
まず、ほとんどのマスコミが勘違いしている日銀の独立性について、安倍晋三総裁が正確に理解していることが分かる部分。
「中央銀行の独立性はきわめて重要であると考えている。その中において、日本銀行の独立性を考えると、世界的な標準とは違うところに問題がある。政策的な目標については、政府と日本銀行が共有すべき。その手段については、日本銀行がしっかりと独立性を守っていくことが重要と考える。現在の日本の場合は、手段と目標の両方で独立性を持っているところに問題があると考える。」
そう、マスコミやエコノミスト達が勘違いしているか、もしくはわざととぼけているのが日銀の独立性だ。彼らは政府が日銀に圧力を加えると馬鹿の一つ覚えで「日銀の独立性の侵害だ!」と叫ぶ。
しかし、日銀が保証されているのは手段のみだ。それが世界での中央銀行に対するスタンスの常識だ。
だから、インフレターゲットを親会社である政府が示し、日銀にそれを達成させるように指導することは問題無い。ただ、手段は任せれば良いのだ。
これを、安倍晋三総裁は正しく理解している珍しい政治家である。
また、日銀がインフレターゲット政策を臭わせた(お茶を濁した)「ゴール」という言葉についても、鋭く解説している。
「これは難しい日本語ですが、日本語では「ゴール」は「目標」ではない。「目途(もくと)」という漢字になっている。「目途」には責任は伴わない。説明責任もない。ある意味、コミットメントが極めて薄いといってもよい。役人がよく使う言葉は「目途」。これを英語に訳すのは難しいが。普通の日本人は「目処(めど)」と言う。「めど」と「もくと」は漢字が違う。日銀は「目途」という言葉を使って、海外に対してはインパクトが小さいので「ゴール」という言葉を使った。「ゴール」のような強い意味は「目途」にはない。」
役人が使う姑息な日本語について、海外に伝えるのは難しいだろうが、安倍晋三総裁はなんとか答えている。
また、この日銀の総裁人事についても明確に介入することを意思表示した。
「(もし、自民党が政府与党になればの話だが、)政府与党が指名して国会によって承認される。関わるかどうかというよりも主体的に任命していくことになる。」
そしてその条件は、2%の物価上昇か、との問いに、
「それは当然条件になる。」
実に明快だ。
また、驚いたのは、安倍晋三総裁が、円高是正の対策として為替介入が焼け石に水であることを理解している点だ。ここはあのいかにも馬鹿面の安住淳前財務大臣や、最近人相が悪くなった野田佳彦首相とは一線を画する。
「為替介入という方法は、今、全く考えているわけではない。為替介入をしてもほとんど効かない。今まで効いていない。世界的な協調がないとこれは難しいといっていいと思う。問題は、この10年間それぞれの国がマネタリーベースを増加させていることだ。米国もEUも英国も韓国も3倍以上にしている。日本は1.2から1.5倍というところだ。
そうした点にも着目するべきだろう。為替をいわば操作するということではなくて、まず、デフレから脱却をしていくという政策をやっていく中において、円高が是正されていくということになるのだろうと思う。その相互作用なのだろう。」
見事だ。為替介入が如何に意味が無いどころか、実は財政再建を謳っている現政府にとっては矛盾する政策であることも加えたい。短期証券の発行などによって負債が増えるからだ。
この辺りの事情に関しては、以下の投稿で書きましたのでご参考ください。
『為替介入しか能がない?野田佳彦財務相と白川方明日銀総裁』(2011/8/6)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/218744071.html
『円高が止まらない。為替介入は焼け石に水。』(2011/08/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/221389065.html
また、消費税の増税についても、常識的に答えている。この辺りも全く口からデタラメを語っている野田佳彦首相らとは異なる。
デフレ脱却ができていなかったら増税は見送るのかとの質問への答えだ。
「デフレ脱却に向かってはいないという判断をすれば、上げていかないということになると思う。デフレ脱却に向かって進んでいるかどうかということが、きわめて重要だ。」
また、税収を増やすには、増税では無理で(逆効果で)、経済成長しかないという正しい認識を持っている。財務相の言いなりポチの野田佳彦首相の頭や御用経済学者、御用エコノミスト、マスゴミでは理解出来ない部分だ。
「われわれが言っているのは、デフレから脱却できなければ、名目経済を成長させなければ、財政は再建できないということ。名目経済が成長すれば税収は増える。名目経済が縮小すれば、税収はほとんど必ず減少する。要は税収を増やして、そして無駄遣いをなくしていくということにおいて、われわれは財政を再建する、プライマリーバランスを黒字化するということを目指している。
ただ、大切なのは、デフレ下にあっては、それがほとんどできないということが明確であることだ。そのため、まずデフレから脱却するということについて、集中的に政策を投入していく。つまり、金融政策だけではデフレから脱却はできない中で、財政政策も加味する。一時的には絶対額が増えるが、名目GDP(国内総生産)が増える。問題は名目GDP比だということを申し上げておきたい。」
ノーベル経済学賞のポール・クルーグマン教授が聞いたら手を打って喜ぶだろう。彼の日本の不況に対する考えの要点をWikipediaの「ポール・クルーグマン」から引用する(かなり端折られているが)。
“クルーグマンは日本が長期不況から抜け出すための解答自体は極めて簡単であり、お金を大量に刷ること(Print lots of money)で需要を喚起し[9]、インフレ期待を作成することが経済を拡大する唯一の方法であると述べている”
安倍晋三総裁の考えはまさにこれだろう。
それからマスコミや野田佳彦首相が使っている印象論についても、きちんと数字を把握している。
「21世紀に入って、最も財政状況がよかったのは、私が総理大臣の時の予算だ。今、だいたいおそらく、プライマリーバランスはマイナス27兆、28兆円ほどだと思う。私のときは5.8兆円だった。もしあのとき、3月だが、量的緩和を止めていなければ、間違いなくプライマリーバランスは黒字化していた。51兆円税収があっても私は81兆円しか使わなかった。今の政権は40兆円しか予算がないのに、95兆円を使っている。国債発行残高は、私の時は25兆円だった。今は倍近い。」
なお、私は安倍晋三総裁を手放しで称賛している訳では無い。全ての主張において賛成している訳でも無い。不安もある。
しかし、現在首相になる可能性がある政治家達の中で、最も──というか唯一というか──まともな経済政策論を語っている政治家だと考えている。
しかし、ウォールストリート・ジャーナルが報じたような、正確な安倍晋三総裁の経済政策に関する考えについては、国内のマスコミは報道せずに、相変わらず印象論で阿部潰しを進めているように思える。
さて、皆さんはどの政治家の政策論に賛同されますでしょうか。
三日前にこのブログを発見。
これは勉強になりますね。
感心しながら読ませてもらってます。
私は安部総裁に期待しております。
野田よりましだという理由からではなく、前回の総理就任時以前からこの人ならという思いがありました。いろいろ批判はありますが、さらに成長しているように思います。
今後の書き込みも楽しみにしています。
頑張ってください。
過去ログも全部読み返します。
そうですね、安倍晋三総裁はなにやら以前より迫力が出てきました。いろいろ辛酸をなめ、勉強もされたのでしょう。
次の首相が誰になるか、政治は一寸先は闇なので分かりませんが、もう、野田佳彦首相だけは勘弁してくれ、というのが多くの人の意見だと思います。
>今後の書き込みも楽しみにしています。
ありがとうございます。浅学でそそっかしいですが、励みになります。ときどき「あ、やっちまった…」という記事もあるかと思いますが、ご寛大に願います。
今後とも、よろしくお願いします。
そうなんです。しかもこの後安倍政権は、イエール大学の浜田教授を内閣官房参与に登用しました。浜田教授もまた、日本人で最もノーベル経済学賞に近いと言われている方です。
あとは、安倍政権が、マスコミとそれに洗脳された国民、財務相あたりの妨害を、乗り切れるかどうかに掛かっていますね。