2012年10月04日

シリアの砲撃に報復するトルコ。シリアは何故トルコを砲撃したのか。

3日、トルコ南東部のシリアとの国境付近であるアクチャカレに、シリアから飛来した砲弾が住宅地を破壊した。この着弾で女性一人と子供四人が死亡し、少なくとも8人が負傷したという。

トルコ側はこれに対する報復砲撃を既に行っている。同時に、国会に対しても、シリアの領内にトルコ軍を配置するための承認を求めている。

つまり、これが承認されれば、トルコはいよいよシリア領内に進軍することになる。

また、3日にはトルコの国連大使が国連安全保障理事会に書簡を提出している。そこには「必要な行動」をとることが要請されているという。

が、とりあえず安保理各国は、非難声明を出すにとどまるだろうと見られている。

一方、このトルコからの報復砲撃によるシリア側の損害は分かっていない。英国のシリア人権監視団によると、複数のシリア人兵士が死亡したと伝えられているようだが、その数などはまだ分かっていない。

状況はめまぐるしく動き出した。上記の動きの他、ブリュッセルではNATO(北大西洋条約機構)の大使級理事会が緊急開催された。トルコはNATO加盟国だからだ。

NATOは声明を出した。

「目に余る国際法違反」

そしてこの砲撃をNATOへの砲撃と受け止め、同盟国への明白な脅威であると位置付けた。その上で、シリアに即刻攻撃を中止するように要請した。

シリア側はというと、この砲撃に対して、すぐにトルコ側に遺憾の意を表明した。その上で、各国に反撃しないように自制を求めている。

自体は緊迫度を増している。というのも国連が動かずともNATOには「共同防衛」条項があるためだ。これは加盟国への攻撃を同盟国全体への攻撃と見なして反撃することを示している。が、この度はシリアを非難する声明を出すにとどまっている。

米国のクリントン国務長官はトルコ外相との会談を決めた。

「トルコ側に死者が出たことは残念で、憤慨している」

トルコがどこまで忍耐を保てるか。また、この砲撃がシリア側の意図的なものか分からない。

微妙なのは、シリアはかねてよりトルコがシリアの反政府勢力を支援していると批判していた。また、6月にはトルコとの国境でシリア軍がトルコの軍用機を撃墜している。また、その前の4月にも、トルコ側のシリア人難民キャンプをシリア側が銃撃してトルコ側警察官等が負傷する事件があった。

少なくともトルコ側は、シリア政府が発射した物であるとは決めつけている。そのためにシリアへ報復砲撃を行った。

「シリアのわが国の安全保障への挑発に無反応でいることはない」

と、シリア首相府は声明を発している。

ただ、前述したように、シリア側はトルコ側犠牲者に弔意を示しており、砲撃の原因を調査中としている。つまり、狙ったわけでは無い、と言うわけだ。

しかしトルコ側は、3日の夜には一旦停止させた報復砲撃を、4日になると再び開始している。この報復砲撃の標的は、トルコとの国境に近い、イドリブのシリア軍砲兵隊の施設だ。トルコ側は、この施設から砲撃を受けたと判断したのだ。

それにしても疑問は残る。

果たしてシリア政府が積極的に外国からの軍事介入を求めるだろうか。

そこでロシアのメディアでは、この砲撃はシリアに外国の武力介入を求める何らかの勢力が行った挑発である可能性を報じている。あるいは流れ弾だった可能性も残る。


以下、シリア関係の記事です。

『シリアは化学兵器を使用するか』(2012/07/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/282860806.html

『シリアで200人規模の虐殺。アサド政権側か、反政府側か。』(2012/07/13)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/280748896.html

『シリアは「戦争状態」にあると認めたアサド大統領に焦りが見られる』(2012/06/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277587322.html

『シリア軍がトルコ軍戦闘機を撃墜。しかしNATOを敢えて刺激するだろうか。』(2012/06/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/276862619.html

『シリアのシャッビーハ(シャビハ)という狂犬の暴走』(2012/06/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/273939512.html

『撤退どころか越境し始めた。シリア軍の暴走が止まらない』(2012/04/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/263642669.html

『シリアに対し、一枚岩になれないアラブ連盟』(2012/04/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/261615315.html

『シリアのアサド政権を維持させたいロシアの思惑』(2012/02/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/250749829.html

『国際社会による軍事介入の可能性が高まるシリア政府の強硬姿勢』(2012/01/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/248074698.html

『シリアの自爆テロは、反体制派か、アサド政権の自作自演か』(2012/01/08)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244957285.html

『シリアで任務についたアラブ連盟の監視団。しかしどうにも怪しい。』(2011/12/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/243414862.html

『シリアの報道は事実か?あまりに狂気を帯びた惨状が報じられている。』(2011/11/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/237704569.html

『リビア化するシリアの弾圧とアサド大統領の強硬姿勢』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236176084.html

『シリアで何が起きているのか。シリア騒乱への経緯。』(2011/11/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/233918198.html



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