2012年07月24日

シリアは化学兵器を使用するか

23日、シリア外務省は声明を出した。

「外国の侵略がない限り、化学兵器は使用しない」

この声明に、国際社会に緊張が走った。この「化学兵器は使用しない」とは、詰まりはシリア政府が化学兵器を持っており、追い詰められれば使用する可能性に言及したと受け取られたのだ。

軍事情報サイトの「グローバル・セキュリティー」によれば、シリアはサリン、VXガス、タブンなどの化学兵器を製造しており、それらは首都ダマスカスの北部、ホムス郊外、ハマ、ラタキア近郊の4カ所に保管しているという。

このような声明を出したことは、アサド政権が追い詰められていることを示しているかもしれない。

同時に、もともと敵対しているイスラエルがシリアの武器庫を空爆するのではないか、との懸念も出てきた。実績がある。2007年にイスラエルはシリアの核施設とみられた場所を空爆しているのだ。

また、イスラエルの空爆は決して唐突では無い。イスラエルが恐れているのは、シリアの化学兵器がレバノンの民兵組織であるヒズボラに流出する事を警戒しているためだ。また、シリアの背後にイランがバックアップしていることも警戒しているのだろう。

しかも既に、イスラエルのメディアでは、アサド政権が崩壊する前に、シリアの武器庫を先制攻撃すべきであるという論調がながされている。

そのため、米国はイスラエルの勇み足を抑えるべく、近日中にパネッタ米国防長官がイスラエルに向かう予定だ。

また、23日にはオバマ大統領がネバダ州での演説で、シリアの化学兵器に言及した。

「(アサド政権が)これらの兵器を使用するという恐ろしい過ちを犯せば、彼らに責任を取らせる」

シリア外務省のマクディシ報道官は断言している。

「シリアが保有している(大量破壊兵器の)ストックや非通常兵器は、いかなる状況においても民間人やシリア国民に対して使うことはない。保有兵器はすべてシリア軍によって監視され、外部からシリアに対する侵攻があった場合にのみ使用される」

これが危ないのだ。既に国際社会は、シリアのアサド政権が約束を守る政権では無いとみている。また、民間に化学兵器を使用しても「テロ掃討作戦だった」と発表する可能性もある。

国際社会は、シリアへの軍事介入の検討も始めているが、足並みが揃わない。しかし、シリアが化学兵器を使用すれば、状況は変わる可能性がある。その意味では、密かに化学兵器の使用を待っている人々もいるのかもしれない。

そのような事態を避けるべく、アラブ連盟の高官は、アサド大統領に提案している。

「アサド大統領が即時辞任して出国すればアラブ連盟が身の安全を保証する」

アサド大統領はこの提案に乗らないだろう。身の安全は保証されても、拘束されることは間違いないと考えるはずだ。もはや後には引けないという状況にまで追い詰められている可能性がある。

ところでシリアは化学兵器禁止条約には署名してない。また、これまで化学兵器を貯蔵していることは認めていなかった。

つまり、この度の声明は、威嚇でもある。しかも一部の報道によれば、シリアの化学兵器貯蔵量は、アラブ諸国最大だという。これが内戦の泥沼化で兵器管理がずさんになり、イスラム過激派などに流出することを、国際社会は懸念している。

また、米国やイスラエルの分析によると、既にアサド政権は一部の化学兵器を保管場所から移し始めているという。自由シリア軍のクルディ副司令官も時事通信の取材に応えている。

「政府軍が中部ハマ郊外のバダヤ地区から別の場所に化学兵器を移動させたという情報がある」

また、より警戒すべき情報も語った。

「政権への忠誠心が高い部隊にガスマスクを配布しており、最終局面で市民に化学兵器を使用する恐れがある」

既に複数の幹部が死亡しているアサド政権が、冷静さを失って暴走し、化学兵器を使ってしまう可能性もゼロではない。

いや、反政府側の自由シリア軍が入手して使ってしまう可能性も否定できない。何しろ自由シリア軍には、周辺諸国のイスラム過激派が紛れ込んでいるという。彼らはテロ組織へのパイプだ。化学兵器が彼らの手に落ちれば、どこに流れていくか分からない。

米国防総省のリトル報道官は言う。

「使用すれば一線を越えることになる」

まだ、国際社会は、シリアの内戦に打つ手を持たないが、「一線を越え」れば、事態は急変する可能性がある。

そして、それを待っている人々がいるかもしれない。


以下、シリア関係の記事です。

『シリアで200人規模の虐殺。アサド政権側か、反政府側か。』(2012/07/13)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/280748896.html

『シリアは「戦争状態」にあると認めたアサド大統領に焦りが見られる』(2012/06/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277587322.html

『シリア軍がトルコ軍戦闘機を撃墜。しかしNATOを敢えて刺激するだろうか。』(2012/06/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/276862619.html

『シリアのシャッビーハ(シャビハ)という狂犬の暴走』(2012/06/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/273939512.html

『撤退どころか越境し始めた。シリア軍の暴走が止まらない』(2012/04/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/263642669.html

『シリアに対し、一枚岩になれないアラブ連盟』(2012/04/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/261615315.html

『シリアのアサド政権を維持させたいロシアの思惑』(2012/02/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/250749829.html

『国際社会による軍事介入の可能性が高まるシリア政府の強硬姿勢』(2012/01/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/248074698.html

『シリアの自爆テロは、反体制派か、アサド政権の自作自演か』(2012/01/08)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244957285.html

『シリアで任務についたアラブ連盟の監視団。しかしどうにも怪しい。』(2011/12/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/243414862.html

『シリアの報道は事実か?あまりに狂気を帯びた惨状が報じられている。』(2011/11/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/237704569.html

『リビア化するシリアの弾圧とアサド大統領の強硬姿勢』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236176084.html

『シリアで何が起きているのか。シリア騒乱への経緯。』(2011/11/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/233918198.html






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