2012年07月19日

インドのスズキ工場で暴動。カーストを破壊する資本主義と新たな格差社会が原因か?

18日夜。インドは北部のハリヤナ州にある工場で、暴動が発生した。工場はスズキの子会社であるマルチ・スズキだ。

この暴動の結果、分かっているところではインド人従業員一人が死亡し、日本人2人を含む約90人もの従業員達が負傷している。

以上の数字は在インド日本大使館による。

負傷した2人の日本人は、今のところ意識も有り、命には別状はないらしい。ただ、この暴動のため、工場は操業を停止せざるを得なくなった。

きっかけは、インド人同士のトラブルのようだ。工場のインド人監督が、同じくインド人の従業員に対して、カースト制度上の差別的な言動をしたことが原因だという。

そしてそのことがきっかけで、従業員4000人近く(別の情報では2000人規模)に上る暴動にまで膨らんでしまった。

カースト上の差別発言が出たのは、従業員と工場幹部が労使間の協議を行っている最中だった。具体的な発言内容は分からない。

ただ、その発言がきっかけで、従業員が幹部を殴るといった暴力沙汰になってしまった。よほど気に障る事を発言したのであろう。

ともかく一触即発だった可能性がある。というのも、この工場では昨年も同様の状況で数週間の操業停止に追い込まれているからだ。

そして暴力沙汰はやがて、工場を放火するという暴挙に至った。死亡したインド人(人事担当のインド人とも)の身元は分かっていない。

時間が遡るが、この差別発言が有った協議に先立つこと、同日の朝、既に暴力は発生していたらしい。

その日の朝、店舗のフロアで従業員が上司に暴力を振るったという。理由は定かでは無い。それで労働組合が経営陣に対し、従業員への懲戒処分を行わないように要求したのだ。

そして就業時間が終了すると、従業員達は役員や管理職が退社できないように、工場を封鎖し、閉じ込めた。

それで従業員と監督側の話し合いが行われたのだが、またもや従業員側が経営陣に暴力を振るってしまった。そして家具や窓硝子を破壊し始め、挙げ句の果ては工場を放火するという騒ぎにまで発展してしまった。

よほど日頃から鬱憤が溜まっていた可能性がある。もともとカースト制度があるインド人にしても、工場という資本主義社会に触れることで、格差社会への不満が芽生えてきたのか。

工場の鎮火には、25台もの消防車が任務に当たった。同時に4000人もの警官が出動し、約90人(報道により40人とも)の身柄が拘束された模様だ。

暴動が起きたマルチ・スズキは、インドではトップ企業の一つだ。インドの乗用車生産では4割を占めるという。小型車の「スイフト」などを年間65万台を生産する能力を持っている。しかし、昨年のストライキも賃金問題が原因であるなど、労使間のトラブルが絶えないようだ。

昨年のストライキとは、6月、8月、10月に行われている。その際も、工場は一時的な閉鎖に追い込まれていた。

この騒ぎを受けて、インドの株式市場では、同社の株価が7%を超えて下がった。

2011年のIMF調査では、インドのGDPは1兆6761億ドル(約135兆円)と世界第11位に位置している。が、一人当たりGDPは1389ドルと世界平均の15%に満たない。貧困層(1日2ドル未満で生活)は国民の7割という(アジア開発銀行調べ)。これは世界最大の貧困人口だ。

そして前述の通り、まだカースト制度の名残が強く残っており、差別がある。このような社会に、資本主義がもたらすのは、旧い身分制度の破壊と、新たな格差社会なのだろうか。



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