2012年07月15日

クリントン国務長官とエジプトのモルシ大統領と会談。まずはお互いの思惑は一致

14日、米国のクリントン米国務長官がエジプトを訪問した。ここでエジプトの新大統領であるモルシ(ムルシとも)大統領と初めての会談を行った。ますますでっぷりと尻が肥大化したクリントン米国務長官は言った。

「米国は完全な民政移行を支持する」

そして、エジプトの軍部は国家安全保障という、限定された役割に戻るべきだと大統領を支持した。

会談の雰囲気は非常に良いものだったようだ。その中で、モルシ大統領が最も期待している米国からの経済支援についても、まずまずは良い反応が得られた模様。

この後、クリントン米国務長官は、軍最高評議会のタンタウィ議長との会談も予定している。

そこでのクリントン米国務長官の発言が注目されるだろう。というのも、まだ軍最高評議会は、人民議会の解散を命じて立法権を握ることを宣言しており、事実上、モルシ大統領と対立した状況にあるからだ。

クリントン米国務長官とモルシ大統領の会談は、カイロの大統領宮殿で行われた。

クリントン米国務長官は、会談後の記者会見でも、モルシ大統領に語ったのと同じ事を強調した。

「民主的に選ばれた政府と、(軍政から)民政への全面的な移行を支持する」

奇妙ではある。米国はムバラク前大統領の「独裁」を支持してきた。それが、今度は穏健派ではあるが、イスラムのムスリム同胞団出身の大統領を「民主的だから」支持するという。

これが外交だ。米国に取って、エジプトを経済支援で抑えておくことが、パワーバランスを取ることに他ならない。

だから、経済支援についても、前向きであることを伝えた。すなわち、昨年の夏にオバマ大統領が表明した10億ドルの金融支援の実施予定は、まだ有効であることを伝えたことになる。

これは、米国に取って、これまで距離を置いていたムスリム同胞団とも、良好な関係を築き上げる必要が出てきていることを示している。

そのこともクリントン米国務長官は語った。

「米国とエジプトが共有する戦略上の利害は相違よりもはるかに多いと考えている」

そしてこの態度を、モルシ大統領も歓迎した。何しろ米国からの経済支援は必要だ。だから、モルシ氏は大統領に当選した直後の演説でも、平和条約の維持を宣言した。

これはすなわち、米国の盟友であるイスラエルとの平和条約を維持することを示していた。

それにクリントン米国務長官が経済援助で応えたた形になる。そしてその米国の態度は、モルシ大統領が外交上で軍部に優位に立つためにも必要だった。

軍部は大統領の権限を縮小しようとしているため、今エジプトに必要な国外からの支援は、モルシ大統領の外交にかかっているのだ、という状況を示さねばならない。特に米国には、エジプトの軍部への懸念を表明させることで、軍部への外圧を高めたいところだろう。

クリントン米国務長官は、そのモルシ大統領の思惑をくみとり、軍部と大統領の対立が続くことに対する懸念を表明した。

「対立が続けば、民主化の軌道から外れる」

モルシ大統領の外交は、クリントン米国務長官との会談に先立ち、サウジアラビアを訪問することでも同様の動きをしている。

すなわち、サウジアラビアからの経済支援を促すために、アブドラ国王と会談した。

実はアブドラ国王との会談内容は公開されていないらしく、よく分からない。たあ、サウジアラビアはエジプトでイスラム原理主義勢力が台頭することを懸念したため、モルシ大統領はこれに対しても大統領就任演説で語っていた。

「革命は輸出しない」

だからサウジアラビアに対しても、安心して経済支援を行って欲しいと訴えたのでは無いだろうか。

何しろエジプトは現在、失業率が12%程度ある。これは過去10年間で最悪のレベルだ。新しい大統領がこの状況を改善出来なければ、すぐに国民からの支持は離れていくだろう。新たな混乱はすぐにでも始まるに違いない。何しろモルシ大統領は、決して圧倒的な国民の支持によって当選したわけではないからだ。

一方、米国としても、イランやシリアへの対応に注力するためにも、エジプトを惹き付けておく必要がある。

そのために、まずは経済支援を約束することだ。

ということで、まずは両者の思惑は一致している。



『エジプト新大統領モルシー氏は、ぬかるみへの第一歩を踏み出したかもしれない。』(2012/06/25)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277224870.html

『エジプト大統領選の結果は、どっちに転んでも新たな火種だ』(2012/06/24)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/277009953.html

『エジプトのムバラク大統領に死刑求刑。軍部への不満を反らす見せしめか』(2012/01/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244591656.html

『エジプト騒乱の続章の幕開けか。暫定統治の軍と、イスラム原理主義の衝突』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236099759.html

『エジプトの、新たな混乱が始まるのか。』(2011/02/12)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/185542674.html

『ムバラク大統領は、権力亡者となり暴走しているのか。後ろ盾の米国にも読めず。』(2011/02/11)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/185457860.html

『デモの長期化はムバラクに有利か、反ムバラクに有利か』(2011/02/05)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/184439695.html

『ムバラク大統領の退陣は、新たな対立を産む可能性がある』(2011/02/02)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183849084.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第五部。』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183236111.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第四部。』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183159468.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第三部。』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183150487.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第二部。』(2011/01/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183086820.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第一部。』(2011/01/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183082938.html



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