2012年06月24日

エジプト大統領選の結果は、どっちに転んでも新たな火種だ

もうすぐエジプト大統領選の結果が発表される。日本時間では今日24日の夜10時頃になりそうだ。

既にこの選挙の結果発表については、事前に混乱が見えている。候補者のモルシー(モルシ、ムルシとも)氏60歳と、シャフィーク(シャフィクとも)氏70歳のいずれの陣営も、自分たちの候補者が勝利したと主張している。

モルシー氏は、穏健派イスラム原理主義組織であるムスリム同胞団の傘下にある自由公正党の党首だ。

シャフィーク氏は、軍出身で、ムバラク前大統領近く、元首相である。

どちらに勝利が決まっても、各々の支持団体が黙ってはいない。選挙結果の発表がどうであれ、必ず不正があったという主張が始まり、新たな混乱が始まるだろう。

いや、既に混乱は始まっている。選管当局は、当初の発表予定日だった21日に発表出来なかった理由として、両陣営から、選挙違反の疑いの申し立てが400件以上もあったことを上げている。それらの審査に時間が掛かったと言うことだ。

最初の混乱は、ムスリム同胞団がいち早く独自の集計により、モルシー氏が52%の得票で勝利したと発表したことに始まった。

それに対し、シャフィーク氏もすぐに、自分こそ勝利したと記者会見を開いた。

どちらも滑稽なほどに待てない人々だ。

ただ、ムスリム同胞団側としては、選管自体が信用出来ない。選管の委員長がスルタン氏だからだ。スルタン氏は、ムバラク政権時代に任命された人物で有り、最高憲法裁判所の長官も兼務している。

そしてこの憲法裁判所は14日に、「人民議会選は違憲」という判断を下しており、軍や旧政権寄りの姿勢を示している。

だからムスリム同胞団としては、選管自体に警戒しているのだ。きっと軍あるいは旧政権寄りの不正を働くに違いない、そう考えている。

だから22日には、モルシー氏は記者会見で選管に警告した。

「選挙結果は誰もが知っており、国民の意思が反映されることを望む」

そして同日、ムスリム同胞団はカイロ中心部にあるタハリール広場に支持者数万人を終結させた。選挙結果しだいでは、黙っちゃいないぞ、という待機状態を示している。

この動きに対して、軍最高評議会も同日声明を発表した。

「公共の利益を傷付ける試みには、警察や軍が断固として対処する」

選挙結果によっては、ここから暴動が始まる可能性もある。

このように、明らかに軍部がシャフィーク氏寄りであることから、この選挙の結果は、どのみちシャフィーク氏が勝利するように仕組まれるに違いない、という憶測も招いている。

「軍が、シャフィーク氏を勝たせるために選管に圧力をかけているため」

そんな声が上がり始めた。

そしてそのシャフィーク氏も、困ったことに同じカイロ市内に、「勝利集会」の開催を呼びかけ支持者を終結させている。

一方、ムスリム同胞団は、選挙と同時に、先の軍が命じた人民議会(国会に相当)の解散を撤回するように交渉を始めている。

軍もまた、ムスリム同胞団に対して、軍事全般の権限を軍が持ち続けることを規定した暫定憲法を認めるように要求している。

この交渉はどう見ても成立しないだろう。あまりに溝が大きい。

しかし政府系の新聞であるアルアハラムの電子版は、評議会幹部の発言として伝えている。

「両者の交渉は合意に達することができる」

無理だろう。

しかも驚いたことにアルアハラムは、交渉が決裂してしまうと軍が選挙に介入して選挙結果をシャフィーク氏勝利にしてしまうだろうとすら伝えている。露骨だ。

選挙結果が出ても、エジプトの混乱は続く。


以下、エジプト関係の投稿記事です。

『エジプトのムバラク大統領に死刑求刑。軍部への不満を反らす見せしめか』(2012/01/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244591656.html

『エジプト騒乱の続章の幕開けか。暫定統治の軍と、イスラム原理主義の衝突』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236099759.html

『エジプトの、新たな混乱が始まるのか。』(2011/02/12)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/185542674.html

『ムバラク大統領は、権力亡者となり暴走しているのか。後ろ盾の米国にも読めず。』(2011/02/11)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/185457860.html

『デモの長期化はムバラクに有利か、反ムバラクに有利か』(2011/02/05)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/184439695.html

『ムバラク大統領の退陣は、新たな対立を産む可能性がある』(2011/02/02)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183849084.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第五部。』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183236111.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第四部。』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183159468.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第三部。』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183150487.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第二部。』(2011/01/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183086820.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第一部。』(2011/01/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183082938.html



posted by しげまる | Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。