2012年06月07日

シリアのシャッビーハ(シャビハ)という狂犬の暴走

以前、シリア騒乱が始まった頃、これはリビア化するのではないかと書いた。

『リビア化するシリアの弾圧とアサド大統領の強硬姿勢』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236176084.html

そして、そもそも一体どのような経緯でシリア騒乱が始まったのかも調べてみたのが以下の投稿だった。

『シリアで何が起きているのか。シリア騒乱への経緯。』(2011/11/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/233918198.html

その後、暫く追いかけていたのだが、本業や本の執筆で忙しくなり、すっかり(他のニュースも含めて)疎くなってしまっていた。

さて、久しぶりにニュースを見ると、シリアの状況は悪化している。ますますカダフィ末期を思い出してしまう。

6日には、シリア人権監視団の発表では、中部ハマ近郊のクビールで女性や子供たち78人(少なく見積もった数字らしい)が殺されている。シリア反体制派「国民評議会」の発表では100人以上殺されたのだとも言う。

殺したのは、政府軍やシャッビーハ(シャビハとも)だという。シャッビーハとは何者か。いくつかのニュースを見ても、答えは見つからなかった。ただ、政府支持派の民兵組織だという。

しかしその姿は一般市民と変わらないのがやっかいだ。記事最後の動画を見ていただくと分かるが、全く市民と区別が付かない。

さて、反体制派は、この度のクビールでの殺害を、5月下旬の中部ホウラでの大陵虐と同様、アサド政権による虐殺だとして非難している。このホウラでの大虐殺にもシャッビーハが関わっていると言われている。

目撃談によると、この度のクビールでの虐殺は、まず政府軍が砲撃し、その後に武装したシャッビーハが銃やナイフで市民を殺しまくったのだという。

何とも恐ろしいでは無いか。自分たちと見分けの付かない者どもが、近づいて来たかと思うと、自分の体に刃物を突き刺したり、銃で撃ち抜いたりしたというのだ。

国際社会はアサド政権への非難を強めるだろう。

米国のガイトナー財務長官は、反体制派への支援国会合でアサド退陣への圧力を強める協力を求める演説をした。

「アサド政権に対し、できるだけ早く、そして効果的に最大限の金融制裁を課すことが我々の任務である」

国連とアラブ連盟の合同特使であるアナン前国連事務総長は、この停戦が絶望的となった状況に対応するために、「連絡調整グループ」を作り、アサド政権に圧力を与える案を検討し始めたという。

この「連絡調整グループ」は、国連安全保障理事会の常任理事国の5カ国に、周辺国を加えたものになるという。

また、シリア人権監視団などは、国連シリア監視団(UNSMIS)に対して、速やかに現地での調査を行う様に要請した。

この虐殺が行われた同じく6日、トルコのイスタンブールでは、クリントン米国務長官やトルコのダウトオール外相らを含む米欧、中東諸国の閣僚等が協議を行っていた。

そこでは、アサド政権から反体制派への権力移行策が協議されていたという。

が、具体的な行動指針は出なかった模様で、とりあえず15〜16日に改めて会合を開く、ということの合意にとどまった。

その間にもシリアでは、虐殺の犠牲者が増えるかもしれない。そう思うと、ずいぶんとのんきにも思える。

ただ、アサド政権への厳しい措置を打ち出すのでは無いかと予想されている。

さて、上記の様な状況が報告されているクビールでの虐殺が、シリア国営メディアでは、ずいぶんと扱いの異なる事件として発表された。

「テロリストが潜伏していた村を政権側の勢力が掃討し、テロリストはすべて死亡した。政権側では2人が犠牲になった」

すなわち、殺されたのは全てテロリストだったと主張している。国営メディアの報道では、女性や子供もテロリストだったということになる。

同じ事を、シリア国民評議会のスポークスマンであるモハメド・セルミニ氏は言う。

「女性20人と子供20人を含む100人が殺害された」

さて、どちらが真実か。多くの人達が、後者を真実とみているだろう。

シリア人権監視団のラミ・アブドル・ラーマン代表も述べている。

「女性と子供を含む数十人が死亡したのは確実だ」

国際社会は、シリアが内戦に突入することを懸念していると言うが、これは既に内戦ではないのか。

何しろ国連の推計でも、シリア政府側の弾圧あるいは政府軍と反体制派との戦闘などによるシリアでの死亡者は、既に1万人を超えているというのだ。

繰り返しになるが、シリアには、シャッビーハ(シャビハ)という達の悪い集団が跋扈している。

彼らに関する情報はまだ少ない。ニュースでもあまり語られていない。

このシャッビーハとは、幽霊を意味する呼び名だそうだ。彼らはアサド家から資金提供を受けている武装集団、というより暴力担当の構成員だ。

しかも彼らがアサド家から与えられた権限は、たとえ武器を持っていない丸腰の市民であっても、アサド政権を批判する人々に対しては何をしても良いのだという。

実際、この記事の下の動画を見ていても分かるが、彼らが市民に暴力を振るっても、警察はとがめることをしない。

また、シャッビーハを構成しているのは、アサドの傭兵だとも言われている。

シャッビーハは、アサド家が放った、狂犬だ。市民に紛れ込んでしまえる分、軍隊よりも達が悪いと言える。まさに「幽霊」だ。

以下は、2012年1月6日に、首都ダマスカスで「シャビハ」が反政府民間人を強引に拉致する様子を写したものだとされている。が、真相は確認できなかった。




以下、これまでのシリア関係の投稿です。

『撤退どころか越境し始めた。シリア軍の暴走が止まらない』(2012/04/10)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/263642669.html

『シリアに対し、一枚岩になれないアラブ連盟』(2012/04/01)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/261615315.html

『シリアのアサド政権を維持させたいロシアの思惑』(2012/02/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/250749829.html

『国際社会による軍事介入の可能性が高まるシリア政府の強硬姿勢』(2012/01/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/248074698.html

『シリアの自爆テロは、反体制派か、アサド政権の自作自演か』(2012/01/08)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244957285.html

『シリアで任務についたアラブ連盟の監視団。しかしどうにも怪しい。』(2011/12/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/243414862.html

『シリアの報道は事実か?あまりに狂気を帯びた惨状が報じられている。』(2011/11/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/237704569.html

『リビア化するシリアの弾圧とアサド大統領の強硬姿勢』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236176084.html

『シリアで何が起きているのか。シリア騒乱への経緯。』(2011/11/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/233918198.html



posted by しげまる | Comment(2) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
シャッビーハについては、Wikipedia の記載に疑問が提示されています。(アラブの春の正体 重信メイ 角川書店)
シリア内戦自体が、「国外の」反政府勢力と実際の国内の反アサドあるいは改革要求派と別行動なのは事実なので、欧米のメディアとアルジャジーラを信じるのは危険かもしれません。
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201208180000/
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201206080000/
Posted by 通りすがり at 2012年11月13日 23:00
通りすがりさん、コメントありがとうございます。

そうですね、私もこの記事を投稿した後、どうもシリアの状況は、報道されているものとずいぶんと異なって居るのでは無いかと疑問を強くしています。

特に欧米メディアの報道(日本も含めて良いと思いますが)は、操作されているように思えてきました。

また、情報がありましたら教えてください。
Posted by 管理人 at 2012年11月14日 10:03
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