2012年04月01日

シリアに対し、一枚岩になれないアラブ連盟

シリア軍は撤退しない。

30日夜、シリア外務省報道官は国営テレビで語った。

「治安が回復して日常生活が取り戻されればシリア軍は都市部から撤退する」

つまり、反体制派が活動を停止しない限り、軍は撤退しないと言っている。

多くの市民の殺戮は続けておきながら、同外務報道官は続けた。

「軍は武装勢力による攻撃から一般市民を守る目的で展開している」

さらに、約束しておきながら実行しないことが世界中に知れ渡っているシリア政府は、アナン前国連事務総長との調整には「前向きに協力する」と言っているが、どうせ行動には示さないだろう、と世界は見ている。

そんなシリアの内乱状態を沈静化すべく、29日にはアラブ連盟がなんとそれこそ治安が悪いイラクのバグダッドで首脳会議を開いた。

シリア沈静化の具体策を模索すことがテーマになった。

協議の内容には、アナン前国連事務総長が示す限定的な停戦他、欧米の武力介入の是非についてまで討議されたという。

アナン前国連事務総長は、国連とアラブ連盟の合同特使という肩書きが付いている。そのアナン前国連事務総長が示す仲介案の主な事項は、

・負傷者搬送のための毎日2時間の停戦実施
・人口が密集する都市部からのシリア軍重火器や兵力の撤収
・政治犯の釈放

となっている。いずれも実現が難しい状況だ。

しかしアサド大統領は29日に、これらの仲介案をあっさりと受け入れる表明を行った。本当なのか。

シリアはこれまで幾度も約束を実行していない。

現に、この表明があった同日も、政府軍は反体制派勢力と武力衝突を行っており、シリア北西部のイドリブなどで、23人(内民間人14人)が死亡するという事態に至っている。

人が死に続けているではないか。

そしてアラブ諸国間でもシリアへの対応の方針は分かれている。イスラム圏というのは非常にやっかいで、どうしてもシーア派対スンニ派の構造を超えることができない。

サウジアラビアやカタールはアサド政権を敵視している。それは両国が対立するイランとアサド政権が同盟関係にあるためだ。そのため、両国は、あくまでアサド政権の転覆が解決策だとしている。

一方、エジプト、アルジェリア、イラクは、アサド政権の温存を主張している。それは、アサド政権が崩壊すれば、今度はスンニ派とシーア派の対立が深まってしまうことを予想しているためだ。

このように、アラブ連盟も決して一枚岩ではない。

さて、アラブ連盟が首脳会議を開いたここイラクは、サダム・フセイン政権が崩壊すると、シーア派が政権を取っている。その意味では、今回のアラブ連盟首脳会議は、初めてシーア派が主催したことになった。

しかしイラクの治安はまだ危険な状態にある。現に首脳会議が行われた29日、その会場の近くにあるイラン大使館付近で迫撃砲らしき爆発が2度起きている。

遡ること20日には、国内10都市以上で爆破テロが連続して発生した。これで280人以上が死んでいる。

イラクはまだこんな状態だ。なぜ、このようなところで首脳会議を開いたのか分からない。

その危険な首脳会議に、潘基文国連事務総長が出席していた。首脳会議が仲介案を実行すべきと一致したことにコメントした。

「即座に実行する必要があり、もはや時間はない」

アラブ連盟のアラビジム局長もこの仲介案の実行をシリア政府に促した。

また、開催地イラクのマリキ首相は、

「(武力衝突が続くようであれば)外国からの軍事介入に繋がる」

と第二のリビア、いや、イラクでの自分の経験を警戒しているのか。

しかし一枚岩ではない首脳会議では、チュニジアのマルズーキ暫定大統領は主張した。

「アサド氏が退陣する以外に解決策はない」

これはサウジアラビアやカタールと同じ主張だ。

確かにアサド政権が退陣せずに、このまま強硬な姿勢を崩さなければ、欧米の軍事介入の可能性も出てくる。

このサウジアラビアやカタールが主張するアサド政権打倒への意向に対し、やはりイラクのマリキ首相は反論する。

「シリア反体制派への武器供与は、地域の代理戦争を誘発する」

一理ある。

しかし、所謂湾岸諸国は、シーア派国家のイランと友好関係にあるアサド政権をつぶしておきたい。そのため、湾岸諸国はシリアの反政府勢力に軍事面での何らかの支援を行う可能性がある。

それに対し、イラクのマリキ首相の反発は、やはりアサド政権が倒れれば、シリア内の宗派対立が新たな内戦を始めるであろう事を予想しているためだ。

以上の様な、決して一枚岩になれないアラブ連盟の会議の結論に対して、米欧は冷ややかだ。

クリントン米国務長官は言う。

「アサド政権は、約束はするがその通り履行してこなかった過去があり、今回の調停案は直ちに履行されなければならない。アサド大統領が誠実かつ真剣であるか否かは、彼の言葉ではなく行動で判断する」

英国のヘイグ外相も言う。

「(調停案は)誠実かつ真摯に履行されれば重要な第一歩だが、シリア政権は過去の約束をきちんと履行してこなかった」

米欧はアサド政権を信用していない。

さて、27日の国連の発表によると、アサド政権による反体制派弾圧での死亡者はとうとう9000人以上に達したとのことだ。反体制派側は、いやいや既に1万人以上だと発表している。

一枚岩になれないアラブ連盟は、これを止めることはまだ出来ない。


これまでのシリア関係の記事は以下の通りです。ご参考ください。

『シリアのアサド政権を維持させたいロシアの思惑』(2012/02/06)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/250749829.html

『国際社会による軍事介入の可能性が高まるシリア政府の強硬姿勢』(2012/01/23)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/248074698.html

『シリアの自爆テロは、反体制派か、アサド政権の自作自演か』(2012/01/08)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244957285.html

『シリアで任務についたアラブ連盟の監視団。しかしどうにも怪しい。』(2011/12/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/243414862.html

『シリアの報道は事実か?あまりに狂気を帯びた惨状が報じられている。』(2011/11/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/237704569.html

『リビア化するシリアの弾圧とアサド大統領の強硬姿勢』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236176084.html

『シリアで何が起きているのか。シリア騒乱への経緯。』(2011/11/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/233918198.html



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