2012年02月06日

米国もイランも大統領選を控えて似た動きをする

5日、オバマ米大統領はテレビのインタビューで、イスラエルがイランの核開発計画を阻止するために、単独で先制攻撃を仕掛けるのではないか、との憶測に対し、イスラエルはまだそのような決断をしていない、と答えた。

このインタビューは恒例のもので、NFL(米プロフットボールリーグ)のスーパーボウル(王者決定戦)直前に放送されたものだ。

オバマ大統領は、米国がイスラエルと共に、イランの核問題については外交的な解決を目指していると語った。さらに、イランは国際社会からの「前代未聞の」制裁を受けて参っているはずだと述べた。

また、ペルシャ湾で軍事行動を取れば、原油価格に「破壊的な」影響が出ることを指摘した。

但し、軍事介入を完全には否定しなかった。

また、同インタビューで、オバマ大統領は、2009年に答えた内容を振り返った。

「経済政策の成果が上がらなければ1期限りの大統領になる」

この自分の言葉に対して、

「米経済は改善している」

と主張し、

「これまでの成果を投げ出すわけにはいかない。2期目でやり遂げる必要がある」

と続けた。これは、今年の秋に控えている大統領選に向けて、共和党候補者らが経済政策の効果が無いことを攻撃していることへの反論だ。

また、イランが米国の制裁に対して報復攻撃をするのではないか、との質問には、

「現時点で、そのような意図や能力を示す証拠は見当たらない」

と答えた。

上記の様なインタビューが行われた背景には、米紙ワシントン・ポストが、米バネッタ国防長官が、イスラエルがイランの核施設に対して今年の4月〜6月に踏み切るのではないかとの分析をしたと、報じたことがある。

そしてイスラエルは、この短期的、限定的な攻撃を行った後、国連の仲介で停戦するというシナリオを持っているというのだ。

しかし、オバマ大統領は、否定した。

一方のイランは、硬軟両面の姿勢を示す外交を行っている。核開発問題では、IAEA(国際原子力機関)の調査団を受け入れることで、疑惑を晴らすことへの協力を示している。

その一方では、EU(欧州連合)に対する原油輸出停止警告を発するという強気の姿勢も示している。

イランは、常に外部に敵を想定しておかねばならない事情もある。1979年のイスラム革命後、イランは国際的には孤立した。その結果、経済状況がよろしくない。

GDPの成長を見ると、一見めまぐるしい上昇を果たしているが、その規模は神奈川県よりも小さい(30兆円未満)。

しかし、成長と共にインフレがあり、インフレなのに失業率が高いという解決しにくい状況がある(日本はデフレによる失業率上昇が起きている)。インフレ率は2008年には24%を超えた。

失業率は2008年で12%と公式推定されているが、実際はさらに11%高いと言われている。

要するに、現体制は、経済的に成功しているとは言えない。国民にはその不満があるのではないか。

アフマディネジャド大統領は、3月に国会選挙を控えている。反大統領派には、強硬派と言われるラリジャニ国会議長らが主導権争いに打って出ている。

しかもアフマディネジャド大統領は、イランの経済的、外交的行き詰まりを打開するために、なんとイスラム体制の変革まで考えていると噂されている。

それに対し、反大統領派は、体制の変革を恐れ、国内引き締めに躍起になっているという。

いずれにせよ、イランは欧米との対決姿勢を示すことで、国内の不満を外部に向けたい。

それに対し、米国も11月には大統領選を控えている。こちらも反イラン色を全面に出すことで、米国内の不満を外部に向けたい。

オバマ大統領は微妙な道を歩んでいる。過激なイラン攻撃は原油価格を高騰させてしまうだろう。かといって、譲歩すれば、野党から弱腰外交を責められる。

米国もイランも、大統領選を控えて、国内の不満を外部に向けたい、ということでは利害が一致しているという、奇妙な共通点を持った状態にある。



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