2012年01月23日

国際社会による軍事介入の可能性が高まるシリア政府の強硬姿勢

民衆への弾圧を続けているシリア政府が、ますます硬化してきているようだ。

20日、アラブ連盟はエジプトのカイロで外相会議を開いた。その結果、シリアのアサド大統領に対して、全権を副大統領に委譲し、2ヶ月以内に挙国一致の新政権を発足することを求める声明を発表した。事実上のアサド大統領への退陣要求である。

アラブ連盟にとって、シリアに対する権力移行の工程表を初めて示したことになる。

しかし翌日、このことに対してシリア国営テレビからシリア政府当局者の言葉として流されたのは、以下の様なものだった。

「シリアは(受け入れを)拒否する。言語道断の内政干渉だ」

アラブ連盟はシリアに対する権力移行の工程表の声明で、新政権による議会選などを実施することも要請している。その上で、この工程表実現の支援を、国連安全保障理事会に求めた。

同時に、アラブ連盟は昨年12月からシリアの政府軍と反体制派の武力衝突防止のために派遣している監視団についても、要員の増加と活動期間の1ヶ月延長を決めている。(派遣は19日で期限切れだった)

しかしサウジアラビアのサウド外相は、この監視団について、自国の要員は引き上げると発表した。

「(暴力停止などを盛り込んだ連盟の仲介案を)シリア政府が全く実行していない」

それが理由だという。

確かにアサド政権はアラブ連盟との合意を反故にし、監視団の役割が果たせない状態になっていた。そのため、監視団を歓迎した反体制派からも監視団に対する疑問視の声が上がっていた。

政府による弾圧は継続されており、LCC(反体制団体の地域調整委員会)によれば、21日だけでも少なくとも59人が死亡しているという。また、北部イドリブの国立病院には、身元不明の遺体が30体見つかった。他にもバスの爆発で16人が死亡するなど、暴力は収まらない状況だ。

ともかく、アラブ連盟の声明に拒否を示すことにより、アサド大統領は、アラブ諸国で孤立した形になった。

アラブ連盟のエルアラビジム局長は、シリアの対応を非難した。

「過度の武力が内戦につながる」

一方、国連安全保障理事会ではロシアの出方が注目されている。ロシアはシリアと近い関係にあるためだ。アラブメディアの一部では、シリアとロシアが水面下で協議しており、アサド大統領に2014年まで継続させた上で、退陣する案が出ているなどとも報道されている。

しかしそれでは長すぎる。

2011年3月に始まったシリアの反政府運動から現在まで、既に5000人以上もの死者がでていると言われているのだ。しかも離反兵により、反体制派にも本格的な武力が備わりつつある。

アラブ連盟の外相会議後、カタールのハマド外相は語った。

「(連盟として)軍事介入を目指しているわけではない」

しかし、アサド大統領は連名の申し出を拒否している。この状況が続けば、国際社会による政権打倒への介入の可能性が高まる。

その場合、武力による解決もありえるだろう。反体制派武装組織の「自由シリア軍」は、国際社会による軍事介入を求めている。

このままでは、シリアへの軍事介入の可能性が高まっていく。


以下、シリア関係の投稿記事です。ご参照ください。

『シリアで何が起きているのか。シリア騒乱への経緯。』(2011/11/07)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/233918198.html

『リビア化するシリアの弾圧とアサド大統領の強硬姿勢』(2011/11/20)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/236176084.html

『シリアの報道は事実か?あまりに狂気を帯びた惨状が報じられている。』(2011/11/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/237704569.html

『シリアで任務についたアラブ連盟の監視団。しかしどうにも怪しい。』(2011/12/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/243414862.html

『シリアの自爆テロは、反体制派か、アサド政権の自作自演か』(2012/01/08)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/244957285.html



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