2011年12月30日

シリアで任務についたアラブ連盟の監視団。しかしどうにも怪しい。

29日、シリアの首都ダマスカス郊外を、騒乱回避の調停に当たるはずのアラブ連盟の監視団が訪れた。

しかし、その最中にも、治安部隊はデモ隊に実弾を発砲している。そのため、35人が死亡したとされている。

「シリア人権展望台」というロンドンを拠点とする反体制組織によると、アラブ連盟の監視団がダマスカス郊外ドウマの市庁舎に到着したとき、その地のモスクに集まっていた約3万人のデモ隊に向けて、治安部隊が発砲したらしい。

また、LCCという別の反体制組織によると、ドウマでは7人死亡、負傷者数十名、そして拘束された者もいるという。

監視団はドウマの病院も視察している。その際、住民が多く集まり、監視団を迎えた。

このアラブ連盟の監視団がシリア入りした目的は、武力弾圧の注視や治安部隊の撤収、そして拘束された者たちの釈放だ。だが、どうも様子がおかしい。それについては後述する。

ともかくも、監視団は中部ホムス、南部ダルア、北西部イドリブ、同じくハマ、そしてダマスカスを訪れて任務に当たっている。

しかし、治安部隊は国民を殺し続けている。

前後するが、27日に監視団が中部ホムスや西部ハマに到着した日、治安部隊はデモ隊に発砲し、子供二人を含む39人を殺害している。

ホムス市内北東部のカリディア地区にはアラブ連盟の監視団到着の情報を得た人々約35000人が同地区の時計広場を目指して行進した。

何とか状況を知らせねばならない、政府の暴挙を訴えようとしているのだ。前日にはホムス市内で14人が死んでいる。治安部隊の攻撃によるものだ。

一方政権側も監視団にアピールしている。彼らの到着と同時に、戦車11台は撤退させるという動きを見せた。

アラブ連盟監視団の団長が首都ダマスカスに戻ると、住民達が監視団に駆け寄ったが、それを治安部隊が威嚇射撃している。

と、このように、どう見ても監視団にはシリアの惨状が見えているはずだ。監視団が26日にシリア入りしたからも、3日間で70人もの住民が殺害されているというのだ。

しかしこのアラブ連盟の監視団は奇妙だ。監視団には政府側の警護要員が同行しているため、住民は容易に近づけない。

そして、反体制派からは、この監視団の団長に対して、信用できない人物だとの指摘がされている。

それは、このダビ監視団長が、スーダン軍情報機関の元トップであり、人権侵害に関与していたと指摘されているためだ。

しかも監視団が到着しても、あるいは訪れても、治安部隊の攻撃は止まない。どうしたことか。

ある活動家は監視団に怒りをぶつけた。

「あなたたち(監視団)がホムスに到着した昨日にも15人が死んでいる。何も変わっていない」

そして最も奇妙なのは、この様な惨状の最中で1日目の調査を終えたダビ団長が、以下のコメントを発したことだ。

「何も恐ろしいことは見当たらなかった」

どうしたらこのような発言になるのか、全く分からない。このコメントに対して、フランス政府がコメントした。

「このように判断するのは時期尚早だ」

尤もだ。そしてフランス政府は、監視団の調査に制限を与えないようにシリア政府に促している。

どうもこのアラブ連盟の監視団はいかがわしい。

その一方で、シリアの国営テレビは、シリア政府が755人を釈放したと伝えた。

しかし、数千人が拘束されたままなのだという。これに対して人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは言う。

シリア政府は拘束者を監視団が入ることができない軍事施設に移送したと。

アラブ連盟の監視団は、果たして信頼できるのか?



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