2011年11月27日

欧州債務危機、とドイツのジレンマ

欧州の債務危機が高まっていることが、目白押しとなっている欧州の国債市場で顕わになってきている。

25日には、イタリア国債の入札が予想通り不調。2年債の落札利回りは7.8%と跳ね上がった。

しかもその2日前には、欧州一財政が健全だとされていたドイツ国債に、なんと買い手が付かない「札割れ」が起きてしまった。60億ユーロの募集に39億ユーロしか応札がなかったのだ。実は札割れ自体は決して珍しいことではないのだが、その不足額の大きさが衝撃と成った。

この衝撃は世界を駆け巡り、「ドイツショック」という用語と成って取り上げられている。

ドイツで札割れが起きたのだ。もはや他の欧州諸国の国債がどういう道をたどるか、想像は容易になった。フィンランドやオーストリアなどの安全資産神話も崩れ、国債が軒並み売られている。

また、リーマン・ショックの引き金を引いた輩である、無責任な格付け会社は、このたびも市場にパニックを呼び込もうとしている。

25日には、ベルギー国債の格下げが発表された(S&PでダブルA)。しかも見通しは「ネガティブ(S&P)」とされた。これは痛い。28、29日ベルギー国債の入札が控えているからだ。

週明けからは各国の国債入札が控えているため、市場は異様な緊張感で満たされていることだろう。欧州危機がユーロを超えて、中・東欧に広まっていることが印象づけられようとしている。

何しろ、欧州の債務危機については、解決策が見えないことで、市場では恐ろしくて国債を買えなくなっているのだ。それを格付け会社が煽っている。

そしてドイツショックを始めとする国債市場の不安要素は、世界中の株式市場(主要20市場)も下落させている。

最も下落率が高かったのはイタリアだ。2位にはスペインが続いた。ドイツがユーロ共同債構想に後ろ向きであることと、ハンガリー政府がEUとIMFに金融支援を要請したことなどが特に投資家心理を冷え込ませたと言われている。

下落率が最も低かったのは中国だった。これは、政府の金融緩和政策への意欲が好感されたのだろう。

南アフリカも、自動車や白物家電などの消費が旺盛であることが、下落率を緩和させたらしい。

ちなみに日本は5日続落だ。まぁ、野田政権の経済政策音痴ぶりを見れば、致し方がないか。何しろ安住淳財務大臣などは、CDSも知らなかったという驚くべき不勉強さが露呈したというのだ。

一般人がCDSを知らないのは珍しいことではないが、財務大臣ともある人物が知らなかったでは済まされない。野田内閣の閣僚は、余りに勉強不足が多い。

ちなみに、CDSについては、以下の投稿で紹介したので、参照されたし。

『EUは銀行の自己資本比率増強で金融危機を封じ込められるのか』(2011/10/27)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/232316019.html

ただ、12月2日の米雇用統計を皮切りに、米国の経済指標が相次いで発表される。ここで米国経済の好調さが示されれば、投資家心理の冷え込みにブレーキがかかるのではないか。

──というのは、甘いらしい。市場関係者は、「おそらく投資家の目は、欧州債務問題に釘付けになってしまう」ということで、僅かばかりの米国経済指標の動きには、反応しないと言われている。

外為市場はどうなっているか。

25日、ユーロは対ドルで下落し、10月4日以来の安値を付けている(一時は1ユーロ1.3210ドル)。勿論欧州債務危機の拡大不安による。

対円ということでは、一時102.46円の安値を付けている。

市場関係者は、欧州債務危機の打開案が全く見えていないことを懸念している。

その結果、ドイツショックが欧州を越えて、世界規模の信用収縮をもたらす可能性も高まっている。

ドイツショックの札割れの大きさには、一つはドイツ自体の金融機関が、ドイツ国債への投資を控えたことが大きかったと言われている。

また、欧州投資銀行や独復興金融公庫といった公的な金融機関の債権も売られやすくなっている。

つまり、ドイツを始めとする主要国の銀行が保有している資産価値が下がり、不良債権が拡大することの不安が高まっている状態だ。

非常にまずい。懸念材料が雪だるま式に膨らみ始めているのだ。これを止めるのは容易ではない。

ひとつは、ECB(欧州中央銀行)が、(一時的にせよ)債務危機を迎えた国の国債を買い支えるという手段がある。そのことで、とりあえずの信用不安をぬぐうという方法だ(これには実務上の問題があるが、後述したい)。

もう一つは、EFSF(欧州金融安定基金)の規模を拡大して、銀行への資本注入を進める方法などもある。

いずれにせよ、ドイツの動向が重要になってくる。何しろ、ドイツはユーロの恩恵を受けた数少ない国だからだ。

ところが独仏伊3国の首脳が結束を演じたにもかかわらず、ドイツのメルケル首相はユーロ共同債構想には後ろ向きと成っている。

経済シンクタンクのリーデファインのマネジングディレクター、ソニー・カプール氏が言うとおりだというのに。

「問題を抱えた国を支援するためのECBによる無制限の関与以外は、どんなものも現在のパニックを食い止めることはできないだろう」

ベルギーのディディエ・レインデルス財務相も取材に答えている。

「(ECBは)今よりもっと重要なプレイヤーになるべきだ」

もはや、ECBは欧州債務危機を迎えた各国にとって、「最後の貸し手」としての態度を示すしかないではないか、と言われているわけだ。

ただ、ECBが「最後の貸し手」になるためには、二つの障害があると言われている。フランスのフランソワ・バロワン財務相は言う。

「(ECBが最後の貸し手になることについては)欧州の条約はそれを認めていないし、ドイツが望んでいない」

ドイツがユーロの恩恵を受けたのは、ドイツの輸出先として、ユーロ圏が受け皿になったためだ。その受け皿が破綻してしまえば、ドイツ自体が破綻する。

それにもかかわらず、ドイツはユーロ共同債構想に反対している。

ドイツは(ユーロを増刷することで引き起こされるかもしれない)極度なインフレ恐怖症に陥っている、というのが一つの理由として考えられている。そしてもう一つは、国民感情として、自分たちの勤勉さで蓄えた金(血税)で、放蕩を続けた国々の国民を救うことへの(ドイツの有権者たちの)反発だとも言われている。

しかし市場はECBに期待している。なぜなら、ドイツがいかに反対しようとも、ECBの理事会においては、ドイツも他のメンバー同様に1票しか持っていないということがあるからだ。ECBの1票は、決してGDPの規模に左右されない。

つまり、いざとなれば、ドイツの反対を押し切ることができるだろう、という期待だ。

ただ、前述したフランスのフランソワ・バロワン財務相の言うところの「欧州の条約はそれを認めていない」というところはどうなるか。

これは「マネタリー・ファイナンシング」(中央銀行による各国政府への資金供給)の禁止条項のことを示している。この禁止条項により、ECBが各国から直接国債を購入することができないとされている。

ただ、これには実は素朴な抜け道があった。「直接」購入しなければよいのだ、という解釈だ。要するに公開市場への介入という方法で、しかもユーロ圏内の国債利回りの格差是正のため、という名目で介入できるという解釈だ。

勿論、この解釈に乗っ取ってECBが行動するためにも、ドイツの支持が欲しいところだ。

そこでメルケル首相に話が戻る。彼女は、自国ドイツの経済界を説得せねば成らないからだ。

11月14日、メルケル首相は、与党であるキリスト教民主同盟の党大会で、語った。

「ユーロが挫折すれば、欧州も挫折する」

しかしこの日、ドイツ連銀のイェンス・バイトマン総裁は、

「ECBが意図的に国債利回りを抑えることは違法であり望ましくない」

と語り、ECBによる欧州債務危機抑制の可能性、つまり、ECBが「最後の貸し手」になる道を否定している。

イェンス・バイトマン総裁は、債務危機に陥った国々の各政府が投資家の信頼を回復するために大胆な改革を断行せよ、と主張しているのだ。つまり、ECBによる救済で甘やかしてはならない、という厳しい態度を示しているのだ。

しかも、その国々の代表的な一つであるイタリア出身であるECB総裁のマリオ・ドラギ氏すら、ECBが最後の貸し手になることを否定している。母国はどうなるのか。

そしてドイツの経済界も、ECBによる大規模な救済を否定している。救済は、各国政府の信用回復のための行動を鈍らせてしまうというのがその理由だ。

ドイツ人は想像する。ユーロ共同債により債務危機のリスクを共同負担したとき、南欧諸国は、再び浪費を始めるだろう、と。

ここにユーロの限界が見えるではないか。ユーロには、ネイションといった感覚が無いため、支え合うことが難しいのだ。

すなわち、ユーロは社会主義のように、おおいなる経済実験の失敗として終わるのではないか、という予感をさせる。

結局、ユーロにより利益を享受したドイツが、ユーロの危機を止められない状況に陥っているのだ。

繰り返そう。欧州債務危機の拡大を抑制する方法は、今のところ二つが候補に挙がっている。

一つは欧州の各国政府が、互いの債務について連帯責任を負うことだ。

そしてもう一つは、ECBが国債を買い入れることだ(まぁ、これも連帯責任ではある)。つまり、ECBが「最後の貸し手」になる方法だ。

そしてこれらの方法について、ドイツは後ろ向きだ。前述したモラルハザードに対する警戒心と、もう一つは国債を買い入れる(要するに通貨が発行される)と、インフレを招くという恐怖があるからだ。

しかしインフレは起きるのだろうか。インフレが起きるためには、過剰な需要が無ければ成らない。現在の欧州に需要は少ない。

ドイツは、このジレンマから逃れられるのか。





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