2011年11月20日

エジプト騒乱の続章の幕開けか。暫定統治の軍と、イスラム原理主義の衝突

エジプトの騒乱はまだ、終わってはいない。

19日、エジプトの首都カイロでデモ隊と警官隊が衝突した。

デモ隊は、カイロ中心部のタハリール広場に座り込みを行っていた。それを強制排除すべく警官隊が催涙弾やゴム弾を使った。

この衝突により、1人が死亡し、676人が負傷したと伝えられている。

デモ隊は何を要求していたのか。ムバラク政権は既に崩壊している。しかし、暫定統治を行っている軍最高評議会に対し、民政移管を急ぐことを要求していたのだ。

しかし、既に28日から人民議会(国会)選が行われることが分かっているというのに、民衆は何を危惧したのか。あるいは何者かにそそのかされたのか。

それを見てみたい。

カイロでのデモ隊と警官隊の衝突の翌日、北部アレクサンドリアでも衝突があった。こちらでも1人が死亡し、負傷者が出ていることが伝えられている。

新たなデモが広がりつつあることは確かだ。

しかしムバラク政権崩壊後の初の選挙である人民議会選挙は28日から行われる予定だ。これを民衆は待てなくなっていた。

前後するが、カイロでの衝突の前日(18日)には、タハリール広場でデモが行われた。

そのデモの中心にいたのは、イスラム原理主義組織のムスリム同胞団の支持者らだった。どうやら、この辺りが扇動しているようだ。

そしてそのデモ隊が翌日まで座り込みを行い、前述の警官隊との衝突に発展したのだった。

群衆は叫んだ。

「タンタウィ(軍最高評議会議長)を打倒せよ」

ムスリム同胞団が後ろで煽っているようだが、民衆が28日の人民議会選挙を待てなかったのは、暫定統治をしている軍部が、選挙の前に、新憲法の骨格を固めようとしている、という情報だった。

既に若者層は、軍の暫定統治に不満を抱いている。暮らしぶりが改善されていないからだろう。

その若者達がデモに加わり、デモ隊は瞬く間に5万人ほどに膨らんだ。

こうなるとデモ隊が過激になる。治安部隊に石を投げ、車両を燃やすなどの暴動に発展した。

ムバラク政権が崩壊した直後は、民衆は軍の暫定統治を歓迎していた。

しかし、どうやらその軍も、自らの利権獲得を民政への移行よりも優先しているといった姿勢を民衆は感じ始めた。

その情報は、ムスリム同胞団がリードしているかどうかは分からないが、だんだん懸念を強くさせ、軍が民主化を逆行させているという情報に変わっていった。

そのため、民衆は選挙を待たずにデモを行った。

「軍政を倒せ」

「国家の上に軍を置くな」

民衆は大統領選を急ぐことを主張している。

軍部が自らの利権獲得を優先している、と書いたが、実際、暫定内閣は、軍に対し、軍事予算などに対する特別な権限を与える新憲法の指針を示したのだ。

今月の1日、セルミ副首相は「憲法の基本原則」を提示して政党各派に承認を求めたが、そこには、

「軍事予算と軍の方針は、議会の承認を必要としない」

などと盛り込まれていた。

これを認めれば、新憲法が制定されたとしても、軍部が特権的な地位を維持できてしまう。

これに対して、イスラムとリベラルの両勢力が批判を行っていた。

この状況を民衆は、民主化からの逆行だと見た。そのためイスラム原理主義を支持するようになっている。

さらに民衆は、イスラム国家の樹立を望むようになっている。

エジプトの民主化は、イスラム主義に向かっている。


以下、これまでのエジプト関係の投稿記事です。ご参考ください。

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第一部』(2011/01/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183082938.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第二部』(2011/01/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183086820.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第三部』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183150487.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第四部』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183159468.html

『エジプト全土にムバラク大統領退陣要求デモの背景:第五部』(2011/01/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183236111.html

『エジプト争乱に指導者が現れるか』(2011/01/31)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183328003.html

『ムバラク大統領の退陣は、新たな対立を産む可能性がある』(2011/02/02)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/183849084.html

『デモの長期化はムバラクに有利か、反ムバラクに有利か』(2011/02/05)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/184439695.html

『ムバラク大統領は、権力亡者となり暴走しているのか。後ろ盾の米国にも読めず。』(2011/02/11)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/185457860.html

『エジプトの、新たな混乱が始まるのか。』(2011/02/12)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/185542674.html



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