2011年07月11日

「埋蔵電力」だけではない。既に電力供給力は余っている

実現にはいろいろと障壁があるのだが、「埋蔵電力」というものがある。

この「埋蔵電力」、以前から話は出ていたが、なんと総量で約6000万キロワットもあるというのだ。これがどのくらいインパクトがあるのかというと、原子力発電所にして40基から50基の発電量に相当する。

ということは、単純にこれらの埋蔵電力が使えれば、既に原子力発電所は不要という結論にいたってしまう。

それでは原発利権者たちが黙ってはいない。だから、電力は足りないのだとキャンペーンが張られるし、埋蔵電力、つまり自家発電能力がありながらも売電するには障壁がある、という状況を維持しようとする勢力がある。

その勢力の代表である経済産業省は、玄海原子力発電所を皮切りに、全国の停止中の原発を再稼働させるつもりだったが、前回投稿した通り、ストレステストというケチが付いてしまった。

このままだと、既に停止している35基の原発に続いて、定期点検により19基の稼働中の原発も停止してしまう。(それを防ぐために、ストレステストが骨抜きになる可能性は高いが。)

そうなると、来年の桜が咲く頃には、日本中の原発が停止しているという状況になる。すわ、電力が足りない、と原発ムラの人々はキャンペーンを張っている。もちろんマスメディアも騒ぐ。

ここにきて、この「埋蔵電力」を再評価しようという発言が出た。

みんなの党の渡辺喜美代表による国会での発言だ。

彼はこの約6000万キロワットの埋蔵電力を使うべきだと提案する。ただ、政府はそのような情報は把握していないとしている。

そもそもこの埋蔵電力をつかわなくとも、原発なしで電力は賄えるという資料もある。元慶大助教授の藤田祐幸氏が調査した発電設備と電力供給量の関係のグラフを参照いただきたい。

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それに、2003年に東京電力では事故や不祥事で17基の原発が停止したが、その際も停電にはなっていない。

また、京大原子炉実験所助教の小出裕章氏は語っている。

「発電所の設備の能力で見ると、原子力は全体の18%しかありません。その原子力が発電量では28%になっているのは、原子力発電所の設備利用率だけを上げ、火力発電所のほとんどを停止させているからです。<中略>それほど日本では発電所は余ってしまっていて、年間の平均設備使用率は5割にもなりません」

つまり、実のところ埋蔵電力すら不要だというのが、電力研究者の間では周知のことなのだという。

しかし、原発利権者たち原発ムラの人々は、原発がないと、こんなに電力が不足しますよ、と電力の調整を行うことができる。

その結果、我々は「原発が停まると、電力不足になってしまう。」と思うようになっている。

実は渡辺喜美代表が提案するよりも先に、浜岡原発が停止した中部電力が「埋蔵電力」について語っていた。

浜岡原発を停止した中部電力は、自家発電設備を持つ管内の民間企業から電力を買い取る方針を表明していたのだ。これが「埋蔵電力」のことである。

中部電力の管内で最大の自家発電設備を持つのは、新日本製鐵の名古屋製鉄所だ。同社の広報センターは言う。

「製鉄の過程で出る熱やガスを利用するもので、発電量は生産量に左右されます。発電した電気は自社工場内でも使用しますので、そのすべてを余剰電力として売電できるわけではない。そして、これまでも余剰電力を中部電力に売ってきました。ですので、それ以上の埋蔵電力≠ェあると思われると困るのですが」(2011年06月12日:フライデー)

実は1995年に、電気事業法が改正され、一部だが電力会社の独占が緩和されている。そのとき、電力供給を行える企業が出てきていた。その一つが前述の新日本製鐵だ。

この自家発電について、環境エネルギー政策研究主席研究員の松原弘直氏はその実態を説明している。

「工場の自家発電施設で最も導入されているのは、重油など化石燃料を使う発電機ですが、油の価格の上昇で、発電するよりも電力会社から買ったほうが安く、ほとんど稼動していなかったはずです」(2011年06月12日:フライデー)

実は現在稼働しているいないを問わなければ、全国の自家発電の内、火力だけを合計しても既に原発54基の電力供給量を上回るという。これに水力などの他の方式を加えると、なんと原発60基に相当するという。

これが眠れる「埋蔵電力」だ。

しかもこの「埋蔵電力」を当てにしなくとも、そもそも国内の火力発電所の最大発電量は約1兆2266億kW/hもあるというデータが、総務省統計局などから発表されている(2008年度)。しかも驚くことなかれ、この発電量は、稼働率が50%の状態なのだという。

原発が発電しているのが約2581億kW/hだというから、全く原発は不要と言えるのだ。

これだけのデータからも、電力会社やマスコミの電力不足キャンペーンが何を意図しているか見えてしまうではないか。

ただ、話を「埋蔵電力」に戻すと、すぐに利用できない問題はある。電力会社の利権だ。ある自家発電設備の保有企業の人物は語った。

「そもそも一つの電力会社が、ある地域の発電も送電も小売も独占するというのは、戦後の復興期だから必要だったシステムです。工業生産が伸び、その電気需要に応えるために必要だったわけです。しかし今の時代に、地域独占が必要でしょうか?」(2011年06月12日:フライデー)

先述した電気事業法の緩和によって、一部の発電と小売りが解放された。しかし制約つきだ。

このとき参入が可能となった電力事業者は、3つのタイプに分かれている。

(1)電力会社に10年以上にわたって1000kW以上供給する契約を交わせる「IPP(卸供給事業者)」。「泉北天然ガス発電所」など。
(2)限定区域に自らの発電設備と送配電設備を用いる「特定電気事業者」。「六本木エネルギーサービス」や「JR東日本」など。
(3)工場や病院など、50kW以上の契約を行う「PPS(特定規模電気事業者)」。「オリックス」や「昭和シェル」など。

先述の自家発電設備保有企業の人物はその障壁について語る。

「このPPSが電気をどんどん作り、市場が活発になれば電気代も安くなるはずですが、電力会社がそれを阻んでいます。PPSは自前の送電設備を持たないため、電力会社の送電網を利用するのですが、その際に『託送料』がかかり、この負担が大きいのです。電力量によって変わりますが、客が支払う電気代の約2割を、託送料として電力会社に支払わなければなりません」(2011年06月12日:フライデー)

発電と送電の分離(発送電分離)によりこれらの障壁は取り払われる。しかし問題もあるという。九州大学大学院電気システム工学部門の合田忠弘教授の指摘は以下の通り。

「発電と送電を分離した場合、あちこちに点在する電源を有効に利用しようとすれば、多くの電気を流せるように送電網を強化する必要があります。しかし、海外の事例を見ると、送電会社はなるべく今の設備を利用して設備投資を控える傾向がある。この投資を誰がどのように行うのかが問題となるでしょう」

つまり、送電会社も民間の自由競争にさらしてしまうと、設備投資をできるだけ行わないことが利益となってしまう。そのため、電気供給の不安定さという問題が発生する。したがって、この部分だけは、国の関与が必要だろう。

ただ、原発が無くても電力を賄える設備が既に電力会社にもあり、その上に自家発電設備を持っている企業にも膨大な「埋蔵電力」があるということは知っておくべきだ。




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