2011年07月04日

レアアースが「レア」でなくなる可能性。

以前、中国がレアアースを外交の武器に使用していることに対し、それが通用しなくなる可能性について投稿した。

『レアアースはいつまでも外交の武器たり得るか?』(2010/10/21)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/166614927.html

しかしこのたびのニュースは上記記事の内容より遙かにインパクトがある。

4日、東京大学の加藤泰浩准教授らの研究グループは、レアアースの巨大鉱床を発見したことを発表した。

レアアースの巨大鉱床が発見された場所は、太平洋の海底だ。このことの詳細は、英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス電子版に同日に掲載される。

調査したのは加藤泰浩准教授と海洋研究開発機構の研究者らで構成するチームで、太平洋の水深3500〜6000メートルの海底から採取された78カ所の堆積物を調査した。

その結果、レアアースの鉱床が発見されたのだ。

加藤泰浩准教授によると、この鉱床に含まれるレアアースの濃度はかなり高い。例えば1キロメートル四方に含まれるレアアースの量は、世界の使用量のなんと約20%を賄えてしまうという。

これは大きな発見だ。この豊富な埋蔵量の鉱床の大半は公海であり、ハワイ沖からタヒチ島周辺にまで分布しているという。

その埋蔵量は、推定で800〜1000億トン!

この量がいかに膨大なものであり、世界経済にインパクトを与えるのかというと、レアアースの陸上の埋蔵量が推定約1億1000万トンということだから、このたび発見された推定埋蔵量はその1000倍(!)に達する見込みがあるということだ。

現在では中国が世界のレアアース生産量の97%も占めている。そのため、彼らが輸出をどう制限するかで価格が変動してしまう。

この状態を打破できるということだ。

ところでどうして加藤泰浩准教授らはこの広大な海の底からレアアースの鉱床を発見したのか。

加藤泰浩准教授らが注目したのは、海底の火山活動だった。このときに放出される熱水がレアアースを吸着しやすいことに注目したのだという。そこで過去に採取された泥のサンプルを分析したところ、高い濃度のレアアースが含まれることが分かった。

例えば「ジスプロシウム」はハイブリッドカーのモーターに使われ、「テルビウム」は液晶テレビに使われている。

ところで、実際にこれらのレアアースを商業ベースで利用可能なのだろうか。

加藤泰浩准教授ら研究チームでは、深海から泥を引き上げる技術上の課題はあるとしながらも、その泥からレアアースを取り出すことは簡単なのだという。そのため、十分に商業ベースで採算が取れるとしている。そして加藤泰浩准教授は言う。

「(多くが公海上にあるので)国際調整を行ってこの資源を開発できれば、中国はレアアース市場を独占的に支配出来なくなる。最終的には日本の経済水域内で見つけることが目的で、その可能性は高いと思う」

非常に有望な発見となるわけだ。特に昨年は、中国が日本へのレアアース輸出量を前年度比60%に抑えるなど外交圧力として利用したことで、日本の産業界はその供給に不安を持ち続けていた。

その結果、多少コストが上がっても、レアアースを中国以外に求める動きを続けてきている。レアアースは決して現在でも中国のみから採掘されるわけではない。CIS諸国(Commonwealth of Independent States)で20%、アメリカで14%あり、中国は30%なのだ。

これらに海底の豊富なレアアースが加われば、中国がレアアースを外交カードとして使うことができなくなる。

今後、実際には公海上の採掘に関しては、国連海洋法条約に基づいた国際海底機構という機構が人類共有の財産として管理することになる。これまでにも2000年にハワイ沖の「マンガン団塊」の調査権が各国に割り振られている。

但し、各国の領海内に埋蔵されているレアアースは、その国ごとに採掘することになるので、日本の領海にも埋蔵されている可能性があることは、資源の乏しい日本には非常に重要なことになる。

このたびの発見は、日本だけではなく、世界にとって大きな発見となるだろう。





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東大、新しいタイプのレアアースの大鉱床を太平洋で発見
Excerpt: 1.発表者:加藤泰浩(東京大学大学院工学系研究科 准教授)2
Weblog: ネット社会、その光と影を追うー
Tracked: 2011-07-04 23:32
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