2011年07月03日

ドミニク・ストロスカーン氏を巡る陰謀説

ホテルの従業員に性的暴行を加えたとして逮捕、起訴されていたIMF(国際通貨基金)前専務理事のドミニク・ストロスカーン被告(62歳)が1日、州裁判所によって自宅軟禁を解除された。

これは、被害者のホテル女性従業員の供述の信憑性に疑問が出てきた、という理由による。

今後の調査によっては、訴追取り下げの可能性も出てきた。

このニュースを受けて、フランスでは、ストロスカーン氏の大統領選出馬を期待する声も出ている。この辺りの同氏の人気が、陰謀説の根拠の一つになっているようだ。

なにせIMFのトップが性的暴行を行った、ということで、このニュースは世界に波紋を広げた。

しかし、この被害者女性、証言に嘘が含まれることが明らかとなったため、ストロスカーン氏は自宅軟禁を解除されただけでなく、既に支払っていた保釈保証金の600万ドル(約4億8000万円!)も返還されることが決まった。

検察側は、

「事件の再検討が必要になった」

と述べている。

この女性が語った嘘は、例えば以下の具合だ。

女性は事件当日(5月14日)に、ホテルの部屋で暴行を受けた後、すぐに上司に通報したと語っていたが、実際はその後も他の部屋の掃除をしていた。そしてその後に再び被告の部屋に戻り、片付けなどの業務を続けていた。

嘘以外にも、この被害者とされる女性には怪しい点が出てきている。

女性は事件後に、ある知人男性に電話で語っていた。

「心配しないで。この男(同被告)は大金持ち。私のしていることは分かっている」

これは何を意味しているのか。そして電話の相手は、薬物犯罪での逮捕歴がある男だった。

しかもこの男からは、過去2年間で約10万ドルが女性の講座に振り込まれている。なにやら裏社会の仕事を請け負っていたように思われる。

さらに、この女性はギニアからの亡命者と申請していたが、その申請内容にも嘘が見つけられたらしい。

その内容は、この女性はギニアで性的暴行(ここでもか)を受けたととしていたが、これが嘘だった。実際には難民申請を行うために、知人から渡されたテープの作りは話を暗記した供述だったことが分かった。

また、米国での税務申告でも嘘を重ねている事実を自供している。

もはやこの被害者とされる女性の証言には信憑性が無くなりつつある。

さて、一方の自宅軟禁が解除されたストロスカーン氏だが、彼はこの逮捕劇が始まる前は、来年のフランス大統領選の有力候補とされていた。

最大野党である社会党の候補者だ。

既に自宅軟禁の報道を受けて、社会党のラング文化相は発言している。

「わが党の大統領選での成功にとり決定的に重要」

実は今月13日が予備選立候補の締め切り日だ。急ぐ必要がある。

もし、間に合えば、再選を狙うサルコジ大統領にとって、非常にやっかいなライバルの復帰とされている。

フランスではこの米国裁判所の独自調査により原告側の嘘を暴いた点を評価する声も出ている。

ミッテラン大統領時代に法務大臣を務めたロベール・バダンテール社会党議員は、フランス国営放送に出演した際、米裁判所が独自調査で原告の嘘を暴いたことを評価し、

「被告は裁判の判決が出るまではあくまで無罪の可能性があるのであって犯人ではない」

と強調した。どこかの国の、どこかの政党の執行部とはまるで反対の発言である。このどこかの国のどこかの政党については以下の記事として投稿した。

『近代法を無視する政党が政権を担っているこの国のいびつさ』(2/22)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/187297265.html

また、裁判の判決も下る前からストロスカーン氏を犯罪者扱いしているメディアの報道を批判した。

そしてストロスカーン氏の逮捕が、実は陰謀なのではないかという憶測を呼んでいる。

前述の原告女性のいかがわしさも理由にあるが、それ以前から陰謀説は流布していた。

一つはストロスカーン氏がIMFのトップという重職にあることが理由だろう。そしてもう一つはこれも既述したが同氏が次期フランス大統領になる可能性が高い人物である、ということも動機となるという。

しかもどうやら、ストロスカーン氏は、現サルコジ大統領よりも人気が高いらしい。これはサルコジ大統領やその周辺の者たちにとってはやっかいだ。

そのような事情があるためか、フランスの6割の人々が、このたびの逮捕を陰謀と捉えているという調査結果もあるらしい。(調査機関CSAによると、ストロスカーン氏の逮捕が何らかの謀略の犠牲と考える人が57%、そうではないと考える人が32%だった。)

そして性的な事件は、政敵を貶める手段としては、ポピュラーである。

そもそも、と語る人も多い。次期大統領選出馬を目指している人物は、非常に身辺のスキャンダルに注意するはずであるにもかかわらず、自らつまらない暴行事件など起こすだろうか、という疑問だ。

そこで陰謀説は犯人を絞る。すなわち、ストロスカーン氏がIMFのトップでは困る勢力、そして同氏が次期フランス大統領になっては困る勢力、だというのだ。

さて、陰謀説の根拠の一つとしての次期フランス大統領候補であることは、多くのフランス国民が関連があると見ているようだ。

そしてもう一つのIMFトップの座を降りるはめになった件についてはどうだろう。

この逮捕劇により、ストロスカーン氏はIMF専務理事の座を辞職したが、そのあと速やかに同職を引き継いだのはクリスティーヌ・ラガルド氏だった。

ラガルド氏は、米国と欧州の支持を受けてIMF専務理事に立候補している。

いや、日本の財務相も怪しい──と言っては突飛すぎるだろうか。

IMFといえば、緊縮財政指導が主な仕事だ。財政破綻しかけた国に融資する際には、必ず緊縮財政による財政再建を指導する。

そして、IMFに出向している日本財務相の意向によるとも言われているが、このIMFは日本にも緊縮財政を指導している。まったくお門違いも甚だしい。

現在デフレ下にあり、経常収支黒字国である日本が緊縮財政をするべき理由はない。

ところが、ストロスカーン氏は、世界を驚かせる発言をしていた(財務相が操る国税庁の調査が怖い日本のマスコミだけは取り上げなかった)。1月のダボス会議でのことである。

「世界各国が財政出動すべきである」

これ、IMFのお家芸の正反対の発言だ。ただし、今の日本の様な状況にある国にとっては至極正論だ。

ストロスカーン氏がこのたびの金融危機の深刻さを、逆に良く認識していたと言われる。すなわち、デフレ下にある国は、内需拡大をして景気を回復し、その結果として税収を増加させるという健全な財政再建を行うべきだということだろう。

IMFは、創設者の一人とされるジョン・メイナード・ケインズの経済学を再認識すべきとのメッセージにも受け取られる。

ところでストロスカーン氏は、まるで自分の運命を予言するようなことを社会党の同僚に語っていた。

「自分を大統領選候補から引き摺り下ろす工作が既に始まっている。私のIMFの電話は盗聴されているので、いつどんな事件に自分が巻き込まれるかもしれず、最大の注意を払っている」

そう、ストロスカーン氏は「最大の注意を払って」いたのだ。そのような者が性的暴行などに走るだろうか。

さて、真実は如何に──。





posted by しげぞう | Comment(0) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。