2011年06月28日

古賀茂明氏は、国策逮捕される危険もある

24日、とうとう経済産業省は、これまで民主党の公務員制度改革などを批判してきた同省の古賀茂明氏(55歳)を退職させる方針を決め、本人に通達した。

既に古賀茂明氏は、大臣官房付という閑職に追い込まれている。

ともかく古賀茂明氏は、憂国の士というか珍しくまともな人というか、経済産業省をはじめとする官僚や政府のなれ合いによる亡国の政策を批判してきた清廉の士である。

この人をいよいよパワーハラスメントによって退けようとしている官僚の姑息さがかえってクローズアップされてしまった。

古賀茂明氏は前述の公務員制度改革の他、現在の電力会社のあり方を見直す契機となる「発送電分離」といった、最も電力会社やそこを天下り先としている官僚が嫌う合理的な改革案を提示してしまった。

また、先に同氏が出版した著書『日本中枢の崩壊』は発売1ヶ月で16万部を突破したベストセラーだが、この本では福島第1原発事故への政府対応のまずさなどを含む、より詳細な政府批判を行っている。




私はまだこの本を読んでいないが、古賀茂明氏はこの本で、すなわち内部告発同様のインパクトを官僚と政府に与えてしまった。すなわち、官僚や政府が国民に隠し続けてきた背任行為を、国民の前に曝してしまったわけだ。

そのため、政府要人や官僚たちのバッシングを受けることとなってしまった。

その筋の情報によると、松永和夫経産事務次官が古賀茂明氏に対し、7月15日付で退職するように打診したという。

それに対し、古賀茂明氏は「あまりに性急だ」としている。

ここで古賀茂明氏の経歴をごく簡単に紹介しておきたい。

1955年に東京に生まれる。
1980年に東京大学法学部を卒業し、通商産業省(現経済産業省)に入省する。
大臣官房会計課法令審査委員、産業組織課長、OECDリンシパル・アドミニストレーター、産業再生機構執行役員、経済産業政策課長、中小企業庁経営支援部長などを歴任した。
2008年に国家公務員制度改革推進本部事務局審議官に就任した。このとき、天下り規制の強化や事務次官廃止などの急進的と言われる改革案を続けざまに提議している。この辺りから官僚に危険視されるようになったと思われる。
2009年末には国家公務員制度改革推進本部事務局審議官を退任したが、その後も省の利益に反する国益を念頭に置いた政策を提言し続けた。

──それが官僚の逆鱗に触れる。

そして経済産業省は2009年12月、パワーハラスメントとして、古賀茂明氏を大臣官房付なる閑職に追いやり、現在に至る。

私は古賀茂明氏を、官僚としての世渡りには不器用だが、正論を語り、国益を語る高潔な士と呼びたい。

経済産業省は実は昨年の7月にも、古賀茂明氏に対する嫌がらせとして退職を迫ったが、このときは野党が問題視し、国会で批判したことで保留となったという経緯がある。

その後の10月には参議院予算委員会で公務員制度改革の必要性を発言したところ、仙石由人内閣官房副長官に恫喝されている。このことについては以前の記事で投稿した。非常に卑劣な行為が行われていた。

『リストラでお茶を濁す東京電力と経済産業省の仲間達』(5/14)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/201064799.html

古賀茂明氏は多くの提言を行っているが、ベストセラーになった『日本中枢の崩壊』の刊行を記念して、6月21日に有楽町の日本外国特派員協会で行われた会見での発言から、一部を拾ってダイジェストして紹介したい。

まず、民主党が政治主導を公約しておきながらできていいないことについて言及した。

古賀茂明氏に言わせると、「民主党は政治主導の意味を間違えた」のだという。

本来、政治主導とは、「政治家が官僚を使って政策を実現する」ことを意味する。有権者が民主党に期待したのがまさにこれで、前政権の自民党が「官僚が政治家を使って自分たちの利益を守る政策を行わせていた」ことに嫌気がさしたからだった。

ところが民主党がやっているのは、官僚を使役すべき相手ではなく、競争相手だと勘違いしたところにあるのだという。そのため、「自分たちの方が有能なんだから、官僚を排除して行政を実行しよう」として見事に失敗してしまった。その結果、官僚に頭が上がらなくなり、官僚の言いなり政権になってしまった。

そしてもう一つの民主党の問題は、肝心の「閣僚に政治主導を実行する能力がなかった」ことにあるという。

その結果、閣僚は能力がないために、官僚に依存することになってしまった。全くその通りだろう。特に菅直人首相の無能ぶりは目を覆うばかりだ。経済知識においてはもはや痴呆であり、財務官僚の言いなりとなっている。

そして3つめとして、民主党の閣僚には「有能で信頼できるサポートスタッフがいなかった」ことを上げている。これは自業自得と言えるだろう。何しろ菅直人首相を始めとして、人を見る目が無い連中ばかりだ。

そして極めつけの失敗の原因として古賀茂明氏が上げたのは、「首相や大臣がそもそも何をやりたいのかという目的を持っていなかったのではないか」ということだ。

おそらくこれも当たっているだろう。菅直人首相を見れば分かるが、ビジョンも志もない。単に自分が首相になりたかっただけだ。首相になることが目的だったので、それ以上のことは頭にない。何かを成すために首相になったのではなかった。

次に公務員制度改革について。

古賀茂明氏は、公務員の給料を下げる、といった些末なことを言っているわけではない。それらも検討すべき課題だが、古賀茂明氏が重視するのは、

「官僚が国民のために働くようなインセンティブの構造をもう一度作り直す」

ということだ。

そのために、公務員でも業績を残せなければポジションや給料が下がる、という制度を設けるべきだという。民間企業で働くサラリーマンにとっては当たり前のことだが、この当たり前の危機感が公務員にはない。

次に新しい政策のアイディアを出せる若手や外部の民間人の登用を可能にする仕組みが必要だと言う。

最後に首相(官邸)主導の公務員の幹部人事を実施することだという。

現在は、各省ごとの大臣が人事を行っている。しかしそれでは官僚の圧力に負けてしまっており、結局官僚任せの人事になっているのだという。これを省益を超えた人事が行える仕組みにしなければ成らない。

そしていよいよ電力会社についての提言と苦言をダイジェストしてみる。

まず経団連が電力会社を擁護する関係について指摘する。

電力会社は最大級の調達企業だという。各地域の企業にとって電力会社は、大量にものやサービスを、しかも非常に高額で購入してくれる存在なのだ。

それは電力会社に競争がないためである。価格競争もないため、単純にかかったコストに一定の割合の利益を載せて売ればよい。そのため、コストがかかるほど利益が出てしまうと言う通常の企業とは逆の構造になっている。これを是正しなければならない。

そのため、経団連にとっては発送電分離により競争原理が導入されると、利益が激減してしまう可能性がある。これは消費者にとっては良いが、経団連にとっては避けたい事態なのだという。

そして電力会社の政治への支配力も問題だと指摘する。

自民党は電力会社から提供される金と集票力で支配されている。また、民主党は電力総連という組合による選挙支援を受けている。

これではいずれの政党も電力会社に逆らうことができない。

さらに官僚と電力会社の関係も指摘する。特に経済産業省にとって電力会社は、天下りポストの提供者なのだ。そのため、官僚は電力会社を大切に扱う。

もう一つ忘れてはならないのはマスコミとの関係だという。

電力会社は競争していないにもかかわらず、巨額の宣伝広告費をマスコミに提供している。そのため、マスコミは電力会社を批判できない。我々はマスコミの報道を鵜呑みにしてはならないだろう。

マスコミの人間を個人的に狙い撃ちにすることもあるという。旅行に招待したり、非常識に高い原稿料や出演料を支払ったりすることでマスコミの有力な人物を言いなりにしてしまう。

最後に学会との関係だ。これについては私も以前投稿した。

『大学に金を配る東京電力は世論を操作しているのか』(3/30)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/193331117.html

桁外れの研究費の提供、原稿料や講演料の提供、あるいは原発などの特殊なデータを優先的に与えるなどの他、学生の就職先の便宜を図るといったことなどを行って学会を支配しているという。

これで、大学の研究者や教授連中は、電力会社の批判はできなくなっている。

少々長くなってしまったが、以上のように古賀茂明氏はいくつもの問題を告発している。

このような自らの危険を顧みない発言をしている古賀茂明氏だが、政治家からの支持もあるという。

具体的には、みんなの党の渡辺喜美氏や江田憲司氏、自民党の河野太郎氏、塩崎恭久氏、柴山昌彦氏、平将明氏、そして若手で人気のある小泉進次郎氏だ。

また、名前を挙げると差し支えがあるということだが、民主党の若手にも支持者がいるのだという。

ブログにしては記事が長くなりすぎた。最近の私の悪い傾向だ。あれもこれも書きたくなってしまう。

最期に、前述した古賀茂明氏の著書『日本中枢の崩壊』について、意外な人が評価しているのを見つけたので、一部を紹介したい。その人物は、オタクでも有名なエコノミストの森永卓郎氏だ。氏はこの本を読んで以下の様に感じたという。

──ここから森永卓郎氏の書評のダイジェスト──

久しぶりに永久保存版のすごい本に出会った。

本書の素晴らしいところは、まず官僚の利権構造を具体的に暴いていることだ。

例えば、業界を持たない人事院からも天下りが行われている。人事院に高給を確保してもらう見返りに、各省が天下りポストを用意するからだ。正直言って、私はそんな官官癒着があることさえ知らなかった。

ただ、本書のもっとすごいところは、多くの識者がいままで知っていても書けなかった事実を、堂々と書いているところだ。典型は、財務省に関する記述だ。なぜ財務省が国税庁を手放したがらないのか。それは、国税庁が本気を出せば、政治家やジャーナリストを脱税容疑で追い詰めることができる。だから、誰も財務省の正体を明らかにできない。

私の一番の心配は、本書を上梓して真実を明らかにした著者が、今後冤罪で逮捕されるのではないかということだ。

──ここまで──

そう、私も古賀茂明氏の国策逮捕を心配している。





posted by しげぞう | Comment(2) | TrackBack(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
発送電分離にはこういう意見があります。
発送電分離などというのは日本のような島国と大陸の理屈をごっちゃにした誠に筋の悪い発想で、発電送電共に自国内で完結しなければならない我が国でわざわざインフラの機構を複雑にしなければならない意味すら不明だ。

仮に事故、電気なら停電があった場合、発送電分離していたら一体どこが責任をもって事故対応するのかね。

という意見です。
Posted by yota at 2011年06月29日 00:21
yotaさん、コメントありがとうございます。

その意見も一理ありますね。確かに送電設備の強化や、電力の需給を見極めるシステムがないと、良く引き合いに出されるのがカリフォルニアの電力危機です。

発送電分離には多くの問題があることは確かです。

それでも、もう一度検討してみる価値もあると思います。

例えば発送電が一体だと、電力需要の伸びが低迷すると、過剰設備を抱えるため、コスト低下努力やイノベーションを起こす動機が無くなってしまいます。

とはいえ、デメリットもおっしゃる通りです。

そこで、PPSに一定水準以上の設備上の余裕を義務づけたり、送電網の強化行う必要も出てきますね。

いずれにせよ、今のままで良いのかどうか、議論は必要だと思います。
Posted by 管理人 at 2011年07月02日 11:49
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