18日、海江田万里経済産業相は、定期検査などで停止している原子力発電所の再稼働を促すために、立地自治体を訪問する考えを表明した。
その中でも佐賀県玄海町にある九州電力玄海原子力発電所の2号機、3号機の再稼働について議論していた古川康佐賀県知事は再稼働について前向きなコメントを出している。
「再稼働への国としての意思が明確に示されたと受け止めている」
そのことを前提に、
「県議会でも議論されている。その議論なども踏まえて判断していきたい」
古川康佐賀県知事は、前日には静岡県の浜岡原子力発電所の停止理由について「理解できない」とし、
「時期が来れば(経済産業相に)来県してもらうが、まだその段階に至っていない」
とやや否定的な様子でいたが、ここに来て玄海原子力発電所の再稼働に前向きな姿勢を見せ始めた。
古川康佐賀県知事は国に3つの質問を投げかけている。
(1)福島原発事故は地震による影響はなかったか
(2)なぜ浜岡原発だけに停止要請したか
(3)MOX(ウランとプルトニウムの混合酸化物)燃料を使用していたことによる環境への影響の有無
そしてこれらについては、原子力安全・保安院から2度の説明を受けたという。
その結果、古川康佐賀県知事は、
(1)については、庁内で一定の理解はできたが、専門家の意見も聞いて判断したい。
(3)については、人体への影響が出るレベルにはないと判断した。
しかし、
(2)については、このままでは理解できない。最終的には経産相の説明が必要だ
と述べていた。
一方、玄海町の岸本英雄町長は早々に海江田万里経済産業相の意思表明を歓迎し、
「再稼働に向けて大きな判断材料になる。国がようやく責任を明確にして踏み出した感じだ」
と述べた。さらに、
「エネルギー政策の見直しについても、国民に向けてしっかり方向を示してほしい」
と、国の方針さえ固まれば再稼働する、という姿勢を示している。
しかし脱原発を訴える市民団体は国の方針に懐疑的だ。玄海原発プルサーマル裁判の会の石丸初美代表は反発している。
「事故が収束もしていない段階で、今の原発に安全などと言えないはず。安全宣言どころか、電気のために国民は危険を覚悟してくれ宣言だ。とんでもないことで、大臣が来ると言っても追い返したい」
これがまっとうな感覚の持ち主ではないかとも思える。現在進行中の福島第1原発の事故や被災者の状況、そして電力会社や国のお粗末な対応を見れば、とても原子力発電所の再稼働など認める気にはなれないだろう。
さて、運転再開に前向きな岸本英雄町長は、7日には九州電力に運転再開の同意を伝える意思を表明した。
これには経済上の事情がある。
玄海町の本年度予算は57億円なのだが、このうちのなんと6割は原子力発電所を稼働することによって支給される交付金、補助金、固定資産税などが占めているのだ。つまり、原子力発電所が無ければ半額以下の予算になってしまう。
また、雇用もかなり依存しているらしい。
そのような事情により、岸本町長は言う。
「本来なら国が一定の判断をすべきだが、九州の生活を守るには(運転再開が)必要だ」
本当にそのようなことで住民の生命を掛けて良いのかとも思うが、これはこれで切羽詰まった問題なのだろう。
しかし一端、原子力発電所に問題が発生すれば、玄海町だけの問題ではなくなる。
周辺の自治体からも慎重な対応をするように求める声がある。坂井俊之唐津市長は言う。
「安全対策に市民の理解が得られていない状態での運転再開は困難」
さて、時を遡ること平成18年。玄海町役場を当時の二階俊博経産相が訪れた。プルサーマル発電推進のためだ。
二階俊博経産相は知事、町長、町議ら関係者に、プルサーマル発電(プルトニウム・ウラン混合酸化物燃料を使う)自信を持って訴えた。
「安全確保に全力を尽くす。どうか安心してください」
3年後の平成21年11月。玄海原子力発電所は、国内初のプルサーマル発電を開始した。福島第1原発も同様に「安全だから」と地域の住民は聞かされたはずだ。
原子力発電の再稼働には、この時のような「政治決断が必要だ。」と九州電力の首脳部は語る。
そして20日。
佐賀県唐津市議会は「玄海原子力発電所・新エネルギー等対策特別委員会」を開いた。
唐津市には玄海原子力発電所から10キロ圏内に入る部分がある。
同委員会では経済産業省原子力安全・保安院と九州電力の担当者らが玄海原子力発電所の安全性について説明を行った。
経済産業省原子力安全・保安院の山本哲也原子力発電検査課長は言う。
「対策の実施状況は妥当。玄海原発の運転再開は支障ない」
また、玄海原子力発電所の、地獄の釜の蓋が外されようとしている。
転載の件、了解しました。
急いで書いた記事のため、少々文章が乱れておりますが、ご容赦願います。