前回、内閣不信任決議案が提出されても、否決されてしまう可能性があると投稿した。
『内閣不信任決議案が出されても、菅政権が延命する可能性』(5/29)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/205514347.html
内閣不信任決議案が否決される可能性はやはり高い。小沢系の議員でも、否決する側に回ると意思表示している者たちがいることもある。
また、以前、東日本大震災による混乱で国民が思考停止状態になっているところを狙って、かねてから増税したくて機会を狙っていた勢力が復興増税という大義名分を掲げて動き出したことも投稿した。
『どさくさ紛れの復興増税。これこそショック・ドクトリンではないか。』(4/17)
http://newsyomaneba.seesaa.net/article/196255442.html
この二つの動きが絡み合いつつある。いや、既に絡んでいるのかもしれない。
ところが同時に、この時期の増税がインフレ対策である以上、デフレ下の日本の経済が壊滅状態になることに気付いた勢力がようやく声を上げてくれた。
それらについて見てみたい。
江戸時代(だと思う)から、美人を喩える言葉に、「立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花」などという。これをもじってネットユーザーの間では、菅直人首相のことを、
「立てば国難、座れば人災、歩く姿は風評被害」
などと喩えている。おもしろいが、笑っている場合ではない、ということも皆分かっている。
その国民の思いを感じ取った野党が、内閣不信任決議案を提出する頃合いだと感じたらしい。
が、議席数の多い民主党内から約80人もの造反組を巻き込まなければこの内閣不信任決議案を可決させることは非常に難しいと言える。
ただ、菅直人首相さえ引きずり下ろせれば、次の行動に移れる、という者たちは与野党共に存在する。
民主党では次期首相を狙う者がいる。自民党では増税大連立のチャンスを作り出せるかもしれない。
そんな噂も聞こえてくる。政治の世界は魑魅魍魎が跋扈する世界だ。国民不在とも言える。
ただはっきりしているのは、現民主党と自民党は共に復興増税を実現しようとしていることだ。しかも、仮に民主党内で首相が替わったとしても、次の有力者とされている野田佳彦財務相や前原誠司元代表では、増税路線に変更はなさそうだ。
つまり、仮に内閣不信任決議案が否決されても、増税は行われる可能性が高い。
しかも自民党がこの内閣不信任決議案を急いでいるのは、別に被災地の人々のためではなく、参議院の問責決議に先を越されないためらしい。
というのも、今参議院では、西岡武夫参院議長を中心とした増税反対派の動きが見られるからだ。
その増税反対のために、党を超えたベテラン議員たちが集まりつつある。
まず、増税派の自民党の中から現れた。安倍晋三元首相が会長となり、「増税によらない復興財源を求める会」が立ち上がった。メンバーには森喜朗元首相、古賀誠元幹事長、中川秀直元幹事長をはじめとして、衆参国会議員53人が参加している。
また前述したが、西岡武夫参院議長を筆頭にみんなの党渡辺喜美代表らで結成した超党派議連も同じ名称で「増税によらない復興財源を求める会」となっている。
当然、名称からしてこれらのグループは裏で繋がっているだろう。
また復興の財源は増税ではなく、国債でまかなうべきだと主張する民主党税制改正作業チーム(PT)が「経済が縮小しているなかで増税はあり得ない。景気拡大策を取らなければならない時に増税と一緒に議論するのはナンセンスだ」との声明を出した。
やっと本来の景気回復や国民を疲弊させない復興の方法が声に出され始めた。果たしてショック・ドクトリンによる増税を防げるのだろうか。期待したい。
しかし困ったことに、彼らの動きに対して、マスコミはもちろんだが、肝心の国民が無反応だ。すっかり増税推進派に洗脳されてしまったのだろうか。
また、これらの動きに対し、老害で悪魔に魂を売り渡した厚顔無恥の与謝野馨経済財政担当相は、いつもの財政破綻予言をかざして釘を刺す。
「金利が安いからと国債を出し続けるといつ金利が上がるか分からない事態に直面する」
いったいいつまでこの男はこんな呪文を唱えているのか。
日本の国債は約9割(つまりほとんど)が国内でしかも自国通貨で消化されている。
おまけに長いことデフレ状態から脱却できずにいる。
しかも金利が上がることを恐れているが、上げようにも上がらないほど世界的にも最低水準の金利が続いている。
そもそも経常収支黒字国(貯蓄超過)の国で、財政はどうしたら破綻するのか。
金融機関は、金利を支払う義務があるため、有り余った預貯金を運用しなければ成らない。しかし投資は冷え込んでいる。借り手が居ない。
そうだ、国債を買おう。買わねばならない。こうなるではないか。
発行すれば速やかに消化されてしまう国債の金利が上がるのだろうか。基本的に債権というものは、リスクが高く売れ行きが悪いから金利が上がるのだ。日本の国債の金利は、あきれるほど低い。
しかしこのたびの東日本大震災がデフレを一瞬でインフレに変えたとする意見も多い(経済学者の野口悠紀雄氏など)。
震災によって供給能力が破壊されたためだという。また、電力不足も供給不足を加速させるだろうという。
同時に復興需要が増加するため、インフレになるのだと言うことだ。だから有効需要の拡大政策(所謂ケインズ政策)は良くないと結論される。
しかしこの主張には、震災による需要低下を考慮していない。震災によって需要の要素である消費と投資が激減した可能性もあるのだ。
操業停止や廃業に追い込まれた企業も多い。これらの企業の分だけ丸々投資は消えた。
また、風評被害などによる先行きの不安感から投資を控える企業も多いはずだ。
さらには既に始まっているが、風評被害により外需も減少している。
震災から復興したとき、一気にたかまる需要に応えられるだけの供給能力を育てておくということからも、政策として投資が行われていなければならないのではないか。
しかしそうはいっても、やはり一時的には物価の高騰があり、インフレは起きる可能性がある。
しかし、それを恐れて復興に必要な金を国債でまかなわなければ、復興はどうにも始まらない。インフレは起きたら対処すればよいのだ。そのために政府や日銀があるではないか。
また、国債が市場に過剰に提供されることで金利が上がる(おそらくないが)というのであれば、市場に流通する国債の額を一定のままで復興国債を発行する方法もある。
これについては、経済学者の高橋洋一氏が提案しているので、後ほど見てみたい。
話を戻すと、増税反対の声は民主党の中からも出てきている。
小沢鋭仁前環境相が顧問を務める「デフレ脱却議連」だ。まぁこのグループの政策を細かく見ると「?」なところもあるが、ともかくひたすらインフレ対策を掲げる政治家やマスコミへの対抗勢力としては期待したい。
また、同じ小沢でも小沢一郎元代表の指示グループが立ち上げたのが「増税によらない復興財源を考える会」というものだ。前述の「増税によらない復興財源を求める会」ともそっくりな名称なので、なんとも紛らわしいのだが、言わんとしていることは同じだろう。
ただ、マスコミはこの「増税によらない復興財源を考える会」を、菅降ろしが進まない小沢系議員たちの焦りにより作られたものだと小馬鹿にしている。
18日に国会内で開かれた初会合では、川内博史氏(小沢系)が挨拶した。
「増税することは断じてあってはならない」
この会には30人を超える議員が参加している。立ち上げたのは松野頼久、大久保勉参議院議員らだという。他にも森ゆうこ参議院議員、辻恵衆議院議員、前田武志参議院予算委員長、藤田幸久参議院財政金融委員長らが参加している。
この会で、講演したのが高橋洋一氏だった。
彼は一つのアイディアを出した。増税派が嫌うアイディアだというので簡単に紹介したい。
まず日銀引受を財務相や日銀が禁じ手だと批判するが、高橋氏は毎年行われているではないかという。
今年度予算でも「国債整理基金特別会計において、『財政法』第5条ただし書の規定により政府が平成23年度において発行する公債を日本銀行に引き受けさせることができる金額は、同行の保有する公債の借換えのために必要な金額とする。」と予算総則第5条に書かれているという。
つまり借換のために必要な金額は引き受けさせることができる。これは通貨膨張がないため、日銀は引き受けてもかまわないということだ。
で、今年度の償還額は30兆円。既に12兆円が引受額として決まったと言うことなので、あと18兆円引き受けられる。
今年度国債発行計画では169.6兆円が発行される(新規財源債44.3兆円、借換債111.3兆円、財投債14兆円)。
このうち日銀が11.8兆円を引受、157.8兆円が市中消化される。
そこで復興債を18兆円発行し、これを市中消化にする。そのかわり、市中消化を予定していた借換債99.5兆円から18兆円を押し出して日銀引き受けとする。
その結果、市中消化分が復興債18兆円+新規財源債44.3兆円+借換債81.5兆円+財投債14兆円で、合計157.8兆円となる。
この157.8兆円は前述した今年度国債発行計画で予定していた市中消化分とイコールとなり、結局市中金利の上昇が起きないだろう──というのが高橋洋一の案だ。
借換債の日銀引き受けも前述分を合計すると29.8兆円(11.8兆円+18兆円)となり、日銀が引き受けられるとする償還額の30兆円以内に収まった。
なるほど、見事につじつまがあった。
高橋洋一氏は言う。
このままでは通貨の縮小によってデフレ脱却が困難になる。そこに増税がセットで加わると、復興どころではなくなってしまう。日本の経済にダメージを与えてしまうと。
増税反対勢力がどこまでがんばれるか。世論(マスコミが操作する)は、おそらく冷ややかだろう。せめてこのブログでは応援したい。